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e06.jpg




昨日の夕方、
「コロ、土に埋めるぞ」って
父が言って庭で穴を掘っていたけど



私はふとんをかぶってイヤホォンで
大音量で音楽聴いてた。行かなかった。



大好きだよ。でも、行かなかった・・・。




母が、コロの身体を庭に持って行く。

「まだ生きてるみたいやね」って。


触ると昨日より身体が硬くつめたくなっている。

でもまだふかふかの茶色の毛も、
鼻をコロに近づけると、
まだコロのにおいのする身体。
冷たい身体。



空っぽの犬小屋も、
お日様の下でひなたぼっこしていたシロツメクサの庭も、
私の部屋の窓のそとで私を待ってねそべっていた姿も、
散歩に行きたいと、道路のそばで寝ていた姿ももうない。
犬小屋のなかのワラのにおいをかいでも、もうコロのにおいはない。

お布団も、
雨にぬれるたびに身体を拭いていた、何枚ものタオルも布団も
ご飯のお皿も、散歩のつなも、首輪も、なにもかも もういらないもの。
たっぷり残った餌ももういらないもの。

コロがいたから必要だったもの。
もうコロはいないから・・・。


逝ってしまったんだよ。



でも、私にはやはり朝がやってくる。春が待っている。
そこに歩いていけ。一人で歩いていけ。


恐かったな。もう終わったぞ。恐いのはもう終わった。
こちら側にきたんだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふきのとう


ちょうど一年前の今頃の季節、初春のころ、
私は本当にひとりぼっちでした。

ずっと部屋にこもって、親ともうまくいってなくて、
部屋でふとんかぶって何日も寝てた。


ずっと寝ても居られなくて、窓の外から庭を眺めると、
コロが私のほうをむいて寝ている。


それをただぼんやり眺めて、
木や花が色が変わって姿を変えていくのをただ眺めて、
道路を走る車が通り過ぎるのをながめて、


ときには、その窓の障子さえしめきって、
コロがいるのも知っていたけど
窓を開けない日もあった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



寂しくて、ぬくもりがほしいときがあるだろう?

天気のいい日に外には出かけたくないけど、
庭にでてお日様にあたりたいときがあるだろう?

そんなとき、裏玄関から庭にでると、
コロがわたしのところにやってくるんだ。
綱がのびるぎりぎりのところまで。


窓を開けると、私の姿をみて、そばによってきて、
窓のそばで座って寝そべる。


こんな私のところにだよ・・・。

こんな私のところに・・・。




かわいいよな。

コロだけ、受け止めてくれるんだ。

わたしのところに来てくれるんだ。

いつでも。どんな私でも・・・。





身体をなでると、温かくて生きてるのを感じる。

生き物だもんな。

なんども何度もなでていると、心が落ち着いてくる。

一緒にいてくれるんだなって・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ume-c

(ちょうど一年前の初春のころ・・・)



朝、寝ていたら、
「コロ、死にそうだよ」と母が外から、
家の中に居る父に叫んでいる声がした。


「え?」耳をすますと、私の部屋からも聞こえる。
コロのなき声が変だ。

「もう寿命かな?」
父がそういって、コロを抱き寄せて、家の中に寝かせて
朝ご飯を食べていた。



「あぁ、わたしを置いてコロもいってしまうの?
 本当にほんとうにひとりぼっちになる。どうしてそんなことするの。
 どうして、こんなに寂しいのに、どうしてコロまでとっていくの!!」



布団の中で、涙でいっぱいで、でも、どうすることもできなかった。




私はそのころ、父と喧嘩していて、
父がご飯を食べ終わって二階の部屋に上がっていってから
コロのそばに行ってみた。

テーブルのそばの床の上に、新聞紙がひかれて、その上に寝かされていたコロ。
顔が苦しそうで、はあはあと吐く息もつらそうだった。


両親はもうあきらめていたけど、私はあきらめられなかった。

ふかふかのやわらかい私の毛布をひっぱりだしてきて、
新聞紙の上にひいて、その上にコロを寝かせた。

そして、心をこめて身体をなでた。



何度も何度もなでて、なでて。


 「大丈夫!」


 「大好き!大好き!」


 「生きて!生きて!」


 「生きて・・・生きて・・・」




そうしているうちに、コロは寒かったのかな?
暖かくなったからなのか?状態がだんだんよくなっていった。

そして、しだいに立ち上がるようにもなった。



その日から、私はもっとコロと一緒に居ようと思った。
こんなに心を支えてくれてたんだとわかったから。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コロを観察していると、なにより散歩が好きなので、
季節もちょうど春に向かっていて、
一緒に外に出て散歩するようになっていた。



朝は10時ぐらいに起きて、私はコーヒーを入れて、
コロにご飯をつくって

縁側にソファーをおいて、その下に毛布をひいて、
外の犬小屋からコロをだっこして毛布の上に置く。

縁側から南の庭が見えて、白のレースのカーテンが光と風にゆれて
春の暖かい陽気と、少し冷たい風と、コロのふかふかの茶色の毛と。

優しい時間と太陽の光。
コロのにおいがする。そばにいるから。



私の寝ている下の部屋は北の部屋だったから景色がかわった。

私のかたくなな心も少しずつとけていくのがわかる・・・。


あったかい・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



自分のためにもう何かをする気になれなかった。

でも、コロのためとか?
なにかの命のためになら、生き物のためになら
何かをしたいなと思った。


その行為が自分に返ってくるのを知っていく・・・・。


それが今生きている自分の理由になる。
そのために生きてもいいなと思った。
それくらい、自分には何もなかった。
今もない。





朝ごはんをたべて、お日様の下でごろごろして
14時ぐらいになると、そろそろ散歩にでかけよう。

平日の日中に近所や町をうろうろするのは
やはり抵抗があるので、深々と帽子をかぶる。

毎日いろんなルートで気まぐれに田舎道を歩く。
ころと一緒に。



一人だと絶対にしなかったこと。



14時からだんだん16時、17時と時間がくだっていくけど、
あまり人に会いたくなくて、人に自分を見られたくなくて

なんだか自意識過剰なんだけど、つかれるから
いつの間にか、散歩の時間が日の暮れた時間、
夕方から夜へと移っていった。


30分から1時間、2時間と散歩の時間が増えていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


色んなところに行ったよ。
昔、通った小学校まで歩いていったり、もう廃校になって取り壊して
新しい建物になってた。でも、グラウンドもさくらの木々も銀杏の木も
湧き水もそのまま残ってる。ブランコも。

学校の近くのお寺さんも25年ぶりぐらいかな?
行ってみた。
お地蔵さんがたくさんあって、ニコニコわらっている。



あのとき見えなかったものが見えた。
そして、あのとき感じていたものが、もう感じられなくなっていた。


時がながれた。
今も流れている。刻々と・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

青空6


毎日変わる、空の表情、時間帯によって、天気によって。

高速道路が見えるの。
車やトラックが遠くからこの町を横切っていく。
仕事かもしれないけど、時が止まっている私には、
その彼らが今を生きているのがわかって
ただ無心に眺めていることがよくあった。

たんぽぽが咲いている田んぼの土手に座って、
横にはコロがいて、走り去る車たちをながめたり、
夕暮れのピンク色やオレンジ色に染まる
西の空の表情に心がもっていかれたり。

日が暮れて、
空にオリオン座や金星や土星の惑星の光を見つけたりして。
何時間も、ころと一緒に夜の闇の中でたたずんでいた。


あまりに遠くまで歩いたから、帰りはコロをだっこして、
2キロの道を歩いたり。

でも、楽しかった。忘れない。いっぱい一緒にいたこと。
色んなところに行ったあの頃。歩けるところまで・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


梅雨時、ぼけたのかな?犬小屋に入らないの。
雨にぬれるのに。入らない。
無理して身体を押し込んでも、小屋からでてくる。

ネットで検索しても、なぜだかわからない。

私の窓のそばで雨にぬれながら、身体を丸くして寝ている。
ときに、いっしょに飽きるまで、夜真っ暗の中、
かさをさして一緒に窓の外に居たこともあったね。
傘が大きなパラソルに代わってみたり。

でも、結局雨にぬれるんだよね。なんでかな?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夏になり、犬にとっては耐え難い暑さの季節になる。

そのころから、夜鳴きが始まる。
近くに団地があるから夜の2時、3時に犬がなくと
近所迷惑で、とても悩まされた時期。

このころ、父との関係も最悪で、
ただでさえ、顔も合わせたくないのに
コロのことで、また意見の食い違いで大喧嘩。


この夜鳴きの問題。

私が夜更かしをしているから、コロも明るくて眠れなくて
生活のリズムがくずれてるんだ。夜に散歩に連れて行くから
コロは夜にほえるんだ。
甘やかすから、コロはますますほえるんだ、など言われる。

「お前のやっていることが、
 結局はコロをかわいそうな結果にさせるんだ」と言われる。




深夜の2時、3時、4時に犬が鳴くと、みなさんどうします?
かわいい愛犬でも、「やめろっ!」って、「鳴くな」って
私はたたきました。しつけと言う名の虐待をしました。

たたきたくないんです。優しくしたいんです。
でも、近所迷惑でしょ。このまま鳴き続けたら、
コロは騒音で処分される?
もう、このときはもう、たたきました。
大好きだけど、居なかったらいいのにと思ったし、
ほんと、迷惑だった。

たたいた。たたいても治らない。でも、他に方法がなかった。
あとは、夜中、ただそばにいた。朝がくるまで。


夏のうだるような暑さが、日中にやってくる。
人間は家の中にいるから、扇風機やクーラーや
冷たい飲み物が飲めるからいいけど、犬は毛皮を着ているから
この暑さは耐えがたいものです。

水をじょうろでかけたり、庭に水をまいたり、
冷たい牛乳をあげたりして、涼をとっていたけど、

こんな夜鳴きをする日は、「罰だ!」って思って
窓をしめて、コロを無視した。


うだるような暑さ、私は扇風機を顔に当てて眠る。
夕方、窓を少しあけると、毛皮をきたコロの姿がみえる。
暑さに耐えているのが見える。
舌をハアハアさせているのも分かる。


私は、このとき、彼を無視した。助けなかった。
忘れられない、自分のしたこと。







           →(2につづく)









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Last updated  March 21, 2015 05:20:10 PM
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