わんこでちゅ

23 ヤマダくん発進









「おっはようううっ、みかちゃん!」

「でへへへーーーっ、やまだせ~んせい、声でか!今日に限ってなに元気全開なんですかぁ?」

あれ、俺そんなに声がでかかったかな?いつもどうりに挨拶したつもだったが、、。

「あっ、みかちゃん、今度新しい先生いれようと思うんだ。俺一人じゃ色々手もまわらないし、みかちゃんにもずいぶん苦労かけてるしなぁ。」

「えっ、新しい先生ですかぁ?大丈夫かなぁ、先生に人がつかえるのかなぁ?」

おいーーーっ、俺の出鼻をくじくようなことを言うなよ。俺としては別の心配してんだぞ。まず先生といっても女の医師は却下だ。女同士ってのは、たとえ医師と受付と立場がちがっても、お互いのチェックが厳しい。ひとつの物事にいやだと思うと、なにもかもがすべていやになるらしく、それはもろに仕事に響く、、。たとえ表面上では我慢してうまく仕事をまわしていても、その確執はどちらかが職場をさらないかぎり、延々つづくのだ。それはアルバイトで色々なことをやってきていやというほど、そういうたぐいのことをみてきているからなぁ。身にしみている。これが男の医師だと、はなから別の思考回路をもつ異性ということで、なにかあっても多少はスタンスをおいて接するから、まだひどいことになりはしないからな。

「まぁ、俺もがんばるから、みかちゃんもよろしくたのむよ。」

そういうと、俺はいそいそと仕事の準備にとりかかる。意欲的に仕事をこなし、昼には暇がうんとできたので、昨日の本の続きを読む。日本では有名な裁判を小説にしたてたものだ、、。

わんこ裁判2

法廷はユリアン君の飼い主への証人尋問になっていた。犬察官がユリアンの飼い主に尋問する。

「証人は、カーク君がユリアン君にいいよるところを実際目撃していますね。」

「はい、ふっふ、ふっふゆうて、うちのユリアンの上に乗ろうと、前から後ろから飛びついてました。同じオスやし、ダックスとゴールデンでは体格もちがうのに、そりゃもう必死で、、。」

「同じオス、しかもひとまわり、いやふたまわり以上も違うわんこにたかるなんて、しかもカーク君はまもなく10歳です。そんな分別もないなんて、よほどの色情狂というほかありません。では次にカーク君の飼い主を証人として請求いたします。」

犬察官は、かなり鼻息荒く、かちほこったようにいうと、今度はカーク君の飼い主に尋問した。

「カーク君は普段からそんなにみさかいなくスケベですか?」

「はい、、。たとえハスキー犬でもなんでもヒート中の女の子をみたら、、、いや、いいにおい嗅いだら、もう気が狂ったようにこっちきてようと泣き叫んでいます。そういうときは家にかえってからも、熊のぬいぐるみとHしてます。」

「そんなにすけべで、その上男の子にまでいいよっているのでは、そのたまたま、とってしまったほうがいいのでは、、、」

犬察官がそういいかけると、弁護犬が間をわってはいるように大きな声をあげた。

「異議あり!!裁判長、いまのたまたま、去勢うんぬんについての発言は、本件と関係ありません。たしかに、今の現状では、愛玩犬にむやみやたらに仔犬を出産させるな、去勢して、繁殖はブリーダーにまかせとけばいいという風潮があります。が、ブリーダーの発祥の中世ヨーロッパでは、あれは大変な金持ちが趣味でお金と時間をかけてやっておりました。しかし残念ながら、今の日本の現状は、そうではありません。当然問題がおきるのは仕方ありません。それはみとめますが、だからといって、問題をおこした人とおこさないで犬を繁殖しようとする一般の愛犬家を同一にくくるのはどうでしょう。公園にしてもしかりです。糞をひろわない一部の問題を起こす飼い主のために、公園に犬を入れない。なにかまちがっていませんか?公共の福祉という建前でいっしょくたに対応するのはいかがなものか、、、」

弁護犬の反論が延々つづいたが、この緊迫感にすっかりカークの鼻は乾いて、かぴかぴになってしまっていた。そしてカークはなさけなく自分の股間をみつめると、くふぅ~ういっと鳴いて、そっと前足で股間を大事そうにおおいかくした。









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カーク王子2004/3/10死去
背景画像はちゃにさんちの薔薇、ちゃにさん撮影加工

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