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カテゴリ: カテゴリ未分類
今年もまた故郷の山奥のダムにやって来る。
いつもより水が少なく、土葬の墓から露出した色褪せた骨のように茅葺き屋根の先が見えている。
あの時幼い僕が立っていた場所と同じ所に今いるはずだから、あの屋根は三郎じいさんの家かもしれない。
27年前、村人(たち)が皆この小高い丘の上に立って、住み慣れた村に少しずつ流れ込む水を見下ろしていた。
晃や則ちゃんと独楽回しをして遊んだ路地にもゆっくり水が溢れその上に朝の日の光が影を作り、生まれ育った家の角の崩れ落ちた見慣れた白い壁も日に照らされて光って見えた。「三郎じいさんが若いころよくあの家の縁側を舞台代わりにして落語を聞かせてくれたのよ。お母さんはまだ小さかったけどよく憶えているわ、テレビなんかなかったから楽しみにして、皆庭に茣蓙を敷いて座って聞いたの」僕が見上げると母は三郎じいさんの家の縁側を瞬きもせずじっと見下ろしていた。
縁側は開け放たれ、古い畳の上にも水は流れ込み始めていた。
僕の周りの村人からはすすり泣きの声が聞こえたが、母は涙を流さずただじっと時間の消滅する瞬間を見守っていた。
今は皆もういなくなって、静かな水面に鶯の声がこだまし、その水の下ではささやかな落語会に集まる村人たちの笑い声が響いている。
2007年4月






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最終更新日  2007.04.23 10:10:45
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