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2009年08月22日
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「 人間の安全保障 」は以前に読んで、非常に面白い観点だと言う事で、さすがはアジア人初のノーベル経済学賞受賞者だと思い、前回読んだ「 福祉と正義 」という本は、あまりにも扱っているもののテクニカルタームというか、知っている事を前提に扱われているものを知らなかったりとで、結局よくわからないという残念な結果におわりました。

そこで、果たして今回手に取ったものは私の理解力の範疇に入るのかどうかという不安と、とりあえず、「人間の安全保障」は大丈夫であり、前に読んでから時間が経っていても、内容的に被る部分もあるだろうし、なんとかなるだろうと言う気持と両方ありましたが、今回は理解の範疇に入っており、ホッとしているところ。

本著は日本で行われた講演3つと、論文の翻訳になります。

第1章 グローバリゼーション 過去と現在
第2章 不平等の地球規模拡大と人間の安全保障
第3章 文明は衝突するのか
第4章 東洋と西洋 論理のたどり着くところ



こういった内容になっています。

1章と2章では、巷間伝わっているグローバリゼーションのイメージの過ちを指摘し、グローバリゼーションそのものの問題とは別の問題でグローバリゼーションの評価が行われていると明確にします。

そもそも、グローバリゼーションとはここ最近の概念でもなければ、一方的な西洋文化の地球的流布を示すものではなく、歴史的にすでに行われてきたものであり、西洋文明が優れている証明のためのものでもなんでもないと言うところから始まります。

近代以降、西洋文明が発達し、地球規模で広がりを見せその恩恵があると言う事は、評価に値するが、そもそも西洋文明も独立して西洋だけで発達したものではなく1000年前には逆に東洋の当時のハイテク技術や概念が輸入され、その恩恵を受け発展してきたものであると。

作者の国でもあるインドの数学の概念が現在の数学に与えた影響なんていうのは、有名な話ですしね。

そういった、歴史的な交流が技術を発展させてきたという事を無視するわけにはいかず、グローバリーゼーションそのものを否定する事は無意味どころか有害である。

しかし、現在のグローバリゼーションの問題は本来あるべき姿ではないのは、恩恵を受けるのが一部の人間という不平等感に根ざしているものであり、是正するのは不平等を取り払うと言う事であると。

日本を例にすると、過去の日本は輸入文化を受け入れる事により、進んだ文化を取り入れ、そこからさらに独自進化させることで日本文化そのものを発展させる事に成功していたが、鎖国により発展が停止してしまい、黒船来襲で慌てふためく結果を招いたという事で、鎖国の弊害を説明していますね。


また文明の衝突に関しては、完全に真っ向否定となります。

「文明の衝突」は、サミュエル・ハンチントンの著書で有名であり、私も以前読みましたが、1つの考え方としてあるのかなと納得した覚えがあります。

要は、ざっくりと宗教ベースでキリスト教文明圏、イスラム教文明圏というような形でブロック化され、それぞれが敵対関係のようになる可能性を説いたものですね。



90年代後半という時期的にも、ポスト冷戦構造を探っている時期でしたし、宗教や民族をベースとした紛争が勃発しきな臭い雰囲気を醸し出していましたので、絶対的に正しいかどうかは別として、一定以上の説得力を感じたのが感想としてありました。

しかし、センはこれは西洋的な考え方として、自分達の優越を示すものとして扱い過ぎているという事と、争いを煽っているという事と、そもそも文明ごとにざっくりとまとめる事そのものがおかしいと、ことごとく否定しています。

現実は確かに異文明とくくった相手との紛争よりも、近所の地域的な対立による紛争の方がはるかに多いわけですし、それすらも無理矢理カテゴライズする事により争いを煽っているとの批判を出しています。

非寛容のなせる業であると。

また、西洋と東洋の比較に対し、西洋の寛容さと比べ東洋の非寛容さをあげる西洋側の言い分が巷間流布されているが、それは単なる歴史を学ばない西洋の傲慢な啓蒙思想に他ならないとしていますね。



本著は、それぞれ現在の問題点を指摘する事をメインとしているために、だからこそ絶対にこうしなければいけないというような具体的な指摘はされていません(富める者がますます富み、貧しいものはますます貧しくなるようなシステムを破壊しなければいけないという指摘はありますが)

まずは、問題点を提起する事によって、あとはおのおので考えるようにという狙いなのかどうかは、わかりませんが、そのように受け取れる作りになっています。

極論の持つ力強さはありませんが、逆に力強いだけの極論を解体する別の強さは感じ取れます。

人間の安全保障という概念は、もっと多くの人に知られるべき概念であり、センによって一度は影の薄くなった厚生経済学という存在が復活したという事を考えますと、やはり現代はもう一度安全に生きるための平等性と言う事を考えるべき時期なのではないかと思えますね。

グロ-バリゼ-ションと人間の安全保障





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最終更新日  2009年08月22日 18時36分36秒コメント(0) | コメントを書く
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