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昨日は、神奈川県寒川町にある寒川神社に、毎年恒例の「第39回 相模薪能」を観にまいりました。
毎年、終戦記念日の15日開催されるこの能は、太平洋戦争での戦没慰霊に奉納される薪能です。
入場無料の全席自由席の公演のため、いつも午前中から並びます。今回も、10時過ぎから、炎天下の中並びました。この日の寒川町の最高気温は35度だったそうで、暑い一日でした。
4時半に開場されましたが、この時期の4時半は、まだまだ暑い。
例年のとおり、神殿への奉納の儀式、火入れ等から始まりました。毎年のことながら、この時とても神聖な雰囲気で行われますが、装束で身を固めた神官の方たちは、暑さで大変だろうなと思います。
昨日の演目は、能「大仏供養」、狂言「過相撲」、能「養老」。
能「大仏供養」。平家名題の豪傑悪七兵衛景清(シテ・中森寛太)は壇ノ浦の平家全滅の際にもうまく逃れ、奈良若草辺の母(シテツレ・佐久間二郎)を訪ねます。母に問い詰められ、先年頼政の宇治川の合戦の余勢で平重衡が焼いてしまった大仏の修理開眼供養のドサクサに紛れ、平家一門の敵頼朝(子方・中川優奈)を狙うと告白します。母の温情に感涙しながら出て行った景清は春日神社の神官を装い、箒を持って、庭を清めるふうにして頼朝に近付きますが、警護の役人(ワキ・殿田謙吉)に見破られ、一度は逃げますが、又改めて名乗りをあげ、周囲を破って姿を消します。
最初に、シテツレの景清の母が静かに登場し、脇座に座ります。すっきりとして、美しい女性のようにみえましたが、この時間、脇座には、まだ西日がかなりあたっていましたので、ちょっと大変では…などと思わず、いらぬ心配をしてしまいました。
このお能は、珍しくシテ方が直面で演じるお能。直面での感情表現は難しいともお聞きしますが、声は聞き取りやすい。
景清と母のやり取りが、温かみがあり、切なくもあり、良い場面でした。
また、最後に景清に切られた警護の侍が背中をまっすぐに伸ばしたまま後ろ向きに倒れ、所謂仰向けのまま
。
ちょっと驚きましたが、スッとおきて退場し、その後の能「養老」では地謡を努めておられました
。お能でもあのような動作があるのですね。
狂言「蚊相撲」。家来を召抱えたい大名(野村萬斎)は、太郎冠者(高野和憲)に命じて街道でスカウトさせます。そこに近江守山の蚊の精(深田博冶が)、人の大勢いる都に上って血を吸おうと人に化けて街道に出てきます。太郎冠者が連れて帰ると、この蚊の精が、相撲ができるというので、大名みずから試験をすることにします。立ち会うと、アッ問い間に刺されて気絶。蚊の精と気付いた大名は、大きなうちわで扇いで応戦しますが、結局は負けてしまいます。
気温も下がらず、大名の扮装は暑くはないかしら?と思いましたが、狂言が始まる頃には、すっかり、日が落ちて、風も吹き始め、心地良い観劇となりました。ですが、舞台の上は、やはり暑かったでしょうね。
最近の言葉で言えば、「おバカキャラ」?ともいうべき大名には、楽しませてもらえます。萬斎さんのおバカキャラは、かなり可愛いですけれど
。
能「養老 水波之伝、祝言之式」。美濃の国に薬の水が湧き出たとの知らせに派遣された勅使(ワキ・殿田謙吉)は発見者の親子に会い、現場を視察します。奇端に感動して復命しようとすると山神(シテ・観世喜正)が出現して聖代をことほぐ舞を舞います。そして、今回は、「水波之伝」の小書きにより、間狂言の代わりに観音菩薩は天女姿(鈴木啓吾)で登場して舞を舞います。水波と、仏は水、それが形の現れ方によって神にもなるという中世の宗教思想から案出されたものだそうです。そして、「祝言之式」(特別演出)の小書きにより、後半のみの半能の上演でした。
昨日の私のお席は、脇正面の橋掛かりよりも最前列で、舞台を横から拝見いたしました。
ちょうど、私から見ると正面、地謡座の後には、この神社の社務所があり、その向こうに神社の木々が広がっています。
天女が舞い始めた頃、その木々の梢の間に白く光るものが見え始めました。それは大きな月でした。
そして、山神が舞う頃には、中天に。昨晩は満月だったようで、とても美かった。
夏の夜風に薪と月の光に照らされた、舞い。
これが、薪能の醍醐味のひとつかもしれないなあと感激した宵でした。
…でも暑かったけれど。
終戦記念日といっても、戦後に生まれた私には、あまり実感はないのです。この薪能では、最初の儀式で、神官とともに、二礼一打一礼をして、その後黙祷を捧げます。ささやかな行為ではありますが、毎年、この薪能に行って、せめても戦没者の方の御霊が安らかに眠れるように祈りを捧げたいと思います。
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