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2013.12.11
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カテゴリ: 読書
私が敬愛してやまない作家 玉岡かるさんの最新刊



【送料無料】虹、つどうべし [ 玉岡かおる ]

玉岡さんの最近の作品は、実在の人物を
しっかりと資料を調べたうえで書かれていることもあり
年に1作か、もしくは2年に1作というペースだったのに
今年は、 先月感想をUPしたばかりの「ひこばえに咲く」 から
日をおかずにこの小説が上梓され
ファンとしては嬉しい限り!


読むスピードがなかなか上がらなかったのには
自分でも歯がゆい思いでいっぱいでした。

それは「虹つどうべし」が玉岡先生初の時代物(戦国時代)であること
播州三木の別所長治とその周辺人物の運命を主題にしていたとが原因だったと考えられます。

播州 三木の別所長治、ご存知ですか?
ごめんなさい、私は全然知りませんでした。
だから、別所一族の血縁関係もすぐになじめず
「えっと、これ誰だったっけ?」と
何回も前のページを見直したりしました。
言い訳するようですが、別所一族が
天下統一を目の前にしていた織田信長に従わず、

歴史の脚光を浴びていず、なじみがないからと言えるでしょう。

ですが、播州では、石碑があったり
別所長治にちなんだお菓子があったり
「別所公春祭り」などもあり、
播州で育った玉岡先生にとっては


私にとってそんな歴史上の人物がいるかなぁと振り返ってみると
近松門左衛門かもしれません。
私は5歳まで兵庫県尼崎市に住んでいました。
近松門左衛門のお墓は尼崎市にあるのです。
先日ご紹介した巨大硯のモニュメント 以外にも
尼崎市内には近松門左衛門にまつわる様々な場所があります。
その一つが「近松公園」。
私が住んでいたところから子どもの足でも5分とかからない場所に
「近松公園」があったので
よく、かくれんぼやおにごっこなどをして遊びました。
だから成長して学校で近松門左衛門のことを習った時
まるで知人か親戚のように親しみを感じました。
きっと、玉岡先生にとって別所長治というお殿様は
そんな存在だったのでしょう。

小説のサブタイトルに「別所一族ご無念御留」とあるように
別所一族の運命には悲惨なものがあります。
「三木合戦」は戦国史上まれにみる悲惨な籠城戦で
おびただしい餓死者を出したそうです。
玉岡さんはその歴史的事実に、
想像上の「くの一」を登場させて物語を紡いでいます。
正史には見当たらない存在ですが
居ても不思議ではない、いや、きっと居たであろう女間者 希久。
歴史の中に滅び去った別所一族といい、希久といい
先月末に参加した講演会で
玉岡さんがおっしゃった
「私は偉人伝を書きたくはない。
 歴史に名を残すことなく、
 自分の存在を高らかに示すことができずにいた人に
 光を当てたい」という思いにぴったりの人々です。

この小説はタイトルに含まれている「虹」に合わせて
其ノ一 赤(せき)の章 播磨の女 から
其ノ七 紫(し)の章 命満る まで、
虹の七色、赤橙黄緑青藍紫(せき とう おう りょく せい らん し)が
冠された章から成り立っています。
私は最初「虹、つどうべし」というタイトルとその章立てから
「南総里見八犬伝」のように
虹の色それぞれにまつわる人物が集まって何かをするのかと
勘違いしましたが、そうではありませんでした。
この小説における「虹」とは何か、
それは実際に読んでみてください。

来年の大河ドラマの主役、黒田官兵衛に
滅ぼされた側の視点で書かれている点も、興味深いと思います。


それから、この小説はあとがきがかなり丹念に書かれています。
その中で、この小説が玉岡さん史上最速の1カ月で書き下ろせたこと、
そして原動力の一つが「Nさん」だったと書かれている部分は
私の心を締めつけました。

このエピソードは玉岡さんが講演会でも語られていたので
ここで公表しても良いと判断して書かせていただきます。

Nさんは玉岡さんの作品の愛読者で
ご自身を別所一族の末裔だとおっしゃっていたとか。
そしてぜひ、玉岡さんに別所長治を書いて欲しいと
膨大な資料を託されていたのでした。

そして前作「負けんとき」の出版記念講演にいらしたNさんは
講演後最後まで残って、玉岡さんに思いを語られたのでした。
私が胸を締め付けられるのは、
その場に私もいた からなのです。
私はこの日、講演会終了後、仕事で玉岡さんに話を伺うお約束になっていました。
それで、受講者の皆さんが全員お帰りになるまで
会場のすみでお待ちしておりました。
それなのに、なかなかお帰りにならない初老の男性がいらっしゃった、
今思うとそれがNさんだったのです。
私はおとなしくお待ちしながら内心で
「ああ、早くお帰りいただけないだろうか」と考えていました。
というのは、講演会場のご厚意で、
そのあと会議室を貸していただく予定になっていたのですが
お借りできるタイムリミットが迫っていたため
だんだん焦りが生じて来たのでした。
ずいぶん名残惜しそうになさっていたNさんがお帰りになって
正直なところホッとしたことを覚えています。

ところが…。
Nさんはその時、もうご自分の命が長くないことをご存知だったのです。

玉岡さんは「どうしてもっと早く取り組んで、Nさんの命がある間に
この作品を仕上げて、お目にかけられなかったのか」と
先月末の講演会で 悔やんでおられました。
そしてその席で「この講演会が終わった後、お墓参りをさせていただく」とも
おっしゃっていました。

私はそれをお聞きした時
「ああ、私はNさんに対して
あの時、なんてことを考えていたんだろうか」と
申し訳なくて、涙が出そうでした。
今思えば、Nさんがそばにいらっしゃったとしても
私の仕事に支障はなかったはずなのです。
どうして玉岡さんに「ご一緒にどうですか?」と
ご提案できなかったか…。
それはおそらく、私自身、仕事という立場以上に
玉岡さんのファンという気持ちが先にたっていたせいだと思います。


そして先日、玉岡さんがFacebookで
Nさんの墓前に「虹、つどうべし 別所一族のご無念御留」を
ご報告されたということをお写真を添えて書いておられました。
ご仏前には、Nさんが玉岡さんと最後に撮られたツーショット
(私が「早く帰って下さらないかなぁ~」と思った日の写真)が飾られていて
「人生最良の日」とサインペンで書き添えられていたのでした。

もう、その文字を見た時、私は泣くしかありませんでした。

私が講演終了後に玉岡さんとお約束をしていなければ
もっともっとNさんは玉岡さんとお話しをしたかったことでしょう。

私にもっと人間観察力があれば、
Nさんから何かを感じ取って
「このあとご一緒にいかがですか?」とひとことお声をかけて
Nさんにもっと満ち足りた気持ちで過ごしていただけたのではないか、
などなど、胸が詰まるばかりです。
そんなことを考えることは、自分を過剰評価していて
不遜なことなのかもしれませんが。

この本についてはお勧め度は書けません。
私にとって特別な小説になりましたから。
「一期一会」という言葉の意味をかみしめています。
そしてNさんのご冥福をお祈りします。


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最終更新日  2013.12.11 20:57:53
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