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2009.04.03
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カテゴリ: BL小説

『セントエルモスファイア』花郎藤子

セントエルモスファイアの意味を、私は青春時代に見た同名の映画で知った。いわゆるブラットパックと呼ばれたハリウッドの青春スターがたくさん出ている青春群像映画だった。あの中ではジャド・ネルソンが好きだったが、主役クラスで生き残ったのはデミ・ムーアだけだったな。そういや高井戸あけみさんに「ブレックファストクラブ」という作品があるけど、これも同時期のブラッドパック映画で、これまた大好きだった。役者が数人かぶってたな。

さてBLにも聖エルモの灯火の寓話をなぞった同名の作品があることは、たまに行く古書店の棚を眺めているときに知った。作者さんが、映画なのか元の寓話なのか、どっちを先に知っていたかが気になる。

花郎さんは20年くらい前にはすでに同人作家さんとして活躍していた人だよね。名前だけは昔から知っていたけど、読むのは初めてかもしれない。なぜか私の中では山藍さんとセットになっている(笑)。ペンネームからして耽美だけど、花郎というのは歴史上のファラン(美男の集団)のことだよね。中国だったか朝鮮半島だったか忘れた。「郎」を「いらつ」と読むのは万葉集の坂上郎女で知った。石川麻呂の娘かなんかで大伴家持の愛人だったプレイガール。

あああなんだかさっぱり本編に近づかないぞ。とにかくこのちょっと昔のJUNEテイストの小説が復刊されるというので、発売と同時に手に入れていたんだけど、2、3ページ読んで止まったままで、しかも何度か続きを読もうとして、また最初から読み始める、というのを繰り返してしまい、なかなか進まなかった。
つまり冒頭の独特の世界観になかなか入っていけなかった。主人公の一人語りで延々心中した両親や屋敷の由来を語られてもなあ…でも本当はこういうの、好みなはずなんだけど、あまりにきっちり舞台設定を作り込みすぎていて、なんだか主役が人なんだか屋敷なんだか花なんだかわからなくなる。

表紙が円陣さんだと知って、ものすごく驚いたんだが。これは初版時と同じなんだよね? だって今の円陣さんの絵柄と全然違う~!こんな時代もあったんだー。ちょっと間違うと石原理になっちゃいそうだ。スラダンの二次描いていそうな絵柄だけど、この頃はまだトルーパーの同人作家さんだったかな。Gペン独特の弾力のあるしなやかな線は当時から存在していたけど、顔と体のバランスとか目とか、全然違うよね。今のほうが絶対好みだ。あ、でもトーン処理はこの当時から抜群にうまい。まだ新人さんだったころの円陣さんの仕事はほとんど知らないので、いろいろと衝撃だった。

さて。これはやっぱりBLじゃないんだろうな。だって二人の絡みのシーンを飛ばして読んでも一向に差支えがない気がする。舞台が幻想的なことを除けば、私は真っ先にスティーヴン・キングの「ミザリー」を思い出したぞ。なんだかとってもミステリーで、脳みそのほとんどをその謎解きに費やしてしまったじゃないか。結局謎はなんにも解明されなくて、ラブも中途半端で、なにやら攻は理由なく受をいつでもどこでも自由にしようとするし。

文章が独特で、「えっ、なんか読み飛ばしたっけ?」と何度も思う瞬間があった。なにかが省略されている。場面転換時の時間経過の説明とか、些細なことなんだけど、流れが寸断される感じに違和感を覚えた。これが花郎さんの文体なら、好みじゃないかもしれないなあ。あと自分の悪い癖で、一旦違和感覚えるとそればかりが気になってストーリーに没頭できない。歴史ある(明治期から建っているような)古い石造りの建造物がいかに日本の風土にミスマッチか。湿度調整できないと、家の中がカビだらけになるんだよ。人手もいなさそうなのに、こまめに風を通しているのかな。

ああああだめだ。お話の劇的な部分が正当防衛の傷害致死と死体遺棄だと、そっちの解決にとらわれてなんだかBLであることを忘れる。しかもすっきりした解決じゃないので疑問も残る。だって二人のラブの部分の心境があまり感じられないんだよね。体はつながっていて、心もそうかもしれないと思っているけど、世間体のためにはちゃんと婚約者と結婚する、というのが、まだこの当時のBL(JUNE)の常識だったのかな。


二人のことがあんまり丁寧に描かれなくて、どちらかというと祖母とか妹とか、印象薄い受の婚約者が、ただでさえもどうでもいいポジションなのに、最初にチラッと出てきただけで、中盤は不在で、最後に祖母が入院したら突然再登場して、最初「こいつ誰? こんな人出てきたっけ?」と頭をひねってしまったよ。
いろいろ整理されないまま書き上げられた小説という感じがする。舞台設定は好みなんだけどね、本当に。なにしろ古い家柄、広大な庭、石造りの洋館、厳格な祖母、両親の入水心中、愛人の子(主人公)、半分しか血のつながらない妹、巨額の借財、もつれた四角関係……とネタとしてはすべて面白い。それをいっぺんに使った勇気には敬意を表する。でもなにかが足りない。

警察がかかわっていながらああいう結論なのに、ミステリ要素ばかりが記憶に残るし、でもミステリにしては細部があまり書かれてなくて死体遺棄のトリックは語られないし、被害者の兄の「ただ死体を確かめたいだけ」っていう管轄外の行動の真の理由が不明だ。釈然としない。読み込み不足なのはこちらに非があるけど、もうすこし全体すっきりとさせて、ラブなのかミステリなのかホームドラマ(のなかに芽生えるホモ)なのかをはっきりさせてほしかった。





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Last updated  2009.04.03 07:44:25
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さすが……  
nora さん
思穂里さんのレヴュのほうが面白い……のでオススメして良かったです(すみませ~ん)。好きだけど体温が上がらない作品だな~ともやもやしていた部分が、圧倒的な説得力ですっきりクリアに。爽快です~(…すみません)。

この作品もですが、BLから私が得ている萌えは設定だけだな、とレヴュ拝読して確信しました。脳内で補完して長編小説に書き換えて楽しみたい、だからその余地が残されたものを選んでしまう。その意味では未完の多いBLはニーズに合っているのかも。

ところで思穂里さん、いつか何か、BLでもそうじゃなくてもいいので、創作いただきたいです(熱望。その時にはファンサイト運営をかってでます(笑)! (2009.04.03 11:58:11)

Re:さすが……(04/03)  
noraさん


設定に萌えるというのは私も同様で、今更ラブとか言われてもねえというぐらいには心がすさんでいるので(笑)、ラブを阻む要素が鬼畜なほど萌えます。基本Sですので(笑)。

「創作はしないんですか」とよく言われるのですが、ずっとノンフィクションの仕事をしてきたので、事実に脚色はできるけど、最初からウソの話は書けない性分です。でも脳内では続きを勝手に妄想してますよ~。 (2009.04.03 20:36:58)

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