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2006年08月02日
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カテゴリ: つぶやき
坂上二郎さんのインタビューを日本衛星放送で見た。

持ち前のユーモアで人を笑わせながら話している二郎さんを見て、嬉しいような羨ましいような、なんともいえない気持ちになった。

私の父も、3年前に脳梗塞で倒れた。
結構重症で、「右半身は不随になるだろう、失語症も残るだろう」と医者に言われた。
が、生真面目で頑張りやの父はリハビリを熱心に頑張り、びっこを引きながらも歩けるようになり、お箸も右手で使えるようになり、もともと達筆だったが今でも、右手が十分自由な私よりよっぽど綺麗な字を書く。

母が言う。
「ま、いろいろ大変だけど、うちはお父さんが自分の事は自分で出来るから、まだ楽だと思うわ~。これでトイレもお風呂も私が抱えなきゃ出来ないなんて事になってたらと思うとぞっとするわよ。」

本当にそうだ。


言葉の方は、一生懸命やってはいるけど、体と同じようには回復していない。
言葉は出ないくせに頭はイカれていないので、父のイライラは相当なものだろうと思う。
(母のイライラもだ。)
実際、気分が落ち込んでいる時には「死にたい」と言い出す事もあるそうだ。

里帰りする度に、いろんな人が父の事を気遣って尋ねてくれる。
「お父さん、どう?」

「体は随分動くようになったし、元気みたいだよ。」
そうとしか答えようが無いし、周りの人もそれ以上聞きたいと思っていないはず。
でも、そう答えながら、なんとも悲しい気分でしっくりこない私がいる。

私たちの里帰りが決まると、父は毎日カレンダーを指差して、
「今日はこの日だな。で、この日に帰ってくるんだな。」


今年の里帰り時、私とお嬢がスーツケースを転がしながら実家に向かって歩いていたら、父が窓から「おー!」と手を振って笑っていた。
偶然窓を開けたら私たちを見つけたのかと思っていたら、

「いきなりね、『スーツケースの音がする』って子供みたいに駆け出して窓の方に行ったのよ。お母さんは何も聞こえなかったから、何言ってんのよ、お父さん、と思ってたらね、本当にあなた達が来たからびっくりしたわよ。」

と母が言っていた。

お嬢と遊ぶのが何より楽しいらしい。

二人でかるたをして、お嬢がいつもぶっちぎりで勝つ。
お嬢が歌う童謡に合わせて、父も忘れていた童謡を歌って母をびっくりさせる。
お嬢のする事為す事に大笑いをして、笑いがいつまでも止まらずに「こんなに笑って血管が切れたりしないのかしら、、」と内心びくびくする事もある。笑い過ぎで血管がキレたりするものかどうか、そんな事は知らないけど。

母が「あんた達が帰ってくると、お父さんのボキャブラリーが増えてびっくりする」と言う。

言語のリハビリの先生は、
「お孫さんがいらっしゃってるそうですね。お父さん、最近喋りだすと止まらないんですよ。ボキャブラリーの回復もめざましいです。でも無理はこの病気には一番悪いですから、少しずつゆっくり、ね。」と、回復を喜んでくれつつもちょっと心配するほどだったらしい。

そんな父を見ていて、私は本当に申し訳なくなる。
もう少し近くに住んでいたら、もっともっとお嬢に会わせてあげられたのに。
もっともっと頻繁に、楽しい気分にさせてあげられたのに。
そしたらもっともっと言葉も回復してたかもしれないのに。
そしたらもっともっと母の負担も減ったかもしれないのに。

二郎さん並にとはいかないまでも、もう少し回復出来たかもしれないのに。
「死にたい」と思うほど憂鬱になる回数を少し減らしてあげられたかもしれないのに。

母がよく言う。
「お父さんはちゃんと定年退職してお務め全部果たしてから倒れてくれたからね。ありがたいと思わないといけないね~。これがあんた、働き盛りでローンの返済も終わってなくてあんた達もまだ学生だった、なんて事になってみなさいよ。大変よー。もうお母さん気が狂っちゃうわよ。」

本当にそうだ。
父は、私たちの扶養義務を全て果たしてから倒れてくれて、しかも、倒れた後も私たち(特に母)の負担にならないようにリハビリを頑張って自分の事は自分で出来るまでに回復してくれた。半身不随と言われていたのに。

父は今までも今も私たちの為に頑張り続けているのに、私が出来るのは、一年に一度顔を見せに帰る事だけ。

私が結婚したいと言い出した時に、大反対したあの時の両親の気持ち。
あの時も心が痛んだけど、本当に本当に申し訳なく思う。
でもこんな状況にしてしまった私が今の状態で出来る一番の親孝行は、私たち家族が幸せで健康で仲良く暮らしていく事なんだろう、と、本当に自分に都合の良い考えだけど、そう思う。

今年は父と母とお花見に行った。
お嬢もとても楽しんだ。
里帰りからこっちに戻る時、母が言った。

「来年もこの季節に帰ってくるの?来年はお花見行けないかもね。お父さんのびっこひどくなっていくし、日に日に歩くの辛そうになってきてねぇ。今年行けて良かったわね~。」

今年できた事が来年は出来なくなっているかもしれない。
老いていく親にとっては仕方の無い事なのだけど、毎年里帰りから戻る時、なんともいえない気持ちで親に手を振る。





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最終更新日  2006年08月02日 23時07分02秒
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