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2007.03.01
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女がやっとのおもいでその丘の上に登り、遠くに霞んで見える木立のような陰を見付けた時、朝の日差はもうじりじりと地面を焦がし始めていた。
女はよろよろと歩き始めた。
他に身を寄せるべき所もないのだ。
しかしその木立は丘の上から見えたほど近くはなく、夕暮れになってもまだ木の陰さえ見えない。
西日が砂ぼこりの舞う地面を照り付ける中、何度も足を取られ砂の上に転びながら霞んだ目で前へ前へと歩いた。
女が身に付けているのはかつてバスロープだったであろうぼろぼろの布切れ一枚。
裸足の脛に幾つかの消えかけた傷。
砂まみれの髪を払いもせず、一歩一歩前に進みながら女は渇きを知らなかった昔のことを思い出していた。
夫と二人の子供、たしか女の子と男の子。

怯え切った彼らの目が、まっ赤に焼けた剣を背中に押当てられたような感覚として、胸に突き刺さったままだ。
気が付くと辺りは夜になっていて、頭上には満天の星が広がっていた。
昼間の熱を含んだ砂の上を涼しい風が吹き抜ける。
前方に目を凝らすと一部分に集中して立っている木々が見える。
木を見るなんて何日ぶりだろう。
あそこには湧き出る水があるに違いない。
最後の力を振り絞って、荒い息で木の根の所に倒れ込んだ。
木は変色し、立ち枯れるのをただ待っていた。
その向こうに見えた地面の大きな窪みに転がり込む。
女の体が到着したのは乾いた砂と石ころだけの場所だった。
水が存在した痕跡さえない。

私は哀れな女なのだろうか。
それともここがもともと私の行き着くべき場所だったのだろうか。
もう渇きも疲れも痛みも感じない。
心地よく星空が近付いて来る。

2007、3月






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最終更新日  2007.03.07 00:45:32
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