加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

February 7, 2021
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最近話題の音楽書からもう一冊。

 およそ30年におよぶN響時代に出会った数々の指揮者の肖像は、それだけで日本の演奏史の1ページ。演奏も態度も威厳そのもののカリスマ指揮者サヴァリッシュから、明快で無駄がなく、迷いがなく、高速で直進する、21世紀のIT時代が生んだ新しいタイプの指揮者パーヴォ・ヤルヴィへ。LP時代(それよりは新しいけれど)の指揮者からネット配信時代の指揮者へ。音楽界も時代とリンクしていることがよくわかります。国際的な活躍をしている指揮者は皆それぞれ個性的なのでしょうが、著者の観察眼と知性、ユーモアのセンスで極上の、時に抱腹絶倒、時にニヤリとさせられる読み物になっています。そして、「指揮者って何をしているの?」という素朴な疑問にも、これ以上ない答えをくれているのです。
 ちなみに、「終わって欲しくない」と思った演奏会は、スクロヴァチェフスキとプレヴィンだったそうです。
 もうこれは、何箇所かご紹介して、唸ったり、腹を抱えたりしていただくことにしましょう。

 小澤征爾。
 「とにかくものすごく指揮がうまくて、ため息が出るほどだった。全ての合図、動きには音楽としての意味があり、見ているだけでどうすればいいのかが本当によく理解できた。。。
 その演奏の精密、絢爛、迫真は、全く体験したこともない高い水準だったことも疑いがない。」
うーん、見てみたい。


 「練習場に出てきただけで自信、余裕にあふれたその態度というのは頼もしく、セクシーでもある。「仕事だ、仕方ない、また音楽でもやるか」と言わんばかりの、ちょっと音楽嫌いそうな感じは、朝イチのオケの気持ちと完全にシンクロしていて、それだけで心を捉えられる。。。。
 。。。ある瞬間から、急に両肘が前に張られて心臓あたりを両手で持ち上げるような独特の気合が入って、音も「ぐぐぐ!!!」と変わる。。。。
 。。。。もう、楽譜などというものは遠い昔のどこかで消えてしまって、全ての音は世界に初めからあったのだ、というような作品との一体感。。。。」
 目に浮かぶリハ風景。そして「作品との一体感」の奇跡は、チョンマエストロの場合、東フィルとのマーラー5番で体験しました。。。。深海を漂っているようでした。

  ネルロ・サンティ (抱腹絶倒ナンバーワン!!!)
 「よく歩けるな!と思える縦横前後に大きなお身体に、国家元首の如き貫禄ある笑顔が乗っている。指揮台に上がると「ボンジョルノ!」と大きなよく通る声でおっしゃるのだが、この瞬間に、高輪練習場を出た外はすぐアドリア海で、真っ青な海、白いテーブルクロスのかかった古城レストランからトマトとニンニクをを煮込む匂いがしているのではないかと思えるほどに、全てがイタリアになってしまうのであった。同じイタリア人でもファビオ・ルイージ氏やジャンナンドレア・ノセダ氏、、、のような若い世代の場合は、もう少し国際的で、練習も滑らかなる英語、良き時代のサンティ師匠はほとんどがイタリア語で、「バ ベーネ ファッチャーモ シンフォニー クワットロ プリモ テンポ ダカーポ!」と高らかにお告げになる。。。。
 。。。さらに笑えるのは、これになぜか時々英語やドイツ語が交じることであって、そこかで「国際的指揮者」の片鱗が顔を出すのだが(失礼)、一番すごいのは、「こう思うんですが」と言う時の、「アイデンケ」。英語のIとドイツ語のdenke が同居している。。。」
 すごいですね、これ、お分かりですよね?ドイツ語なら Ich denke 英語なら I think が同居しているわけです。たまりません。爆
 茂木さん、サンティ師匠と共演した「アイーダ」や「シモン・ボッカネグラ」(演奏会形式)は楽しかった、と回想しています。 ヴェルディ生誕200年2013年の「シモン」、よくやってくれました。素晴らしかった。ヴェルディ好きにはたまらないオペラなのに、日本ではなかなかやってくれないので。。。

  最後を締めくくるクリストフ・エッシェンバッハと著者のエピソードも感動的です。24歳の若い頃、バンベルク響で共演したとのことですが、そのマエストロと、著者の退職の直前にN響で共演できた。その演奏は「音楽愛のある」、「ここまで心のこもった指揮者というのは長いN響体験の中でもほとんどなかったのでは」というものだったそう。
 そのエッシェンバッハ氏は、著者に、一流指揮者とたくさんの曲を演奏したい、という夢を抱かせてくれた、「自分に初めてはっきりとした人生の夢を見せてくれた指揮者の一人」でした。

 そうじゃない。全部、本当のことだったのだ」。
 いいなあ、人生。

 本書で、著者が「古楽に目覚めるきっかけ」になったと書いているブリュッヘンのベートーヴェン。死蔵していた「第9」を引っ張り出して聴きました。確かに超名演!

 本の詳細はこちらから。

茂木大輔 「交響録 N響で出会った名指揮者たち」





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最終更新日  February 7, 2021 01:55:17 PM


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