里の種

里の種

2008/11/01
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カテゴリ: 記憶
子供の頃、近所にあった食料品店の親爺さんは、無口で、いつも奥さんに尻に敷かれていたような感じだった。太った体を自転車に乗せて、のたりのたりと食料品を配達に回っていた。奥さんにどやされて、渋々配達に回っていた親爺さんの姿は、子供心にも情けなく思えた。そんな親爺さんを、僕はずいぶん軽く見ていた。ある年の祭りの日、僕ら子供たちが遊んでいるときに、親爺さんが少し酔っぱらって来て、僕らに話を聞かせてくれた。死んだ男が仲間を連れて地獄巡りをする話だった。僕らは次第に話に引きつけられて、親爺さんの一挙手一投足に笑い転げた。大人になって落語が好きになって同じような話があるのを知った。志ん生のCDも持っているけれど、志ん生のを聞いても、嘗て聞いた親爺さんの話ほど面白くはない。寄席で聞けばまた違うのだろうけど、親爺さんの方がうまかったような気がする。うだつの上がらなそうな、あの親爺さんの生き生きした声音が、今もはっきりと記憶に残っている。

柿の実の照り映える頃音高くパワーシャベルが川掘り返す

田舎にも高速道路が貫きて海までの距離五分縮まる

廃線のローカル駅に人無くて争い続ける殿様バッタ





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最終更新日  2008/11/01 08:48:30 PM
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