文の文

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sarisari2060

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2010.10.10
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カテゴリ: エッセイ


雨が上がったからか
TV「美の巨人」で紹介されたためか
やたらの人出だった。

チケット売り場の前にこの行列。
40分の待ち時間だとか。

2010-10-10-1.jpg


チケットは持っていたので
行列はスルーしたものの
館内もやはり人が多かった。

昔、パンダを観たときの行列みたいに
ガラスにへばりついて人が並び
とろとろと進む。

これがつらい。
で、その行列には入らず
数歩後ろに立って、人影の間から絵を観た。

それでも時々全体が見える。
それで良しとして次に進む。

美人画。
それぞれの傾げられた首の角度に
いろんな意味がある。

しなやかな肢体、
まろやかな腰つき

見事な意匠の着物、帯
控え目な自然情景

こころはずむ女
こころもとなげな女
もの想いにふける女
一心に芸に打ち込む女
日々の暮らしに心砕く女
そして狂女もいる。

美しい面立ち、
切れ長の細い目

一途な目、まっすぐな目
恥じらう目、憧れる目
いつくしむ目、慈愛の目
ここに居ながらなにも見ていない目

どの目も
しっくりと美人画の中に収まっていたのだが
一枚、あれ、っと思った目があった。

青眉.jpg


「青眉」と題されたその絵が気になって
次に進めない。
進もうとしてもまた舞い戻って
その絵に見入ってしまう。

青い眉というのは
結婚して子供ができた女の人が
眉を剃ったその剃り後が青い、
ということらしい。

なるほど、眉の感じもあるのだが
このおんなのひとの前を見据えた目が
その絵に収まっていない感じがするのだ。

傘の影に隠れて
なにかその身の丈に合わないことを
ちょっと不穏なことを
考え続けているような気がして
こちらの胸のあたりがざわざわしてくる。

ざわざわしながら
けっしていやな感じはなくて
いっしょにその不穏な想いを共有したくなって
その場を離れられない。

なぜだかわからないが
どの絵のひとよりも身近に感じていた。


帰宅して読んだ図録の説明には、
明治の京女である
画家の母親の懐かしい姿でもあった、
とあった。

京女が思いを巡らすときの目は
こんなふうに少し不穏なのだと納得したりする。











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Last updated  2010.10.10 23:45:36 コメントを書く


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