HAVE A NICE DAY
1
久しぶりに面白い本を読んだ。三島由紀夫と交際していた豊田貞子(だこ)の回顧録。だこと親交のある岩下尚史が、インタビューに三島の作品とその評論をとり交ぜて、当時の花柳界・歌舞伎界・政財界の華麗な交友録になっている。とにかく登場人物がすごくて、親戚・友人関係が注釈なしではわからない。猪瀬直樹の本の引用も多々あって、興味深い。だこは赤坂の料亭の娘で、本来なら政財界の人間しか相手にしない半玄人だが、19歳で偶然三島と出会い、3年間毎日会っていた。贅沢に育っただこは、毎日違う着物を着て三島と遊び歩いたという。反面、売れていはいたが裕福でなかった三島は借金して高額なデート代を工面していた、と湯浅あつこが語る。だこの言を裏付け、補足する湯浅あつこのインタビューも重要で、だこが語らなかった別れ際のいきさつや三島家の裏事情が面白い。だこと別れた後、三島は家庭の事情で結婚したが、わずか二か月後、湯浅には離婚したいと語り家庭内は落ち着かなかった。一方、だこはもとから三島と結婚するつもりはなかったらしく、かねてからの友人でハンサムな財閥系の御曹司と結婚、家事はお手伝いさんに任せ、娘時代と変わらず日髪を結い芝居見物の日々で優雅な生活。この夫と三島夫人が亡くなった今だから、この本に協力したとのこと。作者の岩下尚史は、TVバラエティのコメンテーターとしてみかけていたが知識や物腰から60歳くらいかとおもいきや、1961年生まれの50歳そこそこ。おねえ言葉で古いしきたりや花柳界を語る。この本では旧漢字が多用され、文体や内容も老成された感で、80過ぎのお爺さんが書いたかのような印象で、私はこういう文章がかなり好き。これをきっかけに三島作品を読もうかな。まずは、だこの助言で書かれた「橋づくし」でも。
2013.12.13
閲覧総数 572