Cat Tail

Cat Tail

SS-空




 零が私のピクニックにつき合って、基地裏の草原に座り込んでコーヒーを飲む。
 私の投げたブーメランを追っていた目にはフェアリィの空はどのように移っていたのだろう。


「ここの空は変な色だ」
 またしても失敗したブーメランを拾って戻った私にコーヒーを差し出しながら零がぼそりとつぶやいた。
 受け取ったコーヒーは少し冷めていたが、零の隣に座り込んで口を付けた。
「東京の空はいつもくすんで見えた。だから好きではなかった」
 今日は少し冷え込んでいた。零のマグカップの中のコーヒーもすっかり冷めてしまっているだろうに、マグカップを両手の手のひらで包むように持ち、その手を温めているかのように見える。
 しかし、それは普段口数が少ない彼がただ単に話しを聞いてほしいと言うサインであることは本人でさえも気づいていないだろうことで、私以外に知る者はいないと思う。
「東京のくすんだ空が嫌なのかと思っていたのに…」
 そうつぶやくと、あらためて空を見上げた。
「ここにくる前に見たオーストラリアの空は蒼かったのに、それも好きになれなかった」
 それっきり黙り込んでしまった零に『ここの空は嫌いか?』と聞いてみようかと思ったが、やめた。
 二人でいると今日のように何でもないようなことをポツリと話す時がある。
きっといつかフェアリィの空のことを話すこともあるだろう。

「さぁぼうや、そろそろもどろうか?」
「あぁ、そうだな」
 何かを思って見上げる空でなく、戦うための空に今還る。



コメント

 冬コミの一日目の帰り道、お茶した時に書いてるんですよ~なんて言っていた話なんですが、そのあと買ったSFマガジンを電車の中で読んでびっくりしたのですが、空つながり?
 コミケ前に通勤中に寝ようと思っていたら降ってきた話ですが、いつもながらもうちょっとどうにかならんものですかねぇ(_ _;)。。。


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