クックの部屋

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病気との戦い PART4




スタジオに入り早速音合わせをしてみたが何かが違う。テンポがちがうのだ。
そのころ毎朝6時前に起きて、オーティス・レディングのモンタレーライブのビデオを見ながら家で歌っていたのだが、この時のオーティスの曲は全体的にテンポが速い。他はスタジオ版の方で練習してきていたのだった。
せっかくダビングして渡し、このバージョンでいくからといっていたのに「だって早いんだもん」と言われた。
ぜんぜん歌えないし、頭の中で完璧と思っていた歌詞も覚えていない。
おかしいな、テンポが違うからだろう。わかった今度はスタジオ版で行こう。

2回目の練習の時もいっしょ。さすがにメンバーから非難の声が
「まともに歌えないのに出れるわけないじゃん」
「なんで難しいオーティスにしたの?」
「あと3回しか練習しないのにもう無理じゃないの」
しかし、いまさら止めるわけにも行かず大幅に曲を変更してもらいなんとか練習した。
その頃は仕事も順調で忙しく、会合や接待などもあり帰宅は2、3時で睡眠時間は3,4時間ほど。マスターには100人客をいれてみせると宣言していたし、今から思うと恐ろしい。
結局ライブは終わった。いろいろな人に助けられて。

100人入るはずもなく、一発合格と思っていたがダメだった。
4,5,6月で使ったお金は100万以上、家族からはおかしくなったと思われていた。
後で聞いたのだが、食事にクスリをまぜて飲まされていたらしい。
鎖がとき離れたような感覚、足の裏からパワーが出で、行動と言動が過激。
死の淵から生還し、完璧に復活したと思っていたがそうではなかったのだ。

しばらくたって、反省会を兼ねた飲み会をやった。
ブルースギタリストはもういっしょにやりたくないと言い、船の上でライブをする計画もあったのだがいろいろあってダメになった。
その後も何度かそのライブハウスに行ったのだが、常にマスターは励ましてくれた。
「やっぱり、バンドは人前でやってナンボのもんやで、また出ろよ」
「最近のバンドはちょっとけなすとすぐに顔をみせんようになるがお前はしぶといな」
後で知ったのだが、手伝ってくれたドラマーにも「メンバーが集まるまで手伝ってやってくれ、あいつはやるよ」とたのんでいてくれたらしい。
普段はそんなことを言う人ではないので、かなり不思議がっていたが。
「お前の声は、ブルース向きではない、ネビィル・ブラザーズあたりがいいのではないか、真面目にやればここで№1ボーカリストになれるぞ、がんばれよ」と言ってくれた。

次のギタリスト探しを考えていたが、明らかにテンションが下がっていた。またあの黒い犬がやってきたのだ・・・

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