文の文

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sarisari2060

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2007.10.24
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カテゴリ: ゆうすけ
jm


ふたりで病院の屋上に出て見上げた夕刻の空は
こんなふうだった。

ようやく薄日が射してきた。
そんな日だった。

何もない日はさらさらと流れていくけれど
危機感を持って過ごす時間は濃密だ。

白いフェンスに手を置いて彼は言った。

「ここはどこ?って感じだよ」

救急車で担ぎこまれて
今自分がいるところが
どこなのかさっぱりわからないんだ、と。
それがとても気にかかるようだった。

わたしは、君さえ元気になってくれたら
ここがどこでもよかったし
そんなことは全くあたまのなかになかった。

毎日君の病状を案じながら
同じ道を来て同じ道を帰った。

「あっちの森はなに?」

あれはたぶん目黒不動尊の森だ。
広い敷地にうっそうと茂っている。

何年か前、ひとりで来たことがある。
こんな形で再びまみえるなんて
思いもよらないことだった。

「あの道はどこへ繋がってるの?」

悪いが、そんなこと知らない。

わたしはこれからの君の人生が
どこへ繋がっていくのか
そればかりが気がかりだ。





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Last updated  2007.10.25 02:29:48
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