わたしは価値を創る

わたしは価値を創る

November 24, 2006
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カテゴリ: 仕事以外の日記
■ジョー・フレイジャー。身長182cm、リーチ187cm。「スモーキング・ジョー」と称される機関車のような突進力とスタミナを備え、リズミカルに上体を揺すり相手の攻撃を避けながら接近しての左フックを得意とした。1964年の東京オリンピックのヘビー級金メダリスト。1970年にはジミー・エリスをKOし、世界ヘビー級チャンピオンとなった。

ただ、世間は彼を真のチャンピオンとは認めようとしなかった。なぜなら、彼はベトナム戦争への参加を拒否しライセンス剥奪された無敗の王者モハメッド・アリがいない間のチャンピオンだったからである。

屈辱的な評価を覆すことができたのが、1971年、アリの挑戦を受けたマジソン・スクエア・ガーデンでの大一番である。緊迫した攻防の末、ついに14ラウンド、必殺の左フックを命中させて強烈なダウンを奪う。(この時、テレビを観ていた数人が心臓発作で亡くなったと言われる)堂々の判定勝利。試合後、ジャガイモのように顔面を腫らしながら、アリから初めて白星を奪った男として記者会見を開いた。これがボクサーとしての絶頂期であった。

しかし、この時から彼の不運が始る。1973年「史上最強の男」ジョージ・フォアマンの挑戦を受けて2ラウンドKO負け。4度のダウンを奪われる無残な負け方は、2度と立ち直れないのではないかと思われた程だった。(再戦でも完敗した)

■一方のアリは、1974年、そのフォアマンから「キンシャサの奇跡」と言われるKO勝利で、チャンピオンベルトを奪う。もっとも、ボクサーとしての峠を越えたことは衆目の一致するところである。「バンタム級のスピードを持つヘビー級ボクサー」「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言われた華麗なテクニックに往年のキレは見られず、衰えを隠すことはできない。

そんなアリにフレイジャーは挑戦をする。それが最後のチャンスであることは明らかだった。

■アリとフレイジャーは、ノンタイトルで1度戦っている。その時はアリが勝利したが、判定は僅差で、どちらが勝ってもおかしくない内容であった。実は、アリは、もともと左フックを使うボクサーを苦手としており、今回も予想は難しい。フォアマンを破った時のような、ひたすらガードに徹して敵の打ち疲れを待つという戦法が今回も有効であるとは思えない。なにしろ、フレイジャーの突進力とスタミナには定評がある。悠長な駆け引きは、勝利を遠ざけてしまうだろう。

■それでもアリのショーマンシップは健在であった。いつものように試合前のビッグマウスが炸裂する。

「立ってみろ!!この不細工な熊野郎!テレビに映ってるぞ!!」



「俺は強い!俺は素早い!俺は美しい!俺はセクシー!俺はプリティ!!」

■1975年10月1日。フィリピンのマニラ特設スタジアムで試合は行われた。

「マニラの惨劇」

図らずもアリ自らが命名した通り、稀に見る壮絶な打撃戦となったその試合は、ボクシング史上最高試合として記憶に留められることとなる。

■序盤、接近戦を挑むフレイジャーに、左ジャブで距離をとるアリ。それまでの2戦と同じような展開を見せる。アリの鋭いジャブをものともせず、突進を繰り返すフレイジャー。その闘志は衰えを知らない。一瞬たりとも目の離せない緊迫した攻防が繰り広げられる。

■中盤。ついにフレイジャーの左フックがアリをとらえはじめる。首がもげるほど折れ曲がり、空ろな目をするアリ。得意のビッグマウスも封印し、ひたすら耐える時間を過ごす。

なぜアリはこれほどまでに耐えるのだろう?フレイジャーは思っただろうか。天才の名前をほしいままにし、華麗なテクニックを誇ったボクサーが、凄まじい打撃戦に自らを追い込んでいる。何がアリを駆り立てるのか。アリは何を求めているのか。

しかし、耐えているのはフレイジャーも同じだった。アリの強烈な左ジャブ(左ストレートと言ってもいいだろう)を無数に受けながら、ひたすら突進を繰り返す男。彼には、このスタイルしかない。ダメージを受けても、前に出て、左フックを叩きこむ。それが唯一の勝ちパターンだった。

しかし、アリには企みがあったと言われる。実は、この試合に備えて、体重を増やしていたのだ。大きな武器であるフットワークを犠牲としても、フレイジャーの動きを止めることを優先させたのだ。威力を増した左ジャブは、フレイジャーに着実なダメージを与え、試合は凄惨さを増していく。

■終盤になっても両者の打撃は止まず、一進一退の消耗戦は極限を迎える。14ラウンド。アリが後に「最も死に近づいた瞬間だった」と語る14ラウンド。アリはついに最後の勝負に出る。

フットワークを捨て、両足を踏みしめたアリは、突如、フレイジャーに右ストレートを叩き込む。



突然の攻撃パターンの変化に驚きを隠せないフレイジャー。しかしアリは、鬼のような形相で、ワンツーを連発する。消耗しきったフレイジャーにその攻撃を避ける力は残っていない。無慈悲な本性をむき出しに最後の力を振り絞るアリ。ほとんどガードも出来ずに攻撃を受けるフレイジャーは、それでも本能のように前に出て左フックを出そうとするのだった。

■フレイジャーはそのラウンドを耐え抜く。しかし、生命の危機にあると見たセコンドは、インターバルでフレイジャーを説得する。「お前はもう十分やったよ。もういいじゃないか…」男はコーナーで子供のように泣き崩れた。(14ラウンド終了時TKO)

■あふれる闘志に無類のスタミナと突進力。後のマイク・タイソンにも匹敵すると言われた左フック。ジョー・フレイジャーは確かに一流のヘビー級チャンピオンであった。しかし、同時代にモハメッド・アリとジョージ・フォアマンを持った不運が彼をチャンピオンに留めておかなかった。

だが、モハメッド・アリという天才の好敵手として過ごしたボクサー人生は決して華やかではなかったが、長く人々の記憶に残るものとなったはずだ。

■一方のアリは、その後も「グレイテスト」の称号を得るために戦い続けた。ボクサーとしての峠を越え、テクニックに衰えをみせても、人々は認めざるを得なかった。アリの真の強さが、その超人的なファイティング・スピリットにあることを。



カシアス・クレイの伝説

「モハメッド・アリ かけがえのない日々」

スリラー・イン・マニラ





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Last updated  November 27, 2006 05:03:50 PM
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