文の文

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sarisari2060

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2009.02.13
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カテゴリ: ひとりごと
横浜の知人から葉書がきた。
同じ作文の教室に通っていたひとだ。

とりたてて仲がいいわけではなかったが
互いが所属する同人誌を送りあっていた。

印刷された文字は、時候の挨拶に続いて
ご主人が昨年12月になくなったと知らせている。

「リンパ頸癌による頸動脈からの出血より急逝致しました」

想像すると血が引くような言葉がならぶ。

実家の父は動脈瘤破裂で逝った。

そんなシーンが自分のなかで点滅する。

彼女自身、右目を失明している。
脳出血が目の中で起こったようなものだと言っていた。

それはたいへんでしたねえ、不自由なことで
と電話したのが一昨年だった。
また続いてたいへんな一年だったようだ。

故人の希望で家族葬にされたとある。
「生前に賜りました夫へのご厚情に
こころから感謝いたします」

そんなそぞろな決まり文句が続く葉書は
葬儀から2ヶ月が経って、届いた。


たくさんの雑用と動かないこころ。
気がつくと時間ばかりが流れている。
そんな感じだろうか。

平成21年2月という文字の横に
少し乱れた手書きの文字で3行書かれてある。


この一年看病のため、まったく書けなかったそうで
今は「書く」ことがあって本当によかった、と感謝している、とある。

「書く」ということはカタルシスであり
文字にすることで自分の今を客観視できるということだろうか。

いや、何もかも忘れて、
ここではない世界に一途に没頭する時間があることが
今の彼女の救いになっているだろう。


「突然の死だったので帰ってこない出張にでかけているみたいです」
それが最後の一行だ。

ほんとうにひとはあっけなく死ぬ。
ひとのちからではどうしようもなく
死んでしまうのだと改めて思う。

生前にどんないきさつがあったにしろ
家族の不在を受け入れるには長い長い時間がかかる。

家の中で何気なく発するひとことが
行き先を失ってしまう。
振り返ったその場所は空っぽだ。

そんな日々を繰り返し繰り返し
ああ、もうどこにもいないのだと、
思い知らされる日がくる。

そんな彼女にどんな返事を書けばいいのだろう。
なにも書かないほうがいいのだろうか。





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Last updated  2009.02.14 02:16:12
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