ココロの森

ココロの森

2010.04.26
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そこは楽園ではないから。

テーマは「心中」。生と死、そして愛を見つめ直す、七つの短篇。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
そこへ行けば、救われるのか。
富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、
命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、
一家心中で生き残った男の記憶…
光と望みを探る七つの傑作短篇。





一昨日の文楽から 心中続き で恐縮です・・・
狙ったわけではないんですが、重なりました (-"-)



確かにどの話にも「心中」が出て来るのですが
どの話も肉体的な「死」というより、精神的な「死」を扱った話でした。


そこにいること、鼓動がきこえること、温もりに触れられること、
それだけで「生きている」と、ほんとうに言えるのか。

逆に、肉体が存在しなくとも
ありありと感じられる身近な「存在」や、

ひとくちに「死者」と片付けられるものなのか。


七つの話の主人公たちは、私たちに問いかけます。



人生に行き詰まりを感じた中年男性が、
死に場所と決めた樹海でであった青年とともに彷徨ううち
他者の心遣いが身にしみて「生きたい」と願うようになる  『森の奥』


老作家が、駆け落ち同然で一緒になった妻に対し、
命がけの恋をした過去を振り返りつつ、一言物申す  『遺言』


死んだ祖母の語られなかった過去が、
思いもかけない運命と客を招いた  『初盆の客』


過去生を繰り返し夢に見る私。
私は彼と心中した。
『君は夜』


先輩は何故自らの身体に火を放ったのか。
先輩と付き合っていた彼女と共に理由を探しだした私だが
その結果、あぶり出された思いがけない一面に愕然とする  『炎』


彼女は、いつも傍にいる。
僕だけにしか見えない彼女は、ほんとうに「死んだ」のか?
『星くずドライブ』


一家心中の生き残りである悦也は、今もその記憶に囚われているが
もうひとつ、厄介なものに囚われている。
悦也を気遣いつつも彼の過去を吹聴してまわる幼なじみの悠助に。

『SINK』




どれも良かったです。

『遺言』 ではちょっぴり泣けたし、
『君は夜』 では、お決まりのパターンに色をつけることで
 よりリアルに感じ、空しさも増幅されて感じました。


でも、一番はやっぱり最後の 『SINK』

悦也は、支えて欲しいと思ったことも、一緒に幸せになりたいと思ったこともない。
自分には相手に期待するものがなにもないのだと、何回か同じことを繰り返してようやく気づいた。
なんの期待もない人間が、相手の期待に応えられるわけがない。


      ( 本文より )





なにもかもを諦めてしまった人間の悲しさとは
期待や希望が持てない事じゃない。



相手のそれに、気づけないこと。


そして、自分が気がつかないことで
相手が更に深く傷ついていることに
まったく気がつかないどころか
それを推し量ることもできないところだ。




悪い意味での自己完結と無関心が
自分の中で「あたりまえ」になってしまっていることだ。





物語の中で、最後に悦也は
その「あたりまえ」の過去の上書きを試みる。

それは決して簡単なことではない。

けれど、不可能ではない。



死者の気持ちは、
あとからどんなに想像しても、あくまで「想像」でしかないし
自己都合で書き換えも可能だ。

けれど、生者対生者であるかぎり、
相手を 「思い遣る」 ことは最低限のマナーであり、優しさであると、私は思う。


相手を 「思い遣る」 ことは、
昨今、好んで使われる 「想像力」 なるものとは全く違う。

「想像」というのは
自分で勝手に相手の心を推測する事だ。
価値観はあくまでも自分のもので、
「自分だったらこうする(こう思う)のに」と「想像」する。
それは結局「押付け」であり、
「想像」どおり動かない相手に対して怒りや戸惑いが生じる。

「思いやり」というのは
相手の立場に立ってみる、ということだ。
相手が内向的であるならば、自身が社交的性格であっても
まず相手にあわせ、相手の視線でものごとをみることだ。



悦也は、「想像」ばかりしていた過去から
「思いやり」のほうへ、一歩踏み出したのではないだろうか。


「生きている」自分の事ばかり考えずに
ほんとうに
「死者」を思って・・・

















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最終更新日  2010.04.26 23:41:49
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