わんこでちゅ

24 ヤマダくん驚愕







俺は喫茶店で人と待ち合わせの間、コーヒーをすすりながらわんこ裁判の本を読んでいた。実は昨夜お代官様(大学の教授)から電話があったのだ。たのんでおいた新しい獣医師を紹介してくれるという。ただ少々なにか問題ありというか、裏があるらしい、、、。腕はたしか、性格もいいらしいが、どうもどこの病院もなが続きしていないらしい。いったいなぜなのか、、。俺はうまくつきあえるのか、不安だった。お代官様にたのんでしまった以上断るなんて死んでもできない。早くも俺の明るい未来計画は頓挫してしまうのか。後悔した。

わんこ裁判3

カークはこのままでいくと、禁固刑いや、へたをするとちんこ刑(強制的に去勢される)になるのではないかと、不安でたまらなくなり、救いをもとめるように弁護犬に顔をむけた。弁護犬は大丈夫ですよというような、自信に満ちたやさしい笑顔をカークにかえした。

「では弁護犬は、ここでユリアン君の飼い主の娘さんを証人として請求いたします。ユリアン君にカーク君がいいよったのは夕方のお散歩でしたが、なにかそれ以前ユリアン君にかわったことはありませんでしたか?」

「いいえ、別に、、、。朝のお散歩は私といきましたが、そのときも機嫌よく女の子のゴールデンとプロレスして遊んでいましたし、、。あっそういえば、その女の子発情中でした。」

弁護犬はうまく流れがこちらによってきたとばかりに、鼻からふっと息をはいた。

「ユリアン君は、オスですが、去勢はされていますか?」

「はい、大型犬で気が荒いと扱いづらいとおもって、手術しました。」

弁護犬は次にカークに向かって質問をはじめた。

「カーク君、あなたはユリアン君にどうしていいよろうと思いましたか?」

「それは、よくわからないんですが、メスの発情の臭いがして、、、あとはよく訳がわからないのですが、ともかくやらなきゃっていう気になりまして、、、」

弁護犬はしてやったりという表情を浮かべ、意気揚揚とつづけた。

「裁判長、ユリアン君は去勢されていて、オスらしき臭いはいたしません。その上朝発情中の女の子とプロレスをして、わずかながらでも、その臭いをからだにつけてきたと当然推測されますが、普段から鼻のいいカーク君です。結果ユリアン君を女の子と勘違いしてしまっても、無理からぬことと思えます。」

裁判長はうんうんと頷いた。こうなればこちらのものとばかり弁護犬はとうとうと話をつづけた。

「裁判長、弁護犬はここに新たな証拠を提出いたします。これはカーク君の歯です。飼い主が事件前日、部屋の中でみつけひろったものです。どうやら、同居の娘犬ルナさんと遊んでいた最中、事故により、折れたとおもわれます。間違いないですね。」

「はい、確かにそうです。カークの口の中をみたら前歯がありませんでした。ですが根元がへんにのこっていて、そのせいで、ここのところフードもかみにくそうにして、丸のみしてました。」

「そのような状況で、どうしてカーク君がユリアン君とひきはなされたはらいせに、家財の破壊ができるのでしょうか?カーク君の飼い主は、実際家財が破壊されたところを目撃されましたか?」

「いいえ、それは、、、」

「他に同居のわんこで、なにかかわったそぶりをみせるわんこはおりませんでしたか?」

「えーーーっと、、、カークの歯が折れたときだと思うのですが、いつもはルナに優しいカークが、猛烈におこりまして、ルナがぎゃんと泣くまでおしおきしてました。それ以降わがままし放題のルナがいじけてしまいまして、ものにやつあたりしてました。」

その後は完全に弁護側の有利だった。状況証拠のみしか手の内になかった犬察側には、当初の勢いはまったく消えうせていた。論告求刑、最終弁論でもその状況はかわらず、いよいよ判決が下った。

裁判長が判決を告げる。
「被告犬カーク君は無罪、、」

判決文が延々よみあげられていたが、すでに裁判所の表にはこの判決を受けてマスコミの中継車に向けて「逆転無罪」の紙をひろげて走る犬がいた。多くの犬がこの中継のニュース速報を複雑な心境で見ているに違いない、、、。カークは、このとき心底安堵して、涙を流したまま、しばらく被告犬席の椅子から動けないでいた。

あとがき  冤罪がはれ、去勢されるという刑の執行をまぬかれ、はれて大手を振って町を歩けるはずであったカークは、そのたった数日後残念ながら急病で亡くなった、、。


俺は読み終え、本を閉じると、ため息をひとつついた。冤罪がはれたというのに、すぐに死がまちうけていようとは、、なんてむなしい犬生なのだ、、。世の無常を感じる。

獣医師ヤマダくんは架空の人物ですが、わんこ裁判の話、及びカークがその数日後なくなった話は事実です。









13
花を嗅ぐチャニ


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