ココロの森

ココロの森

2005.07.05
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カテゴリ: 散文・つれづれ
・・・といっても

ワタクシの大好きな、川上弘美さんの本のこと、
では ございませぬ。













かれこれ 10年ほども前のことになりましょうか。


その頃 ワタクシは
体調を崩して 勤めていた会社を辞め
コンビニでアルバイトをしておりました。




バイト先のコンビニまでは
直線だと 2~300メートルほどの距離なのですが

かなり遠回りしていかなければならず
ちょっとばかり 通うのが面倒でした。












それは 秋のおわりの
とある日のこと。

もうすぐ冬だというのに
まるで 夏がぶり返したかのような
蒸し暑い 不思議な気候の日でした。




その日の仕事のシフトは
午後5時から10時まででした。

いつもより 少しだけ
家を出るのが遅れてしまったワタクシは

まっすぐ突っ切って 向こう側に抜けるルートで
バイト先に向かうことにいたしました。

本来ならば
関係者以外立ち入り禁止である学校内ですが
丁度この時間は 下校時間ギリギリの


この時間ならば
小学校に3箇所ある校門が
すべて開放されていて
校内を突っ切るこのルートならば
いつも通る回り道よりも
2~3分ほど 早く着くことができるのです。













もう陽もすっかり落ちていて
薄い紫色の空が
濃紺の闇に 徐々に染まりはじめておりました。



ワタクシは その3箇所の校門のうち
一番生徒の出入りのある西門から
校内に入っていきました。



一番出入りがある、とはいっても
それはまだ陽も高い、昼間のこと。
こんな時間に下校している児童は
ほとんどおりません。

ワタクシが入っていったときも
校舎から出てくる児童は
ひとりもおりませんでした。



この小学校は
ちょっとした丘の上にあり
くねくねと校舎が入り組んでいて
部外者が立ち入ると 
迷子になってしまいそうな造りなのですが
この小学校の卒業生でもあるワタクシには
勝手知ったる庭も同然です。





赤錆の浮いた 長い鉄階段を上がっていくと
桜の丘の上に建つ 白い校舎が見えます。



卒業した頃と
殆ど変わっていない 懐かしい校舎。

特徴のある 廊下の丸い窓や
木で出来たおおきな下駄箱、
トタン屋根で繋がったプールへの渡り廊下も
そのままです。





でもやはり ところどころ
老朽化して ヒビでも入っているのでしょうか、
改築工事をしているらしく
工事用のセメント袋やネコ車、
ちいさなショベルカーなどが
校舎の影になっている一角に
赤いパイロンに囲まれて
ひっそりと置かれていました。







そうだよな、
自分が卒業してから
もう十何年も経つんだものな・・・








そんなことをぼんやりと思いながら
その工事用具一式の置いてある横を通り過ぎました。















通り過ぎてから ふと
何かが気になって振り向くと
さっきのショベルカーの運転席に
小学校1年生くらいの男の子が座っています。

ちいさなショベルカーには
運転席のところにドアがなく
周りにもパイロンが置いてあるだけでした。
5,6才の男の子でも 容易によじ登ることが可能でした。

きっと 好奇心につられ
運転手を気取ってみたくなったのでしょう。
ちいさな男の子なら よくやりそうなことです。





「ワンパク坊主だな」






ふふっと 思わず微笑んで
しばらく彼を見つめてから
ワタクシはバイト先に向かうべく
出口となる正門の方へ向かって歩き始めました。











しかし
2,3歩いった所で ワタクシは立ち止まりました。







---- 待てよ。

   こんな暗い中、あんな小さい子が
   ショベルカーの運転席なんかに上ってちゃ
   危ないじゃないか。

   足元が見えなくて
   転落したらどうする!! ----











ワタクシは 慌てて振り返り
ショベルカーの運転席を見つめました。













----  しかし

    そこには 誰もいませんでした  ----











男の子がショベルカーを降りるような
足音も聞こえませんでしたし

誰か他の人がきて 
男の子を連れていったような気配もありませんでした。














----  落ちたのかもしれない ----














そんな音は聞こえなかったけれど
セメント袋の上か何か
音のしないような所に落ちたのかもしれない。












ワタクシは 慌ててショベルカーの脇に駆け寄り
そこここ探してまわりました。













男の子は いませんでした。






彼は ワタクシが振り返る
たかだか 2,3秒の間に
音もなく 消えてしまったのです。














・・・何故?














そう・・・

考えてみれば
最初からおかしなことなのでした。



もうすっかり暗くなっている この時間に
街灯のあかりもないのに
5メートルほど先にある
ショベルカーの運転席の
ちいさな男の子の その身体だけが
ぼんやりと光って見えることなど
ありえなかったのです。



彼の身体は
蛍のようにぼんやりと
緑色に光っていたのです。















季節外れの 蒸し暑い空気の中
背筋に冷たい汗がつたいました。


ワタクシは 逃げるように
足早にその場を後にしたのでした。



















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最終更新日  2005.07.06 15:06:58
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