■まぁ私も石油公団については全く不見識であったわけでその話が出てすぐに付け焼き刃的な勉強をしましたが、私も667さんの意見に同意ですね。石油公団改革の理由 (667さん)
675▼ 名前:日出づる処の名無し 投稿日:05/02/25 20:47:46
んでは。
石油公団改革は一にも二にも「行政改革」の一環。とにかくひどかったわけだな。天下
りが。石油公団や関係石油開発会社の役員名簿を見るとよくわかるよ。経産省のみなら
ず様々な役所から天下ってる。 まぁそのおかげで生き延びていた団体にいた私には批判
する資格がないわけだがw
次に石油公団や開発会社の損失。とにかくすごい赤が出ていた。開発の失敗(掘っても
油が出なかった)もあるんだけど、円高や原油価格の低迷も大きかった。石油の世界は
もちろんドルでの取引だけど、プラザ合意で240円から120円まで円高が進んだら、円で
見た投資の価値は半減だわな。国内の会計は円でやるもんだから、それはそれは大きな
赤が出る。
生産される石油も儲からなくなっちゃった。イラク戦争以前は比較的原油価格が安定し
ていたし、円高の進行でもっともっと石油が安く買えるようになっちゃった。
676▼ 名前:日出づる処の名無し 投稿日:05/02/25 20:48:49
つまり、円貨換算の採算ラインがぐっと上がっちゃって、結果的に(油が出ていても)
商業的に失敗、というプロジェクトがいっぱい出てきた。天下り役人の無責任体質のせ
いで損失が拡大した、ということもある。で、「そんなに赤が出ているならやめちまえ
」という声が出てきた、と。(以上のことは石油を「ガス」に置き換えても言える)
堀内通産大臣は石油関係の会計がひどいということに気づいて、資源エネルギー庁に石
油開発会社と石油公団の財務諸表を全部もってこいと言った。役人は「大臣にはわかる
まい」ぐらいの気分で全部出した(段ボール何箱分も持って行ったらしい)。ところが
、堀内というのは富士急行のオーナーで、会社で経理もやっていたもんだから全部解読
しちゃった。「やっぱりひどい」「役人にだまされた」ということで、石油公団をぶっ
つぶすことが彼のライフワークになったと。 この辺は彼の著書に出ている。
小泉総理は「抵抗勢力の打破」がスローガンだから、天下りがひどくて損失がいっぱい
の石油公団は格好の獲物だと思ったんだと思う。で、堀内の提案に乗った、と。
石油公団改革が中国に誤ったメッセージを送った可能性はあるが、断定はできないとお
もう。なぜなら、改革の内容をよく見ればわかるけど、結局のところ石油公団が新しい
独立行政法人に衣替えしただけとも言えるから。 だから、「石油公団改革が中国のガス
田開発のトリガーを引いた」と主張するには根拠が薄いね。
■で、667さんは一旦離席。試掘と開発の仕組み(その1) (667さん)
679▼ 名前:日出づる処の名無し 投稿日:05/02/25 21:21:16
開発は探査、試掘、商業生産という段階を踏む。
けど石油開発ってものすごくリスクが高い。探査技術が発達する前は、
「千三つ」といって、千本井戸を掘って三本油が出る、と言われたぐらい。
もちろん出た三つから上がる収益は莫大なんだけど。
で、日本の企業は一本の油田を当てるために300本も掘るほど体力がない。
だから、資金の相当な割合は政府=石油公団が出すことになる。よって、
政府がうんと言わない限り日本の企業は開発できない。
日本企業だけでやる場合もあるけど、穴掘りから全部はやらない。せいぜい
メジャーが開発した油田の権益を一部買って、おこぼれに預かる形になる。
これがメジャーだと、そもそもの企業規模が巨大だし、潤沢なキャッシュフローで
ポートフォリオ組んで開発できるから、政府の資金はいらない。
試掘は、政府(=石油公団)が主体となってやる場合もあるし、民間企業が主体となって
やる場合もある。
石油公団がやるか企業がやるかという基準はよく知らないんだけど、今問題になっているガス田以前にも
日本周辺で石油公団主体で試掘をやっていたはず。石油公団お取りつぶし以前に。
680▼ 名前:日出づる処の名無し 投稿日:05/02/25 21:23:08
今回のガス田問題は、とにかくいきなり政治の場から始まっちゃった。
発端は読売の報道だっけ? で、自民党あたりで経産省が叩かれまくった。
本来の開発体制から言えば民間企業に石油公団が金を出すという仕組みだけど、
叩かれまくった経産省は存在感を示すために自前で探査、ということにしたんだろうと思う。
それに、あのガス田が商業的にはペイしないので、そんなものをやりたいという民間企業はないし、
儲からないとわかっているのに金を出したら経産省の責任が問われる。石油公団が叩かれた原因の一つは「儲からなかった」ということだから。
ちなみに商業的にペイしないというのは、文字通りの意味もあるけど、政治リスクが高すぎるということもある。
ほいほい開発しに行ったら自民党内の親中派に叩かれるかもしれないし、中国が強硬措置に出て投資がパーになるかもしれない。
いまは世論が追い風になっているから「自民党内リスク」は小さくなっているけど。
世論の追い風は経産省にとっても同じ。儲からなくてもお金を出せる。
逆に言うと、つい何年か前までの「経産省、石油公団けしからん」の空気の中だったら
できなかっただろうね。
■なるほどとしか言えないわけですがw試掘と開発の仕組み(その2) (667さん)
704▼ 名前:667 投稿日:05/02/26 03:06:30
あー酔っぱらった。続き。
石油開発と比較してガス田開発の特殊性を考えると、
アリババの主張にも頷ける点はもちろんある。
例えば、ガス田開発は供給先が決まっていないとできないということ。
○○電力が○○発電所で使う、ぐらいの詳細なレベルまで必要。
決めなくても開発できるけど、無駄が多くなって結局価格競争力を失う。
供給先がわからないからパイプラインを引くかLNG船で運ぶかが決まらない。
海中パイプラインは非常に高い。
世界的なLNGの需要増・供給増をうけてLNG船の供給は逼迫しているし、
またプロジェクトごとに建造するので、どれぐらいの需要があるのかが決まらない限り建造できない。
LNGは保管するのに低温にしなきゃいけないから、石油と違って貯蔵に金がかかるので、
とりあえず日本に持ってきて貯めておくということもできない。
需要はどうかというと、国内は景気もぱっとしないし、
オーストラリア沖とかサハリンあたりからガスが入ってくるあてもあるし、
とりあえずべらぼうな需要増が見込めるわけではない。
だから、アリババが言うように、この開発で本当に儲けようと思ったら中国に売るしかない(輸銀が対中融資しちゃってるしね)。
ただ、日本側の誰も本気で儲けようとは思ってないよね。ポーズとしてはそう見せているけども。
あくまでこれは地政学上の問題であって、ガスそれ自体の問題じゃない。
705▼ 名前:667 投稿日:05/02/26 03:10:37
延長大陸棚の資源も、あんなもん何年たったら開発がペイするやら、という感じ。
だけど、その商業的な問題と戦略上の問題は必ずしも同じじゃないから、
「延長大陸棚調査のための税金は無駄」とは言えない、と思います。
■ふむふむと言ったところで、字数が尽きましたw石油は戦略物資か? (667さん)
909▼ 名前:667 本日のレス 投稿日:05/02/27 06:07:23
人が少ない…貼り付けるなら今のうち。もうほとんどスレ違いだけども。
石油は戦略物資か、ということについて。
実はこれは非常に見解が分かれている。戦略物資でない、という意見も有力。
石油に携わる人は、当然のことながら「戦略物資だ!」と主張するわけだ。
その方が役所は予算を取れるし、石油会社は利益が上がるし、石油アナリストは仕事が入るし。
で、石油に関係ない人は戦略物資かどうかわからない。
OPECの市場支配力も弱くなったから、石油は他の商品と変わらないよ、というのは有力な考え方。
ただ、オイルショックと、戦前の石油禁輸のイメージは未だに強い。
特に戦前は、石油の輸入、国内流通すべてがスタンダードオイルとシェルに押さえられていた。
それで結局アメリカとオランダが石油禁輸して日本は経済の命脈を絶たれたと。
だから、戦後からつい最近まで、石油の輸入、精製、流通には外資規制がかかっていた。
(今もかかっているかも。ただしエクソンとシェルは規制以前から日本市場にいたので規制の適用除外)
個人的には、欧米にとっては石油は戦略物資じゃないかもしれないけど、日本にとっては戦略物資だと思う。
というのは、欧米は、中東以外にも例えばベネズエラやメキシコ湾岸やアフリカや
北海やヨーロッパロシアから石油を輸入できるけど、
日本は輸送コストの関係上中東とインドネシアぐらいしか頼るところがないから。
しかも産地が中国と完全に競合。
それに、欧米石油会社=メジャーが世界の石油市場を仕切っているわけだから、
欧米諸国にとっては戦略物資じゃないと言っても問題ないし。
だからロシアパイプラインには期待しているんだけど…。