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2009年10月21日
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【今日の映画本】



 ――立派に舞台をお務めになりましたけど、今朝病院からこちらに直行されたのですか。

 いえ、劇場に直行して、お客様は(座長の)川中美幸のこのお芝居を明治座に観にいらした。僕のプライバシーは全く関係ありませんからね。だから当然、僕が務めなければならないし、あそこでその10時56分、11時開演ですからね。開演の4分前ですから、もう自分の精神を作るのに夢中になっていて、あの瞬間は洋子のことは全然考えませんでした。

 ――亡くなられたと聞いたのはいつだったんですか?

 午前中の1回公演が終わりまして、その後、さりげなく風のように僕の耳に入ってきましたね。あーっ、逝ったのか。今日もあることは、年齢が年齢ですから予測はしていたと昨日も申し上げたのですが、やっぱりそれが本当だと思うと、このわびしさ、この悲しさ。今、だから僕を支えてくれているのは、この舞台です。川中美幸さんを始めとする劇団の仲間です。明治座のスタッフの方々、それとお客様です。頑張ります。

 ――昨日お会いになられた様子はいかがだったのですか。

 僕はいつ死んでもいいように百万遍さよならを言ってきました。今日でも明日でも全然それは関係なかったと思います。もういっぱいいっぱい洋子にお別れを告げました。だから、だから、もう後悔してないし、昨日も申し上げましたけど、この4年間、僕が洋子を介護することによって、僕の人生をもう一度よみがえらせてくれた。僕の人生観を変えてくれた。そして、本当にいとおしい、僕を信じる、俺を待ってくれるただ一人の女性として、居ましたから。その4年間は本当に楽しかったんで、これがたった5日前のことだったとは、ちょっと思えないし、信じられないのが事実ですが。これから洋子のいない世界に僕は踏み出していきます。

 ――通夜と告別式はこの公演が終わってから、これは長門さんの思いと……。

 僕がそばにいないと何もできないでしょ。それはあの、皆さんのご都合もあるのですけど、洋子だってきょう僕が別れた後、お坊さんに来ていただいて、それで、お経を済ませた後、洋子をちょっとごめんね、忙しいから待っててね、と6日か7日待たせることになるわけです。そのために、(遺体を)氷漬けにしなければいけない。洋子は寒いのが大嫌いだから、だから本当にかわいそうだと思うのだけれど。でも僕がやってやらないと、僕が顔を見せない告別式なんてあり得ないと思うので、公演が終わったら、お別れします。

 ――ご自宅ですか?

 だから自宅にいるのはきょう、明日ぐらいで、あとは誰も居ない冷たい霊安室の中で保管してもらいます。あえて保管と言いますけど、もう無機質なものだと僕は思っていますから、僕は今洋子に手を合わせるのは、思い出の中だけなんです。僕の素晴らしい思い出の中で、(泣いて鼻すする)洋子は生きていますから。これは永遠のものですから。でも僕は今、仕事を持っていますから、ここで自分の体調を崩したり、自分の神経をそういう気持ちの中で皆さんに迷惑を掛けることは絶対にできないので。

 その後もたった1日なんですよ、僕のスケジュールが空いているのは、だから、千秋楽終わって、次の日に告別式をやらせていただきます。こういう形で30日にやってもらうことにしたんですが。劇団の皆さんに迷惑をかけることは絶対できないから。まあでも、たった1日なんですよ。

 ――結婚生活で一番思い出されることは?

 それはもう、いや、二つあるんですが、一つは、洋子が病気になって、僕は洋子のために家を建て替えて。バリアフリーにして、洋子が居やすいようにして、洋子を家の中に入れたんですが、行動範囲がベッドルームと、洗面所とトイレと食堂、それだけの行動範囲ですから。夜の夜中に僕の所に来るんです。ノックするんだよね。何時かと思ったら、明け方の4時なんで。「洋子もういい加減にしてくれよ」って言ったら、その扉の向こうから「でも、洋子、もう行くとこないんだよ」って一言言いましたね。これがねえ、そうなんだ。洋子にはもう俺と二人の世界しかないんだって思ったら、その言葉がもう生涯の中で離れません。

 それから洋子は、認知症の症状の一つでもあるんですけども、お風呂を嫌ってましたね。僕らがいくらお風呂を勧めても、嫌だって言って。だけど、「明治座に来る?」って言ったら、「行く」って言って。「それじゃあきれいにしなきゃだめだよ」って。「今度お天気になったら」。あの人、雨が嫌いですから。雷を伴う雨。僕がもうしょうがない、その日は絶対もう嫌だと言いますから。しょうがないからその折を使って、僕はひげをそって、ほら見ろ、こんなに洋子にチューしても痛くないだろって。うん、わかったって。そういう風に言って。今度お天気になったらお風呂入ろうね。布団を口まで引き揚げながらね、「洋子はあなたみたいにきれいになれないの」。これ意味がわかんないけど、自分の病状みたいなものをどっかで意識してたんじゃないかって、その時始めてわかりましたね。

 ――どんな言葉が聞こえてきそうですか。

 さよならは、なかったんですよね。17日にぶっ倒れた時も、俺の顔ちらっと見ただけで。「ただいまぁ」って言ったら、俺の顔ちらっと見ただけで、あとはもう(病院に)入ってましたから。で、そのときに、洋子は右手があまり動かないんですね。だから右手を使うことは避けるんですけど。僕の2本の指を思いっきり強く握って、「洋子、握力あるぞ」って、こっちは甘いですからね。そしたら、痛くなってきて、「洋子、痛い、痛い、痛い、痛い。離して」って言ったら、マネジャーが「長門さんの指が真っ白になっちゃってるから」って言ってくれて。それを僕は無理やり離したんだ。今から思えば、あれが最後の意思表示だったのかなぁって思います。

 ――これから帰ったら、洋子さんに何と声をかけますか。_

 もうずーっと待ってるから。もうずーーっと待ってる。僕も待ってる人ですから。ごめんね。遅くなってごめんねって謝ります。もう普通です。

 ――最後のキスは?

 昨日しましたから。皆さん誰でもそうだと思うけど、死に対する拒否反応はすごく多いんで、あまり死んだ洋子は好きじゃない。

 ――昨日が最後のキスだったんですね。

 そう。昨日は温かかったし。思い切り何か所も何か所も名前を呼びながら。あいつが痛がらなかったですからね。だからもうひげ面でもなんでもこすりつけて。もう何遍も何遍も。いつ死んでもいいように準備を僕はしてましたから。

 ――じゃ、今指の痛さが一番……。

 そう。これは思い出になりますね。
。。。 いつも、UQのブログをご覧頂きありがとうございます。 rank







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最終更新日  2009年10月22日 05時00分44秒
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