を書きました。時代はまっすぐ今。(説明してどーする)

書き手の齢はそろそろ50。

失礼しました。
ありがとうございました。 (2006.09.06 15:55:28)

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2006.09.06
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テーマ: たわごと(27647)
カテゴリ: うちそと系
男の子が生まれたというので、薫はお祝いを風呂敷に包んで出かけることにした。お祝いにはなにがいいか、と考えたけれど妙案もないので鮒の甘露煮にしたのである。町に出ると気のせいか、ふだんより賑わっているように感じる。駅前では号外が出たらしく、坂通りを姐さんたちが連れだってその号外を振るようにしてさんざめいて歩いてくる。

薫はなんだか気後れしたので、下駄屋の源吉さんのところを冷やかすことにした。娘の運動靴もついでに買ってやろう。女房が言っていたけれど、源吉さんはいまでもSHINSEIを吸っている。あれ、どこの煙草だろう、と女房が言うからびっくりした。なにいってやんでえ、れっきとした日本の煙草よ、と言ってみるのだが、最近ではついぞ見かけることがない。銀製の煙管だって使っている。刻み煙草は高価なので、吸い終えたSHINSEIから煙草の葉をほぐして使うのである。黒縁のめがねもいい。まるで絵に描いたように、縁のところはセロハンテープが何重にも巻かれている。いや、これは本当の話。
「どうしたい、お祝いかい?」
「いや、男の子が生まれたって聞いてね」
「うんうん、だけどなんだな、これからは大変だ」
なにが大変なのかはわからないのだが、源吉さんはそのまま黙って、運動靴の入った箱の埃を払っている。どうみても10年は眠っていたに違いない商品だ。娘には中身だけを渡してやろう。格好だって案外悪くない、たぶん。
「どうだい、やっちゃんは?」
「どうもこうもねえな。あっちとこっちをいったりきたりだ」
やっちゃんは安夫といって、源吉さんのところの三男だ。外地に出ていたのだが、抑留されて別人のようになって帰ってきた。薫とは小学校の同級になる。やっちゃんは、家に戻ったその日、すたたたたと座敷に上がり込むと畳をひっくり返し、いきなり床板を引っぱがすと大きな穴を掘り出した。それからは丁寧な仕事ぶりで、内部を固め、藁をしきつめ、裸電球を引き込むと、そこに横になった。やっちゃんはいまでも一日の大半はそこで過ごし、気が向くと穴からはい出してきて、よしいばあさんの用意した飯を食う。源吉さんのいう「あっちとこっち」というのはそういう意味である。いや、外と内という意味か。外地と内地? 



帰りは屋敷の外堀沿いにあたる柳通りを通ってみる。川のせせらぎが微かに聞こえてくる。どこからか秋の虫が鳴き始めていて、一陣の風が吹き抜けていく。はじめて今日生まれたという男の子のことを考える。
「だけどあれだな」
気がつくと、大きな声が出ている。独り言を言っているのだ。前を歩く若夫婦がその声で振り向く。いや、独り言で、すいません、というように薫は軽く頭を下げる。それから突然文子姉のことを思い出す。文子姉は薫をカエルと呼んでいた。こんなとき、ほら、またカエルの独り言だって、よく言われてたっけな。へへ。こんなふうにして頭を撫でてくれながらさ。その文子姉も外地に嫁に行ったきり音沙汰がない。気丈で賢い人だった。ふだんは物静かな人だけれど、納得がいかないことがあれば、すっくと立ち上がり、両足を踏ん張って話し出す人だった。そんなとき、文子姉は震えていて、後になっていつも泣いていたのだ。だけどそんなこと、こんな世界ではなんの役にも立ちはしないな。安夫といい、文子姉といい、そうだろう?
「なあ、カエル」

カエルは涙がとまらなかった。








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Last updated  2006.09.06 17:11:25
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この日記は虚実綯い交ぜ‥  
UNITA  さん
だからこそ 書き手の齢をムリヤリ言い当てようとするのは どうやら浅ましいことのように思われますね。

(2006.09.06 15:25:26)

「今日」の日記  
ウラガエル  さん

全然関係ないけど  
「子褒め」という落語を思い出しました (2006.09.07 00:21:40)

Re:全然関係ないけど(09/06)  
ウラガエル  さん
夏風邪ロックさん

>「子褒め」という落語を思い出しました
-----

それで思い出したのですが、数年前に亡くなられた小さん師匠が2.26事件のときに決起軍の一兵卒としていて、どこかを占拠している夜に、上官の命令でこれを一席やらされた、そんな話があったように思います。詳しくは忘れてしまったのですが。

ありがとうございました。

(2006.09.07 03:50:14)

嘘日記の続き(妄想版) 笑  
昭和ぼたん  さん
袖のたもとから木綿のハンカチーフを取り出して、カエルに差し出す者がいた。顔を上げると、くまの小次郎だった。人にあらざる者であったか。「しかし、あれだよね。最後のわがままにねだったものが木綿のハンカチーフだなんて」と小次郎は言う。太田裕美の歌だろうか。小次郎の話には脈略がない。「今は、ハンケチをね、こうして三つ折りにして使うのがハイカラなのさ」と、小次郎は続ける。「いや、汗を拭くのとはちょいと訳が違うんでね」カエルはそう言うと、小次郎にハンカチを返して、軽く会釈してから歩き始めた。

「男の子だってさ」「アンタ、そんなことはもうとっくに知っていたさ」「生まれる前から承知のことだよ」号外を手にした姐さんたちの声がさざめく中、「いやぁ、おめでたい」とカエルは声に出して言う。「ちょいと、兄さん、お待ちよ。これが本当におめでたいことなのかい?」姐さんの一人が問う。「生まれてきたんだい。男だろうと女だろうと、生まれてきた子へは『おめでとう』ってぇ言うのが筋ってもんだ」カエルは答える。答えながら文子姉のことを考える。「へこんでいるよりはね、智恵を絞って、なんとか笑えるようにやっていこうする方が、ずっと面白いでしょう」文子姉は凛と両足を踏ん張ってカエルに語った。これは、ひょっとすると自分自身に言っていたのではないだろうか。今になってそんな風にも思ってみる。

(2006.09.07 12:43:10)

こ、小次郎ーっ 笑  
ウラガエル  さん
昭和ぼたんさん

そうです。本家嘘日記、ぼたんさんに触発されて書きました。
それにしても、小次郎、気になります。
次は小次郎日記か。笑 
なんかぼたんさんらしいスケールのでかいキャラ、私には無理かも

言いたかったこと、自分ではわからないこともありますが、つながっているように思いました。そういうことなんだよな、というように。

「へこんでいるよりはね、智恵を絞って、なんとか笑えるようにやっていこうする方が、ずっと面白いでしょう」

私が書いたものの最後がもし、

カエルはそれから大声で笑い出した。

としたら、どうだったんだろうとはじめて思いました。
泣いてしまうところが限界なんだなあ、と思ったり。

あらためてありがとうございました。
とても嬉しかったです。 (2006.09.07 15:11:58)

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