雨の降る夜、主人公の浩太は、古びたアパートの部屋で一人、埃っぽい段ボール箱を漁っていた。引っ越しを控え、忘れ去られたガジェットが山積みになっていた中、一際小さな箱が目に入った。黒いパッケージに、奇妙なロゴが刻まれている。「OneXPlayer ONEXFLY PRO」と書かれたそれは、決して彼が買った覚えのないものだった。箱を開けると、中から出てきたのは、手のひらに収まるほどの小さなデバイス――7インチの有機EL画面が輝く、ポータブルゲーミングPCだった。付属の外付けグラフィックスボード、ONEXGPUは、まるで異世界の遺物のように、マグネット式のカバーで簡単に拡張できるSSDスロットを備えていた。

浩太は好奇心から、電源を入れた。Windows 11の起動音が部屋に響き、画面が鮮やかに点灯する。AMD Ryzen 7のプロセッサーが静かに唸りを上げ、32GBのメモリが高速でデータを処理する。コントローラー形状のボディは、599gの軽さで手に吸い付くようにフィットし、3軸ジャイロと加速度センサーが微かな振動を伝えてくる。最初はただのゲーム機だと思った。最新のオープンワールドRPGをインストールし、プレイを始めた。

だが、夜が深まるにつれ、異変が訪れた。画面内の仮想世界が、徐々に現実と混じり合うのだ。ゲームの森を歩くキャラクターが、浩太の部屋の壁に影を落とす。HARMAN監修のステレオスピーカーが、遠くから聞こえるはずのない雨音を、まるで外の世界のように再現する。ONEXGPUをUSB4で接続すると、性能が爆発的に向上し、画面のリフレッシュレート144Hzが織りなす滑らかな動きは、まるで次元を超えた没入感を生んだ。浩太はコントローラーを握りしめ、ゲーム内のクエストを進める――古い遺跡を探検し、失われたアーティファクトを探す。

突然、画面に予期せぬメッセージが浮かんだ。「拡張現実モード：活性化」。それはOneXConsoleの隠し機能だった。TDPを調整し、ファン速度を最適化するソフトウェアが、勝手に起動したのだ。外付けGPUの冷却システムが低く唸り、部屋の空気が冷たくなる。浩太の視界が揺らぎ、ゲームのキャラクターが彼の前に実体化する。森の精霊のような少女が、微笑みながら囁く。「このデバイスは、境界を溶かす鍵。君の記憶を、仮想の糸で紡ぐのよ」。

浩太は慌てて電源を切ろうとしたが、指が動かない。ONEXGPUのマグネットカバーが外れ、中から光るM.2 SSDが露わになる。それは彼の幼少期の記憶――失われた家族の写真、忘れていた夢の断片――を映し出していた。デバイスは浩太の心をスキャンし、ゲームの世界を彼の人生に重ね合わせていたのだ。外付けのDisplayPortから、部屋の壁に投影される映像は、浩太の過去の幻影。父の声が、イヤホンジャックから流れ、母の笑顔が有機ELの輝きに溶け込む。

夜明けが近づく頃、浩太はようやくデバイスの秘密に気づいた。この小さなPCは、ただの機械ではなかった。開発者の誰かが、量子的なアルゴリズムを忍ばせ、所有者の潜在意識を拡張GPUの21.4テラフロップスの力で具現化するよう仕組んでいたのだ。Wi-Fi 6Eが未知の信号をキャッチし、Bluetoothが幻のつながりを生む。浩太はゲームをクリアし、精霊の少女に別れを告げた。画面が暗くなり、すべてが夢のように消え去った。

翌朝、浩太は箱を捨てようとしたが、ふと画面を覗き込む。そこには、昨夜の記憶が新しいセーブデータとして残っていた。「続きをプレイしますか？」と問いかけるメッセージ。浩太は笑い、電源を入れた。境界は、もう溶け始めていた。