わたしは価値を創る

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May 14, 2007
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カテゴリ: 映画の話
■「廃市」は福永武彦の短編小説です。私はこれを20年以上前に読んだ記憶があります。

その使命を終えたような静かな旧都を舞台に、青年期の異性への思慕や官能、痛みなどを繊細で緻密な文体で描いた名作です。「町が死んでいく音がする」と描写される水郷の退廃的な雰囲気が強い印象を残します。

■大林宣彦の映画「廃市」は、原作をほぼ忠実に映画にしています。これを観て、小説「廃市」を思い出すと同時に、より深い映像体験を味わうことができました。これは、大林映画の中でも傑作の部類に入るでしょう。

■主人公の青年が水郷の町柳川に滞在する短い夏の体験が物語となっています。

もっとも、物語ははるか昔の記憶を辿る形になっており、わざとぼやけた映像が、醒めない夢のような印象を与えています。

そう。ノスタルジックというよりも、昔見た夢を思い出すような感じです。

■その中で描かれるのは、濃密な(しかし節度ある)近親間の三角関係です。

中心となるのが、没落した旧家の美人姉妹。これを小林聡美と根岸季衣が演じています。

しかし、この二人がどうにも美人に見えない。この映画の難点はこれだけですな^^;



■しかし、この映画の真の主人公は柳川の町そのものです。「転校生」や「さびしんぼう」の主人公が尾道の町そのものであったように。

この柳川の描写がすばらしい。フィルム独特の柔らかな陰影が、水郷の町の眠るような息遣いを感じさせます。

遠景を使いセリフもないシーンの心地よいこと。本当に柳川を体験したような気持ちになるぐらい繊細な描写です。

■映画の冒頭とラストに、2重3重の仕掛けがあります。これが、映画をより夢のようにしています。

いつもは“やりすぎ”の大林映画のテクニックも、ここでは丁度いい感じでした。

いい映画でしたよ。





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Last updated  June 10, 2014 06:52:59 AM
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