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「サッカーの歴史は、組織を超えた個人の力が最後は勝負を決めてきた」というのが、ジーコ監督の持論だった。「グラウンドでは監督の力は少ししか作用しない」と語り、指示されるのではなく選手自らが状況判断を下す自主性も求めた。
欧州や南米の強豪にはシュート力があり、強く、速い選手が多い。個人の力を押し出して自主性を喚起することで対抗できるほど、日本選手のレベルは高いのか。そんな議論が、サッカー界で就任当初からあった。今回のW杯で、世界との個人能力の差が露呈した。結論からいうと、ジーコ監督のやり方は時期尚早だった。
だが、方向性は間違っていたのだろうか。日本はこれまで、個人能力の劣勢を、組織力を研ぎ澄ませることでカバーしようとしてきた。現実的な策ではあったが、個人能力の不足と正面から向き合わない、逃げでもあった。
戦うのは選手なのだ、という強いメッセージを出し続けたジーコ監督の信頼に、チーム全体が応えなかった面もある。
決定力が課題なのに、練習でシュートをはずして笑っているFW。勝つしかないのに、失敗を恐れて冒険的なプレーに出る勇気が持てない選手。試合に出られないからと、冷めていた控え陣。
「予選突破後、『体力や技術を少しでも培う努力をしてくれ』と言ったが、できなかった選手もいた。日本サッカーを変えられるチームと信じていただけに寂しい」と、ジーコ監督は心境を明かした。チームには個人能力だけでなく、プロ意識も足りなかった。
ジーコ監督は選手を信頼し過ぎてしまった。懸念されるのは、この4年間が否定されてしまうことだ。組織と個人能力は対立軸ではなく、両方備えてこそ、強いチームになる。やっぱり個人能力重視はだめだと、組織頼みに針を戻すようでは、日本サッカーは退行するだけだろう。
――引き分け1回で勝ち点1。その原因は日本の選手か、それとも監督か?
監督が試合に勝つわけでも、負けるわけでもない。選手が試合に勝つわけでも、負けるわけでもない。チームだ。
今日ブラジルに負けたために敗退したのではなく、オーストラリア戦の最後の8分間で敗退へ向かっていた。クロアチア戦、ブラジル戦によって敗退したわけではない。オーストラリアとの1-3の試合が痛かった。それでも選手は全力を尽くそうとした。選手は素晴らしい闘志を見せたが、グループリーグで敗退することになった。
――ブラジルについては
すでに決勝トーナメント進出を決めていて、落ち着いていた。交代策も冷静だった。ブラジルは速く、日本はマークに苦しんだ。ブラジルが能力を発揮したときはすごかった。ロナウドが私のチームにいればいいなと思う。それだけ彼は相手チームとの違いを作り出すことができる。
ブラジルにとって仕事は簡単だったと思う。われわれは2点差をつけてブラジルに勝たなければならず、必死に戦わなければならなかった。リードを守って後半に入れたら、もっといい形で試合をできたと思う。しかし、ブラジルには前半の終わりに同点ゴールが生まれ、彼らは冷静になることができた。
――効果的なプレーをしたとは言えない中村を最後まで残したのはなぜか? また、日本らしいパスサッカーを見せることができなかった理由は
中村は素晴らしい選手で、日本に喜びをもたらす選手だ。しかし、ベストでなければ交代させないといけない。だが、高原がけがをしたので中村を代えられなかった。(中村は)ワールドカップ(W杯)では残念ながら実力を発揮できなかった。
パスについては、たくさんミスをしていた。選手がやる気になり過ぎたのが原因かもしれない。あせりもあったのだろうか。
■日本はまだ世界のトップに達していない
――監督の今後は
日本との契約はW杯で終わる。2カ月前に日本サッカー協会と話をして、W杯までだと説明した。日本はアジアカップを控えていて8月に試合があるので、すぐに(新しい監督とチーム作りに)取り掛からないといけない。
これまで私を信頼してくれて感謝している。いい仕事をした。日本は、これからも成長し、よりいいチームになっていかないといけない。日本はプロになって10年余り。相手からも注意を引くチームになった。でもまだ欠点もある。ここ(W杯)に来るまでは困難な道のりだった。でもW杯の出場は自ら勝ち取ったもの。私自身は全力を尽くした気がしている。
今後についてだが、欧州に行くかもしれないが、サッカーの監督をこれからも続けていく。偉大な監督というのはいつも小さなクラブから小さなスタートをしている。私のキャリアは日本からだった。W杯に出ていなければ成果にはならなかった。
今回(のW杯)は、チームがまだ成熟しておらず、後半まで(いい試合運びが)続かなかった。オーストラリア戦もそうだった。80分過ぎまで勝っていて、最後の8分間で敗れた。日本は前進しなければならない。世界チャンピオンからスタートするわけではないのだ。
われわれには夢がある。信頼もある。そこには可能性もある。でもW杯では負けた。それに対して満足しろとは言えない。日本はまだトップフォームに達していない。世界のトップにはまだ達していないのだ。しかし私は楽観主義者で、日本のサッカーに対しては楽観的だ。今回はある試合での、ある出来事が起きて敗退となった。
――日本はアジアカップで優勝するなどアジアでは力を見せた。世界との大きな差は具体的には何か?
まずプロフェッショナリズム。自分の欠点を、それも日常のレベルで知らないといけない。日本の選手は外国のリーグでたくさん使われているわけではないが、私は彼らを信頼しているから使っていた。しかし選手には(試合の)リズムが必要。そこは改善しないといけない。外国のクラブだけでなく、Jリーグでも自分のいるクラブでずっとプレーしないといけない。もっと大きな大会に出ることも必要だ。肉体的に強くならないといけない。オーストラリア戦、クロアチア戦を見れば分かる。彼らはボールを前に放り込み、体を使ったプレーをしている。日本はそこが問題だ。W杯においてはとてもフィジカルの強い選手を相手にしないといけない。
――今大会の問題は
今大会はたくさん問題があった。特に肉体的なコンディションだ。この4~5週間、ドイツに入って23人全員で練習をしたことはなかった。
オーストラリア戦では坪井を大事な場面で失った。(親善試合の)ドイツ戦でも高原に問題があった。中村もクロアチア戦で熱があった。選手はアスリートとしての能力を失った。このように、メンバー全員で練習できなかったのは問題だった。午後3時開始の試合が2試合あって、生理学的な部分も変えなければならなかった。食べ物も変えた。この数週間、日本は困難な状態にあった。
<了>
(スポーツナビ)