日本では新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法であるPCR検査を巡って不毛な論争が起きています。 そこで免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授にテレビ電話でお話を伺いました。
――日本国内の感染状況を把握するため PCR検査をもっと拡大しろと声高に主張する人がいます
「インフルエンザには迅速診断キットがある。ウイルスを増幅する必要もなく5分か10分で答えが出る。一方、 PCR検査は何時間もかかり、その割に偽陽性も偽陰性も出る 」
「なぜ手間がかかるかというと、コロナウイルスの場合は喉(のど)のぬぐい液、痰(たん)からRNA(リボ核酸)を抽出しなければならない。日本ではこれをロボットでできるところは少ない」
「ぬぐい液や痰から抽出したRNAを増幅して何度も何度もサイクルを回した上で陽性シグナルを探す。陽性シグナルがあってもそれがウイルスの遺伝子かどうかは塩基配列まで見ないと最終確認までつかない。そしてこの手技にはある程度の熟練が必要」
「それに、感染材料が入ってくるので 部屋も機器も全部コロナウイルス専用にしか使えなくなる。 また、やろうと思っても人材の問題がある。感染材料が入ってくるわけだから感染に関する手技を十分に出来る人が必要。でも実際はそれは少ない」
「別のコロナウイルスの感染が原因のSARS(重症急性呼吸器症候群)や中東呼吸器症候群(MERS)の時にも散々、問題になったが、 PCR検査の感度が不十分。陰性だと思ったら実は陽性だった、陽性だと思ったら陰性だったということがかなりあった 」
「陽性と出ればほぼ陽性という確率が高いが、陰性と出た時には本当に陽性ではないという証明にはならないという大きな問題がある。それはなぜかというと喉や痰の中にウイルスが見つからないが、他の体のどこかに隠れている場合が常にあるからだ」
「PCR検査は手間がかかる、お金がかかる。さらに検査を受けるとしたら開業医や病院で受けなければならない。そこに感染者が集まったら、クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』で起こったようなことが今度は開業医や病院の待合室で起きる」
「開業医のところに患者がPCR検査をしてほしいと来たらどうなるのか。クリニック全体が汚染される可能性がある。 日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」
「日本でPCR検査が開業医や病院でできるとなったらおじいちゃん、おばあちゃんはじめ一家でやってくることになりかねない。証明書をもらいにね。でもこの検査で証明書なんか出せるわけがない。 不確定性が高い検査 なんだから、その時に陰性でもウイルス陰性にはならない」
「PCR検査は誰もができるわけではない。トレーニングをしないといけない。偽陰性や偽陽性を出したら社会的な影響が出る。品質保証ができる場所でないとこの検査はできない。都道府県の衛生研究所に頼んだら技術的な問題だけでなく、感染の恐れがあるので誰でも引き受けてくれるというわけではないだろう」
「間違ったらいけないし、感染するかもしれない。日本政府はなぜ3800件しかできないかをもっと分かりやすく説明したら良いのではないかと思うが、厚労省も言えないことがあると思う。一方、それが日本の感染者数を少なく見せるための謀略であるということを言う人がいるようだが、そんなわけがない。現状ではもろもろのことが飽和状態というのが悲しい現実だ」
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