2006/06/06
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カテゴリ: 小説のおまけネタ





かわいそうな女王さま。
ひとりぼっちになって、くる日もくる日も、泣きました。
ごはんも、ちょっとしか食べません。
アルブレヒトが、やさしくなぐさめても、だめでした。
二年がすぎ、まだかなしみの消えない女王さまに、アルブレヒトは言いました。
「泣いてばかりでは、お体にもよくない。きばらしに、パーティーをひらきましょう。」
「パーティー?」
そう、パーティーです。
それも、すてきな男の人を、おおぜいまねいて、女王さまにぴったりのあいてを見つけようというのです。
アルブレヒトは、さっそくじゅんびに、かかりました。
まず、すてきな男の人をあつめなければ、はじまりません。
アルブレヒトは、あちこちの国に、しょうたいじょうを書きました。
そうして町でも、すてきな男の人がいないか、さがしました。

すると、いました、いました。
馬にのった、黒いかみ、黒いはだの、りりしく美しい若ものです。
「あれは、東の国の王子さまに、ちがいない。」
アルブレヒトは、かけより、ひざまずきました。
「王子さま。わたしは、この国の女王の騎士です。どうか女王さまのために、パーティーにおいでください。」
若ものは、きょとんとした顔をしています。
「王子?あの、ぼく道にまよって・・・ここ、どこでしょう。」
若ものは、りっぱな家がらの出ではありますが、王子さまではありません。
そのうえ、じぶんの国を追われてながれついた、旅人でした。
でも、気がせいていたアルブレヒトは、早とちりしたまま、こう言いました。
「ここはフライハルトです。美しくてやさしい女王さまのおさめる国です。それより、どうかお名前を、王子さま。」
「名前なら、ユベールといいます。でも、ぼく・・・」
「では、ユベールさま、しのごの言わずに、おいでなさい。」
ずるずるずる・・・・ぽーん
ユベールはアルブレヒトに引きずられ、お城にほうりこまれました。

何日かたって、いよいよパーティーがひらかれました。
ユベールもパーティーに出席するのに、お金がなくて、よい服が買えませんでしたので、けっきょく、こしぬの一枚で出ることに。
これがいちばん、安かったのです。
「あぁ、はずかしいなぁ。みんなが、じろじろ見ているよ。」
ユベールは、いっそ帰ってしまいたくなりましたが、テーブルの上のごちそうを見て、気がかわりました。
「あっ、チーズだ。チーズだけは食べて帰ろう。」
むぐむぐ・・・
ユベールは、大好きなチーズをほおばります。
「こ、これは!」
まったりとしていながら、くせがなく、なめらかで、ほんのりにがみがあって、とろーりとろけるよう。
したざわりも、ぜつみょうです。
こんなおいしいチーズは、食べたことがありません。
「たとえるなら、このよの春・・・」
ユベールはテーブルのチーズを、ぜんぶたいらげて、うっとりしておりました。

さて、女王さまはといいますと、アルブレヒトのとなりで泣いていたのです。
「やっぱり、むりよ。どこの国の王子さまだって、あの人ほどすてきな人なんて、いないんだわ!ぜったいに!」
そう言って、ふと顔を上げたとき、女王さまは若ものと目が合いました。
若ものは、うっとりとした目で、女王さまを見ています。
女王さまも、若もののたぐいまれな美しさに、心が高なりました。
「すてき・・・」と、女王さま。
アルブレヒトは、「きりかえが速いな」と思いましたが、このチャンスをのがしてはなりません。
若ものをよびよせて、女王さまのとなりに、すわらせます。
「なんて、お美しいかた・・・。パーティーは、お気にめしまして?」
女王さまにたずねられて、ユベールは先ほどのチーズを思い出しながら、あつくこたえます。
「はい・・・わたしは、こよい国でいちばんの、いえ、世界でいちばんの宝に、めぐりあいました。もう、この宝なしには、いちびょうだって生きていけません。」
「まぁ、そんな・・・・うれしいわ。」
女王さまは、顔をまっかにして、モジモジしています。
こんなふうに、じぶんをねつれつに愛してくれる人は、いなかったわ、と女王さまは、すっかりカンちがいしたのです。
「では、ずっとお城にいてくださいな。」
「もちろん、よろこんで!」
ユベールは女王さまの手をとって、チーズのようになめらかなはだに、うやうやしく口づけしました。


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Last updated  2006/06/06 05:50:53 PM コメント(10) | コメントを書く


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