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2026.07.28
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ロスジェネ脱線学 #43 何もない段差でつまずく午後
午後の歩道で、何もないところにつまずいた。
本当に何もなかった。
石もない。
段差もない。
誰かが足を出したわけでもない。
ただ、私の右足だけが、急に地面と話が合わなくなった。
おっと、と声にならない声が出る。
周りを見る。
誰も見ていない。
たぶん見ていない。
見ていないことにする。
五十代になると、こういう小さな事故未満が増える。
転んだわけではない。
けがをしたわけでもない。
しかし、心の中ではかなり大きな警報が鳴る。
今のは何だ。
若い頃なら、地面のせいにした。
靴のせいにもした。
舗装が悪い、靴底が減っている、歩道が傾いている。
いくらでも言い訳はあった。
今は、まず自分の足を疑う。
お前、上がってなかったな。
昔、仕事で工具箱を持って客先を回っていた頃は、階段も廊下も何も考えずに歩いていた。
FAXの前でしゃがみ、立ち上がり、また次の現場へ行く。
足は黙ってついてきた。
今は、平らな歩道で少し裏切る。
昭和の道はもっと危なかった気がする。
ガタガタの舗装、妙な側溝、暗い街灯。
それでも子どもは走っていた。
平成になって歩道はきれいになり、令和ではバリアフリーという言葉も普通になった。
道は昔よりやさしくなっている。
そのぶん、こちらの身体が少しずつ気難しくなっている。
私は何事もなかった顔で歩き続けた。
これが大事である。
つまずいた後の一歩目は、必要以上に落ち着いて見せる。
少し背筋を伸ばす。
少しゆっくり歩く。
あくまで最初からこの速度でした、という顔をする。
誰に対してなのかはわからない。
それでも歩いているうちに、さっきのつまずきは少し薄れていく。
足元を見る回数だけが、少し増える。
人生も、たぶんこんなものだ。
大きな穴で転ぶより、何もないところでつまずく方がこたえる時がある。
理由が見えない失敗は、自分の中に残る。
でも、転ばなかった。
それはそれで、まだ踏ん張れたということでもある。
私は次の白線を、少し大げさにまたいだ。
誰にも見られていないつもりで、今日もだいたいの姿勢を保っている。
🖊️このような50代の身体、介護、ロスジェネの日常、
元FAX修理CEの視点を毎日書いています。
また読みに来ていただけたら嬉しいです✨✨✨





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最終更新日  2026.07.28 05:57:16 コメントを書く


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