ちゃいにーずティー

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結婚祈願の石



初めてのセイとの旅行は、ブライトンというイギリス南部にある観光地だった。そこ、ブライトンはセイが苦悩のイギリス生活をスタートした場所でもある。19歳のセイが誰も知り合いのいない土地で、中華レストランのアルバイトを求めて歩き回り、そして、ウエイターとして働き始めた場所。ひどくこき使われたあげく、休みの日には手袋もなしで草むしりまでさせられ、悔し涙を流したこともある、というお墨付きの場所である。

う…なんだか、私まで感無量になってしまう。

ブライトンは、主に海岸とビーチからなる観光地だが、私たちが旅行した時期は、もうすでに寒く、あまり人もいなかった。
さて、海岸線に沿ってずっと歩いていくと、波打ち際に大きな石を発見。人がゆうに3人は乗れるくらいの大きさだ。

と、いきなりセイがそこの石に乗って、叫びだした。

「海!空!風! そして、そこで僕たちを見下ろしている神々! その前で僕は誓う! 将来をレイと一緒に歩いて行く。 そして、結婚して、また、ここへ帰ってくる!」

あっけにとられている私に向かって、セイは言った。

「はい、次、レイの番」

私は、まだ、開いた口がふさがらない。
私らまだ付き合い始めて、2,3週間だよ。結婚なんて、考えてませ~ん。
そんな私の背中を無理やり押して、石の上に立たせる。

「ちょ、ちょっと、セイ。なんか、無理があるよ。私結婚なんて…」

「まあまあ、いいじゃない。僕に続いて言ってよ」と上目遣いにお願いしてくる。

しょうがないので、セイの後に続く。

「うみ~。そら~。かぜ。 神様~。 セイと一緒になることを誓いま~す。そして、ここへ帰ってきます。ハイ、おしまい」

「気合入ってないな~」とセイは不満気。

私は、は~、終った、終った、とばかりにそのまま石から降り、また歩き出した。

ところがこの石、どうやら効能があるらしい。その後、1年も経たないうちに私たちは結婚を決めた。そして、その効能を聞いた私の友人が、その石の上で結婚できるようにお願いしたところ、彼女は2ヶ月程で結婚が決まった。また、セイの友人も石の上で結婚を願ったところ、5ヶ月で結婚に至った。
ふ~む、どうやら結婚祈願の石ならしい。

ところがこの石、季節によっては潮の満ち干きで海の中に隠れてしまう。私たちはまだ、9月にしか見つけたことがないのだ。
ふ~む。なんとも、魅惑的な石だこと。

ただ、困ったことに、友達にこれを話すと、皆ブライトンに行きたがる。私はもう、10回は行っただろうか。ちなみに、その半分は石を発見できなかった。

ブライトンにもそろそろ飽きてきた今日この頃である。




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