Bookish Girl ~人生は芸術! 生活はアート!~

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2009.02.26
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ふと頭に思い浮かんだ一人は、

グロテスクな木口木版画の鏡花の顔でしたが、

もう一人、浮かんできた男性の顔がありました。

横顔の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)です。


小泉八雲といえば、「怪談」の再話で知られた作家さんですね。

ハーン、または、ヘルン先生と呼ばれて、今も親しまれている方ですが、

彼の人生は、そう容易いものではなかったようです。


アイルランド人の父とギリシャ人の母とのあいだに生まれたハーンは、

幼い頃から、両親と離れて暮らし、

淋しさを抱えながら、

フランス・イギリス・アメリカでの複雑な日々を経た末に、

憧れの日本に、たどり着きました。


最初に赴任したのは松江です。

松江といえば、小泉八雲、というぐらいに、密接な関係がありますが、

もう少し、長くいたのかと思ったら、

たった1年足らずで、離れることになったのですね。

しかし、ハーンにとって、なくてはならない人生のパートナー、

小泉節さんにめぐり会えたのですから、

奇跡的な運命の出会いをするために、松江に行くことになったんだろう、

という気がしてなりません。


松江を離れた後、熊本、神戸、東京へ、赴任。

帝国大学で教鞭をとっていたハーンは、人気者の先生だったようです。

けれど、突然、解雇されてしまいました。

その後任となったのが、夏目漱石です。


ハーンは、その後、早稲田大学で教える機会を得たものの、

じきにこの世を去ることになり、

大切な節さんとお子さん、そして、膨大な蔵書を、この世に残していきました。

曾孫さんは、現在、松江で教鞭をとっておられますが、

あの蔵書は、どうなったのか……。


実は、縁あって、富山大学の図書館に、保管されているのです。

何年か前、ハーン研究者の取材をするために、何度か訪れました。

蔵書には、ハーンの書き込みもあり、生原稿もあり、

それらが、静謐な空間に、ひっそりと息づいているものですから、

押し寄せる静かな感動を覚えました。

当人にとっては、生前、訪ねたこともない土地なのに……。

あそこなら安全だから、と天国で許可されたのか、

ご縁というものは、不思議ですね。


館内に足を踏み入れる前、

あれ~、と心に引っかかるものがありました。

入口に飾られていた肖像レリーフです。

左向きなのです。

それから、どの本で見るハーンも、うつむいた斜め横顔か、

左向きであることに気がつきました。

集合写真も、かならず、左向き。


左眼を失明していたのですね。

イギリスの全寮制の学校で、友人と遊んでいた16歳のときに、

ロープの結び目が左眼にあたって、光を失ったのだそうです。

見えなくなってしまった左眼は、

淋しさやコンプレックスの象徴のように思えます。


横顔のレリーフを見た瞬間、なぜか夏目漱石の顔が横切ったので、

後任者だったと後で知ったときは、少し、おどろきました。

時代の皮肉さを、感じますね。

横顔、といえば、ハーンの顔が、浮かんでくるのは、

そういうことからなのです。


……と、二人の顔が浮かんでから、それほど間を置かずして、

わたしの携帯電話が鳴りました。

「実は、鏡花と八雲のことで……」と。


(横顔の連鎖は、つづきます)





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Last updated  2009.03.06 15:23:43 コメントを書く
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