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クワストフはとうとう歌劇場のコーラスの仕事に就くこととなり、一年半続いた我々二人のコンビによる絨毯配達の仕事も終了することとなった。
朝まだ暗いうちから起きなくてはならない生活にもうんざりしていたが、いざ終わるとなると何だか寂しいような気もした。
寒い日は山靴を履いて膝上まで積もった雪の中を、夏の暑い日は半パンに帽子を被って汗だくになり、激しい雨の降る夜もずぶ濡れになって二人で絨毯を運んだ。
そこで僕はドイツ語を覚え、ドイツ人の気質を知り、山間の小さな村の古くから続くドイツの人々の生活を数多く見た。
今もドイツ歌曲を歌う際、そういった彼らの生活を思い出す。
我々の最後の配達は八軒と結構多かった。
工場の絨毯をLKWに積込み、我々は車に乗り込んで、いつものように住宅街に向かった。
クワストフは黙ってハンドルを握り、僕たちはあまり話さなかった。
八軒全部配達し終わると我々は汗だくになってはあはあ言いながら車に戻った。

少しの沈黙の後「ベルリンの近くの町らしい、まだはっきりとは決まっていないんだ」「そんなに遠いところかい、それじゃそうしょっちゅうは帰って来れないな」「そうだな、でもそのうちケルンの歌劇場にでも戻って来れるように頑張るよ」
「君がいなくなると寂しいな」「ここでいい勉強をしていいテノールになれよ」と言ってクワストフは僕の膝を揺らした。
「ああ、どうなるか分からないけど、とにかくやってみるよ」「元気でな」と言い手を差し出した。
僕も手を取り「君も元気で」と彼の顔を見た。
そして仕事を終え、ディーリングハウゼンの駅で別れた。
ケルンへの列車の中で僕はクワストフのこれからの幸せを祈った。  つづく





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最終更新日  2007.04.23 10:02:16
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