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2010.12.03
ささやかに忘年会
カテゴリ:
エッセイ
出席者3人のささやかな忘年会を開いた。
ひとりは人生の師匠、千鶴子さん
いまひとりは、
以前同人誌でごいっしょだったTさんという68歳の男性だ。
今年で6回目くらいになるだろうか。
いつもは桜木町の改札で待ち合わせるのだが今年は
荷物が重いので店に直行して、席取ってます
と千鶴子さんから連絡があった。
千鶴子さんは毎年
ボジョレーヌーボーを持ってきてくださる。
二人分だから重いのは確かなのだが
今年から、というのは
やっぱり足の具合がよろしくないのだなと思う。
Tさんと二人して桜木町から野毛へ向かう。
Tさんは小説を書くために早期退職をして
何作かの投稿である地方都市の大賞をとられた。
が、その後はボランティア活動などをされて
文章は書かれていない。
そのTさんから「書いてますか?」と問われる。
「いえ、わたしはいま露天商ですから」と
苦笑まじりに応じる。
千鶴子さんは今年も
個人誌「藻乃露於具」を出した。
書かない二人は深く頭を垂れる。
地下道を歩きながらTさんがいう。
「いいなあ、露天商。
田中コミマザも露天商だったんだから。
コミさんはいいよ」
「はあ」
続く文学のお話にもなかなか会話のピントが合わない。
「僕ねえ、万葉集を読み切ったの」とか
「古今和歌集、いいじゃない」とか。
今わたしが読んでいるのは
内田樹氏の「街場のマンガ論」ですとは言えない空気で
ほうほう、はあ、なるほど、を繰り返した。
露天商には
文学はいささかくすぐったいなと実感した。
店で待っていた千鶴子さんは背中が丸く
ますます小さくなっていた。
そう気づくと固くなっていく想いがあった。
振り払って笑顔であいさつした。
乾杯をしたビールのグラスに一瞬口をつけたきり
千鶴子さんは飲まなかった。
「わたし禁酒、してるの」
ビールはメートルで飲むの、
そう豪語していた千鶴子さんなのに。
「お酒飲んで酔っ払って素っ転んだら
親父さんに迷惑かけるから」
それが84歳の同い年の夫婦の形。
「僕は飲みますよ」
とTさんは芋焼酎の杯を重ね
自分の来し方を語り始める。
父親を早く失くし、家業を継ぎ、
やがていろいろあってその家業を弟に譲り、
金も当てもなく家を出た。
図書館で新聞の求人欄を見て面接に行く。
なかなか受からない。
最後には交通費の500円を目当てに行っていた。
いろんなバイトをした。
「新幹線の清掃もしたよ。
駅のホームの端っこでしゃがんで、
西日を浴びながら、新幹線が入ってくるのを待って
折り返しの間に座席の間を掃いていくのよ。
それが済んだら、席を反対向けて、
頭のところのカバーを替えて。
おばさんたちといっしょに働いてたんだけど
みんないいひとだちだったなあ」
Tさんがちょっと振り返れば
小説の素材がたくさんあるように思えて
それをいうと
「そんな貧乏な時のことは書かないでって
カミさんに言われてね」
と返ってきた。
あれもダメこれもダメって言われて
だんだん書けなくなっちゃって
うつっぽくなって、
ますます書けなくなったんだよね。
Tさんは、芋焼酎のお湯割りの入った
こげ茶色のカップのぬくもりを確かめるように
両の手で抱えて、
答えを求めるようにそのなかをのぞきこんだ。
Tさんが迷い込んだ迷路は
Tさん自身の人生のなかにあるもので
傍から口を挟むものではないのだと
わかってはいるのだが
こころのなかに
いささか批判的な言葉が浮かんでしまう。
いいひとは文学やったらアカンと思います。
そんな言葉を言いそうになったら
隣で千鶴子さんが口を開いた。
「うちのおやじさん、ほんとにマメで
おつかいに行ってくれるのはいいんだけど
キャベツは買ってくるのに
絶対レタスはかって来ないの。
なんでなのって聞いたら、
キャベツのほうが安いからだって。
用途が違うのに。ケチよね」
ふっと空気が変わって
Tさんの表情が緩む。
千鶴子さんのご主人が、今回、
これはわたしに、と選んで
さわり心地の良いカラフルなスカーフを
ことづけて下さった。
「けちなんかじゃないですよ」
「そとづらはいいのよ」
と、にべもない。
同人誌という過去の一点で交わった3人にも
それぞれその前と後の暮らしがあり
遠景で眺めてみれば
ずいぶんと異なった傾きの線を描いている。
それでも年に一回、
その交差点の思い出を語る日があることは
こころを温めてくれるのだが
帰り際、ぽつんと千鶴子さんが言った
「これが最後になるかもしれないし」
という言葉は
きりりと胸を刺した。
「もうー、絶対、そんなことないですよ」
そう言いながら、
千鶴子さんの乗ったタクシーを見送った。
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Last updated 2010.12.04 01:55:48
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