2015/03/20
XML

色変えタグと格闘して、たぶんスマホの白背景でも見れるようになったかと。たぶん。
また、web拍手をくださった方々、ありがとうございます♪とても励まされます♪

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この時、アルブレヒトに従う軍勢は直属の師団のほか、王家の近衛兵、諸侯の私兵を合わせて8千余り。
彼がマインツ防衛で率いてきた騎兵と歩兵の各連隊を中心に、フライハルトの中枢的な部隊が顔をそろえていた。
対するグストーのもとに集うのは、彼を支持する諸侯の私兵と急遽手配された傭兵部隊、およそ4千。
そこに僅かの義勇兵が加わっていたが、軍の主軸はローレンツ家所属の私兵1千余。
中でもユベール率いる竜騎兵隊が中核であった。
ザンクトブルク城では、カムデンに少し遅れて到着したグストーが、すぐさま城の状況を確認しにかかった。
彼は守備隊長に案内させ、みずから城塞を歩き防衛策を思いめぐらせる。


「42ポンドのカノン砲を20門ほど。昨年のフランス軍侵攻時にも準備しましたので、砲手の訓練も行き届いております。」
誇らしげに語る隊長の横で、グストーはわずかに眉根を寄せた。
半世紀以上も前の遺物だが、無いよりましだろう。
城の取水手段、糧秣、外壁の状態に弾薬の備蓄。
一通りの情報を得た後で、グストーは城内の将校たちを召集した。
ユベールとアドルフはもちろん、守備隊、傭兵部隊の指揮官たちが顔を揃える中、グストーは後ろ手を組んで立つ。

「我々の目的はただ一つ。女王レティシアの奪還だ。」
グストーの狙いは、レティシアに衆目の前で停戦命令を出させること。
その時点で戦闘行為は正当性を失い、アルブレヒトの動きを封じることが出来る。

「敵は数で勝るとはいえ、北方でのジークムント派鎮圧に3個大隊を駐留させている。その上、本拠や王都を守備しながらザンクトブルクも包囲するとなれば、勢力は各方面に分断され連携も不可能。」
宰相の言葉をユベールが引き継ぐ。
「つまりこちらが戦力を集中するなら、局地的には対等に戦うことができると・・・。」
「然(しか)り。」
だがグストーは厳しい顔容を崩さなかった。
「斥候の報告では、アルブレヒトは既に4個連隊規模の兵をこちらに差し向けている。その中に攻城用の大型臼砲を持つ部隊もある。」
将校たちの間に沈黙が流れた。
籠城戦は守備側有利とはいえ、城壁を一か所でも崩されれば事態は一変する。
無論、防御施設である城壁は数メートルの厚みがあるが、長期に渡って放火を浴びればあやうい。

「敵は、明晩にはザンクトブルク近郊に到達するだろう。だが迎撃の準備にもう半日ほしい。直近の目標は敵の足止めだ。」

「いよいよ、ですな。宰相殿には何か策があるような口ぶりでしたが。」
解散となった後で、アドルフは腕組みしたまま上官の顔をうかがう。
「・・・あの男は、いつだって思わせぶりだ。」
ユベールは苦笑したが、いまはグストーの手腕に期待したい。
報告によれば、ザンクトブルクへの攻め手の中にアルブレヒトの本隊はない。
侵攻の足止め役は、カムデンが用立てしたスイス人傭兵部隊。
こちらの主力は温存して防衛戦に備えられる。
二人が部隊への伝達に出ようとしたときだった。

「ユベールさん。あと、お付きの人。」
ひょっこりと顔を出したレオンハルトが彼らを呼び止める。
「マスターがお呼びですよ。頼みたい重要な仕事があるとか。」

その二日後、5月7日早朝――
遂に、両軍最初の衝突が始まった。
前夜遅くにザンクトブルク外縁に到着していた王家の近衛歩兵連隊が、出撃した宰相側の傭兵部隊と接触する。

「・・・・こんな所まで、せり出してくるとはな。」
近衛隊を指揮するクラウゼヴィッツ少佐がいぶかしむほど、前線は城から離れた位置に敷かれていた。
「竜騎兵隊の姿はありません!」
分隊長の報告に、彼は苦い顔をする。
アルブレヒトの指示は、無駄な血を流さずユベールに標的を絞ること。

「まぁ、いい。見たところ敵はフライハルト人ではない。前線を押しあげ、ローレンツの若君を引きずり出してやろう。」
クラウゼヴィッツは前進命令を下した。

その頃、夜を徹して行軍してきた一団が、密かにザンクトブルクに入城を果たしていた。
屈強で太い脚をした荷馬4頭に牽引される、白布に覆われた車体は、鋼鉄製の大型車輪を備えている。
それが12台ほど連なり、同行する100名ほどの男たちと、竜騎兵隊が城の傾斜した車道を上る。

「アドルフ!何事もなかったか?」
出迎えたユベールに、アドルフが帰還の挨拶をする。
彼は前日から竜騎兵を連れ、この「荷物」の護衛任務にあたっていたのだ。
城内から現れたグストーが男たちに指示を出す。

「設置を急げ。一刻も無駄にするな。」
精鋭を繰り出してまで守るべきもの・・・ユベールの目の前で、白布が取り払われた。

日が徐々に高くなり、じりじりと前進を続ける近衛歩兵隊はザンクトブルク城からおよそ1キロの地点まで迫っていた。
散発的な撃ち合いはあるものの、宰相の傭兵部隊は正面切って戦う姿勢をみせない。
苛立ちを募らせる歩兵隊の背後で、砲兵隊が臼砲の発射準備にとりかかる。
ザンクトブルクの城塞が射程内に入ったのだ。

外壁の内側ではユベール率いる竜騎兵隊が戦いの準備を万端整え、号令を待っていた。
突如、鈍い風切り音と共に、激しい衝撃が地表から伝わった。
敵方の臼砲の第一波が、城壁の手前に着弾したのだ。
やがて、二度目の衝撃・・・軌道修正したか、爆音と共に斜め前方30メートルほどの位置で城壁の先端が砕け、砲弾の破片と岩石が混ざり合って散る。
馬をいなしながらユベールが上空を仰ぎ見ると、側塔から白煙があがる。
合図だ。
ユベールが右手をかざし、彼らの前で落とし門の扉が引き上げられていく。
アーチの奥に広がる原野が、彼らの戦場だ。

「竜騎兵部隊、出撃する・・・!」

狼煙(のろし)の合図を受け、傭兵部隊は一斉に城へ向けて退却を始める。
その様子を遠見筒で確認した宰相グストーが、彼の傍らに立つ男に命じた。

「距離1000で砲撃せよ。」
男が復唱するのを聞きながら、グストーは呟いた。
「よもや、フライハルト兵相手にこいつを使おうとはな・・・。」
彼の前に並ぶのは、つい先ほど到着した12門の野戦砲。
青銅色の砲身。口径は6インチほどだろう。
その姿を間近で凝視していたカムデンが、ひきつったような笑みを浮かべた。

「まったく・・よくも、このような物を。」

横隊を組んで疾駆するユベール達が、敵陣めがけ一息に距離を詰める。
前方で、いくつもの噴煙が上がった。
後退する傭兵部隊と入れ替わるように、竜騎兵たちは突撃する。
再び城から砲弾が放たれ、敵歩兵隊の陣に着弾――今度は炸裂音が聞こえた。
折よく、彼らは風上・・・もうもうと立ちこめる土煙も、現場に到達する頃には西風に流れ、視界を遮ることはなかった。

「くっ・・・・」
ユベールの表情が歪む。
彼らが目にしたのは、文字通り風穴を開けられ、千路に乱された敵の戦列。
一面に渡って斃れ、血を流しうめく人々の姿。
戦場で数多く人を殺めてきたユベールが、この光景をむごいと感じるのは、かつての自分の姿に重なるからなのか。

「これが・・・グリボーバル砲の威力・・・!」

この砲門を見たカムデンが、苦笑するのも無理はない。
アメリカ独立戦争でイギリス軍を破り、アメリカ・フランス連合軍に勝利をもたらした6インチ・グリボーバル榴弾砲(りゅうだんほう)。
フランスで開発され、鋳型に金属を流し込んで造る一体型の砲身は、内腔と砲弾との隙間から爆発力が失われるという従来の問題を解消し、軽量で機動性が高く、確実な威力が見込める。
しかも、装填される榴散弾は着弾と同時に球体の散弾を飛散させ、数十メートル四方の人馬を死傷させる――イタリア戦線でユベールやオーストリア軍を敗走させたのも、これを実装したフランス砲兵隊だったのだ。
もっともグストーが使ったのは、かつて北ドイツの戦場から持ち帰らせた実物を基に、国内の工房で2年半かけて再現・改良させたものであるが・・・。

「・・・これが戦場を変えた、怪物か。」
褐色の瞳をわずかに伏せて、グストーは呟いた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村  ←よろしかったらポチっと応援お願いします





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2015/03/21 08:41:58 AM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: