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2015.08.09
チップという強制
テーマ:
アメリカ生活のあれこれ・・・(2064)
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カテゴリ未分類
サービスを受けたらチップを払う西欧社会の慣習、これにはどうも心理的に馴染めません。どういうタイプのサービスに対して出すものなんだろう、サービスが悪い時にも渡さなきゃいけないんだろうか、人並み以上に渡すのもアホらしい、かといってケチとみられるのも嫌だな、等々余計なことあれこれ考えて、せっかくの食事も後味が悪くなったり、タクシー(チップを払うのが普通です)に乗るのを避けて遠い道のりを歩いたり、することもあります。
サービスの価格の一定の割合がチップの額で、地方差もあるでしょうが、僕の住んでいる地域では通常15%くらいでしょう。昔はランチの時は10%くらいと聞いたこともあるのですが。割合を計算する元の額は消費税前か後かという問題もあります。僕の知ってる限りでは、税前の値段に15%をかけるというのが普通です。空港やホテルで荷物を運んでもらった場合にポーターにもチップを渡します。なんでも荷物ひとつに1ドル、重い荷物は2ドルとか言われています。その他いろいろな業種でそれぞれチップの額の目安があるようで、あちこちのウエッブサイトに掲載されています。
ある
ウェッブサイト
に拠りますと、17世紀のイギリスで、酒場の客が自分の飲み物を早く持ってきてもらえるようにウェイターに少額のお金を握らせ、”To Insure Promptitude”の大文字部分をとってTIPと呼んだとか、ちょっと眉唾物ですね。サービス前に渡すこの種のものは、日本でもありましたし、ありますね、袖の下とか花代とか。
欧州起源の習慣がアメリカに輸入されたのですが、1890年代にはチップ反対運動というのも存在したようです。反対運動の主張は、階級社会の排除を理想としたアメリカが新たな上流階級を作り出しこのような悪習を輸入するのはおかしい、とか。1915年にはいくつかの州でチップ禁止法が提案されましたが可決には至りませんでした(上記のウエッブサイトから)。既成秩序に反抗する若いアメリカでしたが、いまでは貧富の差が広がり続け、平均的に他業種より賃金の低いサービス産業労働者に対するチップはすっかり固定化しています。
それどころか、タクシー運転手に対するチップ率はこのところ上昇していて、以前は通常10-18%だったものが、最近では20%を超えてるとのことです。その原因がなんと技術革新だというのだから面白いですね。最近タクシーに乗ったことがなかったので知らなかったのですが、今の車両には後部座席にTVモニター付きの支払い機が付いていて、クレジットカードで支払いを済ませるようになっているそうです。運転手の安全のために、確かにこれはいい方法ですね。しかし、その支払いの一部として、チップを含めますか、という質問がモニターに出て、その時の選択肢が、15%、20%、25%、の三つなんだそうです。(ニューヨークではこのオプションが20、25、30%になっている、とも聞きました。)
こういう時の人間の心理はおそらくどの文化でも共通しているでしょうが、誰も自分をケチとは見られたくないのです、だから15%という最低額を選択する人はほとんどなく、普通は20%、少し虚栄心の強い人は25%を選ぶものなんだそうです。結果、平均は20%を超えることになります。それと、クリック一つでチップの支払いが完了する仕組みをとることにより、<支払うことの心の痛み>をそれほど与えないという面も見逃せません。支払者の心理的抵抗値を低くするわけです。
クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)の傑作ブラック・コメディ、「レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)」冒頭の悪党グループの会合で、ミスター・ピンクがチップを払うのを拒否します。御託をあれこれ並べて自分のケチを正当化するSteve Buscemiの演技が実に味があります。「俺はチップは払わないよ、そんな仕組みは信じてないから」と言い張るミスター・ピンク。他の連中から、ここで働いてる少女たちがどれだけ稼いでるのか知ってるのか、微々たるもんだぜ、と言われ、「嫌なら辞めればいいんだ。社会がそうしろと言うからって、俺は払う必要はない。いいだろ、もし誰かが桁違いのサービスをしてくれたら、払ってもいいけどな。自動的に払うなんて御免だ。あいつらは普通の仕事してるだけだろ」と、サービスに見合ったチップ論を持ち出します。Harvey Keitel扮するミスター・ホワイトが、彼女たちはがむしゃらに働いてるぜ、この仕事は楽じゃないんだ、とまるで社会運動家のような理論で詰ると、ミスター・ピンク曰く、「マクドナルドで働いてるやつらだって懸命に働いてるよ、けど、だれもあいつらにはチップを払わないだろう。こいつらにはチップを払い、あいつらには払う必要がない、って社会が決めるのか、出鱈目さ」と、ファースト・フードの店ではチップを払わない仕組みの不備を指摘するのです。
このミスター・ピンクの論法は、恥ずかしながら、まじでこの通りだと思ってしまいます。だいたい、レストランでサービスの如何にかかわらず15%以上を払う仕組みは気に入りません。ウェイトレスやウェイターたちは笑顔を振りまいて見回りに来ます、「お食事はいかがですか?」と、もちろん中には裏のない本物の笑顔で接してくれる人もいますが、お座なりが見え見えという時もしばしばです。ミスター・ピンクや僕にとって何が一番気に入らないかというと、自発的な部分が削り取られてほぼ強制になっているからです。強制されて物事をするのには心理的な痛みを伴います。
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最終更新日 2015.08.09 08:29:17
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