わたしは価値を創る

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July 20, 2013
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カテゴリ: 映画の話
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■宮崎駿監督の待望の新作は、同監督にしか描けない場面に満ちた佳作です。

今回の映画は子供向けではありません。それだけに今までの映画とはまったく違った試みを行っています。

■私が思うこの映画の特徴は3つ。

1.まずこの映画は、恋愛を真正面から扱っています。

堀辰雄の「風立ちぬ」を下書きにしているので当然ですが、宮崎監督が、ここまで真正面から描くとは思っていませんでした。

二人の出会い、再会、結婚、新婚生活、そして別離…

スタンダードな恋愛もののすべてを踏襲しています。しかもそれぞれが実に美しく切ない。

今後「大人のアニメとはこう描くのだ」というスタンダードになっていくのでしょうね。



実在の人物をモデルにしているということで、主人公の子ども時代から壮年期までをカバーしています。

これは今までの宮崎アニメにはなかった時間軸です。

その分、説明的な場面も多く、わりとあっさり物語が流れていきます。

クライマックスまで相当省略しているので、あっさりしているとも言えるし、余韻が残るともいえます。

だからというわけか、これまでの宮崎アニメらしい爆発的な盛り上がりはありません。

3.そして最大の特徴は、映画が抱える大きな矛盾を意識的に放置していることです。

この映画は実在の事件や時代を描いています。

宮崎監督には「紅の豚」という私的趣味の濃い映画がありましたが、あれはあくまでファンタジーの体裁をとっていました。

しかし今作は、誰もが知っている時代を舞台にしています。

宮崎駿があの戦争をどう描くのか。は多くの人が興味のあるところでしたが、実際には、戦争のシーンは、すべて省略してしまっています。

ここが肩すかし過ぎると議論を呼ぶところでしょう。



それは少し無自覚を装い過ぎかも知れませんね。

■主人公は才能にあふれた飛行機の設計者です。

幼い頃から自分が設計した飛行機を飛ばしたいという夢を抱き続け、ブレることがありません。

「クリエイティブな才能の期限は10年」だと(宮崎監督らしく)規定される中で、その10年をゼロ戦の設計に尽くし、見事に成し遂げます。

しかし、そのゼロ戦は、戦争に使われて、多くの犠牲を生むことになったわけです。



大胆な省略の後で、死んだ者たちが、生き残った主人公に「生きろ」と諭すのがラストシーンです。

つまりこの映画は「たとえそれが地獄に続く道だとしても、人は自分ができることを全力でやらなければならない。たとえ愚かな人生だとしても、とにかく生き続けなければならない」というメッセージを明確に発しています。

これは、日々矛盾の中で生きて、何が正義か分からないと常々発言している宮崎駿氏自身の強い思いであり、彼なりの答えなのでしょう。

それは確かに感動的でした。

ただ私がこの映画に期待した「兵器マニアでありながら反戦主義者である」宮崎駿のような人物がどのようにして出来上がったのかという問題に対して、答えらしきものや、少なくとも葛藤が、描かれていないわけです。

いつも矛盾した現実や思いを神話的な物語の力でまとめ上げる宮崎駿の映画とは、全く違う「意識して矛盾を交じらせない」というアプローチが、今のところ、しっくりと受け止めることができませんでした。

■それにしても、宮崎アニメの特徴である場面の豊かな動きや色彩の美しさは健在です。

汽車の疾走、地震、夕焼け、雪景色、避暑地のひと時、ささやかな結婚式、飛行機の飛翔、ゼロ戦の旋回。

なんと美しい驚きに満ちた場面の連続なんでしょうか。

宮崎駿氏自身が「いい映画は一場面見れば分かる」と発言している通り、細かな部分まで手を抜かない素晴らしい出来でした。

■ただ難をいえば、主人公の声があまりにも棒読み過ぎる。

あの演技力では「意識して無自覚」という難しい主人公像を描くことはできません。

これだけは、駄目だと断言します。





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Last updated  June 10, 2014 06:25:32 AM
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