「なんか やる気なさげな男ってあたし好きかも。」
「あ？」
「かっこいいよね、なんか。」
「あそ」
新井 巴、17歳高2。俺の彼女らしい。
けだるげに窓の外を見れば微妙な赤に染まりかけている。
「夕焼け」というものを綺麗だと思う人間がわからない。
青と赤の混ざった「ムラサキ」という色がところどころに浮かぶ空。
さんしょくがどうじにまじわりあうようす。
そもそも「赤」という色は不吉じゃないのか？
好きな色は何かときかれて赤と答える人間を怪訝気に見つめたことはないのだろうか。
それよりも何故青からわざわざ赤に変わって黒に変化するのか。
明らかに青から普通に黒に変わっていくほうが簡潔でわかりやすい。
光の微妙な反射具合を述べて欲しいわけでもない。
そらはどうしてあおいのですか。
．．．馬鹿言え、赤にも紺にも黒にもなるし、俺は黄色っぽいキショクノワルイ空だって見たことがある。
見ず知らずの変なガキにそう答えてやったとき、28になる売れ残りの姉に浪漫が無いと殴られた。
でも、
そういう男に惹かれる女も此処にいる。
どちらが正しいかなんて考え始めたら脳細胞が増えすぎて困りそうだし
もとからカシコイ俺にはそんな脳細胞不必要だからヤメヨウとも思うが
言ってる傍から考えてる俺は実は阿呆なのだろうか。
けど阿呆ならまだ望みはある。馬鹿よりはましだ。
馬鹿は死んでも治らない。
「・・・また変なこと考えてるでしょ。 あんたは阿呆じゃなくて馬鹿の域だね、」
もう、既に。
半ば呆れ気味に言う彼女は正直綺麗に見えた。
あぁ、そうか。
夕焼けが綺麗だと言った最初の人物は、
夕焼けを背負った恋人でも見たのかもしれない。
「ちょっと。まぁたトリップしてるよ？」
「あ？」
「・・・いいけどね、好きだから。」
あ―――エッチしてぇ。
素直にそう零したら、姉の如く殴られた。
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