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14日金曜日と15日土曜日の2日間にわたって小倉競輪場にて開催された 「ミッドナイト競輪」 に、私も車券を買って参加してみました。
警備上の問題の発生しない、またコストを押し下げることが出来る「無観客」の形で、これまでより遅い深夜の時間帯にレースを行うというこの試み。その時間帯という観点では公営競技にこれまでなかった可能性をもたらすことも期待され、私だけでなく公営競技業界の大きな注目を集めておりました。
実際、この2日間の私のスケジュールとして、金曜日の夜は旧友が集まる新年会があり、そして土曜日の夜は夜10時まで仕事をしていまして、これはそれぞれ通常のナイターレースだったら参加出来ないスケジュール。そんなスケジュールの中、夜までフルに活動したあとでレースに参加する余地があるかどうかというところがポイントでした。
果たして、2日とも全てではありませんが、きちんと車券を買って参加することが出来ました。
参加して「火傷を負った」という結果ではありましたが(苦笑)、実際に参加出来たという事実を噛みしめてみると、この生活の流れでまだ一日の最後に公営競技が楽しめるのかという、それはやはり一つの驚きでした。
騒音の心配がない競輪という競技で、しかも周囲への光の影響もないドーム開催という、まさに「その条件だから出来る」との見方もあるでしょうが、考え方としてヒントになるところは確実に存在するように思います。
一つには、これまでも述べたレースを行う時間帯。
細かい分析はあくまでも客の一人という立場である私には出来ませんが、初日に関して売り上げの目標は達成したという報道を目にしました。これを私は、人間の生活時間帯にはしかるべく公営競技を楽しもうとする需要が存在するという風に解釈しています。
別の例で言えば、ここでもよく取り上げて紹介している大村ボートでは、地理的に日本の西端に存在し日没が最も遅いことを利用して、冬場であっても最終レースを5時ちょっと前という遅い時刻に設定しています。その最終レースだけはそれまで他場を楽しんでいたお客さんの需要も取り込みつつ、極端に売り上げが上がります。全く逆の考え方で、これまでレースをやっていなかった朝の時間帯には売り上げが上がるのかどうかという芦屋ボートの「サンライズレース」という取り組みは、たった1時間いつもより早い9時過ぎからレースを始めるというシンプルなものですが、様々な営業広報努力の甲斐も手伝って、しかるべき成果を上げていると聞いています。
早朝、薄暮、ナイターと、時間的需要帯の開拓はすでに相当進んで、例えば通常のナイターのように時間帯によっては飽和状態。通り一遍の取り組みではその需要を獲得することは難しそうですが、今回「深夜」という「聖域」への扉が押し開かれ、小倉競輪のように実施環境が整いやすいところは勿論、そうでないところも何とか無理してこの聖域に足を踏み入れることが出来るのかどうか、注目したいところですし、考えていきたいところでもあります。
下級のA級選手による開催で、7個レースやって売り上げが8千万台。無観客でコストは押し下げられていますから、感覚的には結構いい数字だと思えます。この数字が特段のてこ入れなく恒常的にマークできるようなら、これはこれで「一つの考え方」だと言えるのではないでしょうか。
更に、先週もここに書いた「番組」という点でも、興味深いことがありました。
今回の開催は、いつもの9車立てではなく7車立てで7個レース。2日間のうち初日の金曜日は全てのレースが「予選」で、どのレースにもハッキリと力の差のある選手が組まれていて、実際の結果もその通り概ね堅い決着が多くなりました。 一方、2日目はその初日の着順を踏まえてレースが構成されるため、実力的には初日に比べればかなり接近した組み合わせ。随所に波乱=好配当のレースも発生し、全体的に見ても初日と2日目では配当レンジにはかなり差が生まれました。
で、どちらが売れたかといえば…初日の堅いレース続きの方。
予想していても、ハッキリ言って初日は力差がありすぎて、どのレースもちっとも面白くはなかったんですけど、数字を見ると売れている。最終日の最終レースの決勝は、シリーズのトップを決める注目度の高いレースのはずなのですが、その土曜日の最終レースよりも、下馬評からして断然ガチガチ本命の選手がいて、実際その選手が勝って堅い決着だった前日金曜日の最終レースの方が売れました。その他も各々のレース総じて、土曜日よりも金曜日の方が売れておりました(売上数値の出展は、競輪ホームページの確定オッズ画面に表示されていた票数です)。
これをどう見るかは、例えば(私が直接調べられない)レースへの参加人員とか、購入単価とか、あとは曜日の違いによる差を修正する別の取り組みとか、そういったものを経た上でということにはなりますが、非常に興味深いものがあります。
もう一つ取り上げれば、20分という異例なほどに短いレース間隔。これはとても新鮮に感じられました。
その20分の間には、前のレースのあとに次のレースの出場選手が登場して行う選手紹介も、レース本番に要する時間も含まれており、そして締め切りは発走の5分前。ですから、それ以外の本当のインターバルというのはかなり短い時間になります。
それで本当に車券が買えるのか、売り漏らしはないのかということがこの手の話では心配されるわけですが、実際にやってみれば20分でも十分ついて行ける。今回はインターネット投票での参加のみで、レース場でマークシートを塗って券を買うお客さんがいないということが、この取り組みを可能にしているわけですが、20分で1個レースというスピード感は、せっかちな私にとっては心地よく感じられます。感じ方には個人差があるでしょうが、経費の節減は勿論、ファンに数多くのレース=商品を効率よく提供するという観点では、見るべき部分もあるような気がします。
競馬でいえば、レースの実施から確定、パドックでの馬の「展示」と返し馬、そしてレース本番と、一定の段取りはどこの競馬場に行っても判で押したように行われています。勿論、必要な時間を取ることは大切ですが、昔とは生活の中での「時間のかけかた」というものが変わってきているのも事実。今あるみたいに例えば35分とか40分とかいうレース間隔がどんな場合にも必要なのかどうかということは、一度考えてみる価値があることなんじゃないかと思っています。
以上、色々と思いつくままに書いてきました。勿論このブログは、競輪界の未来を論じるためのものではないわけで、今回は地方競馬について考える機会になればと思って、筆を執りました。 思えば、大井でナイター競馬を始めるときにも「馬を夜に走らせるなんて」みたいな話がそこかしこから出ていたのも事実。そのときに、今のように他競技も含めナイターが当たり前のように行われるという状況がやってくると想像した人は、果たしてどれだけいたのか…。
競馬に当てはめて、どの要素がどうということは一概には言えません。がしかし、今回の「ミッドナイト競輪」が他競技で暮らす私たちに示すものの一つは、結局のところ「常識にとらわれない発想」というものが必要だということなんじゃないでしょうか。
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