1

宮部みゆきの「不文律」という短篇を読んだ。文庫本にして約18ページという長さであるが、これがすごい。短篇ならではのインパクトだ。埠頭から一家4人が車ごと転落するという無理心中を疑われる事件が起きる。この小説は、この事件についての家族の親類、同僚、子どもの級友、警察関係者などのコメントだけで構成されている。最初はごく普通のコメントが並ぶが、それが重なっていくうちに思いがけない展開が!サスペンスが高まりながら、意外な真相が明らかになる。こういう短篇を読んだときの驚きは何ものにもまさる。
2006年02月26日
閲覧総数 945
2

10月20日の日記で「大奥」は失敗作だと書いたが、よくよく考えてみるとそうではないかもしれない。そもそも失敗というのは、ある目標やねらいが実現できなかったことであり、この映画「大奥」は多数の話題のコミックを原作にして人気・有名タレントを並べて江戸城大奥の豪華絢爛、知られざる世界を描く、それもあくまで絵として見せることが出来れば、それでいいというねらいなら、この映画は失敗作などではない。プロデューサーは多数の人気タレントを調達できて撮影スケジュールと調整できればいいのであり、監督は画面の上で彼らの交通整理が出来れば、それで十分なのである。一応のヒットをしているようで、観客としてもそれで十分であったということだ。
2010年11月03日
閲覧総数 6
3

「マジック・アワー」とは、太陽が地平線に沈んで、完全に暗くなるまでの約20分間程の時間の中で、夜とも昼ともいえないひととき。このとき、空間には不思議な光が満ち、最も美しく独特の美しい映像が撮れることから、魔法の時間、つまりマジック・アワーと呼ばれている。さて、現実の世界を見てみよう。「昼間」と「夜」の間を「戦争」と「平和」に置き換えてみよう。「平和」でありながら、「戦争」の匂いや要素に満ち、「戦争」でありながら、そこに「平和」の一瞬を見ることが出来る。現実の世界は、常に「戦争と平和」の「マジック・アワー」であると思う。「平和」であるときに、「戦争」の要素を感じ取ったとおきに、完全な「戦争の時代」になってしまわいように、それを感じた人が何をするかが大事だと思う。
2008年08月20日
閲覧総数 61
4

この映画は2日から東京などでも公開中であるが、お客の入りも良さそうで、うれしい限りだ。映画「いつか読書する日」の撮影協力には「ながさき観光地映像化支援センター」という名前の団体がクレジットされている。これは長崎県のオフィシャルなフィルム・コミッションである。長崎県に数多ある観光地に映画のロケに来てくれるはずだという県の願いがこめられている。しかし、これは随分とひとりよがりの考えによるネーミングである。映画のロケは観光地(これは既に知られた観光地という意味)に来てくれるという勝手な思い込み。そして、映画業界からみて「観光地映像化支援センター」という名前が「フィルム・コミッション」であると理解してくれるはずだというこれまた勝手な思い込み。設立前に、映画製作側のニーズはどういう点にあるのかについて知っておくべきと考え、全国各地へのロケ経験が豊富な有名な撮影監督においでいただき、実際に市内を歩き回ったのであるが、その時にその方は「我々は観光地を撮りに来るのではない。作品のイメージにぴったりで作品やテーマの肉付けができる風景を求めている」と言われたのである。市内を歩きながら、その方が特に良かったと言われたのは「小さな路地」、「町の日常風景」などである。それらは観光案内に掲載されているような場所ではない。映画「いつか読書する日」は、ほぼ全編を長崎市内でロケを行っている。長崎ロケを決めるにあたり緒方監督は次にように言っておられる。「脚本の青木は、舞台を“何の変哲もない町”と想定していて、最初、長崎で撮るのには難色を示したんです。あまりにも歴史が染み付いている土地だから。でも、この文学性の強い脚本を僕は“肉体化”させたかったんです。具体的には“坂”ということですよね。坂を駆け上がる女性の肉体が、この話には必要だと思ったんです。それで、長崎で撮るけれども、架空の町という設定にして、海も映さないことに決めました」(この部分は「映画芸術」(411号)に詳しく掲載されている)結果は成功である。すぐれた作品になっており、長崎の町の特性が見事に作品を生かしている。物語の舞台は「長崎市」ではない。有名な観光地は一切登場しない。海も写されない。原爆のことも出てこない。異国情緒もない。それでもこの映画は、長崎市ロケでなければできなかったことを思わせる。そして、長崎市に住む者に長崎再発見をさせてくれる。このことを「ながさき観光地映像化支援センター」の運営に関わる人々はよく考えて欲しい。(まさか、「グラバー邸も天主堂も出てこないような映画を撮って何やってんだ、あの監督は」などということは言っていないだろうな!)
2005年07月08日
閲覧総数 6239
![]()
![]()
![]()