真弓定夫先生の著書『子ども達に贈る12章』、今回は第5章をご紹介します。
真弓先生はこう説きます。
「人は『人間』である前に『ヒト』という4000種類を超える哺乳動物の一員であるという謙虚さを持ち、他の哺乳動物が生活全般にわたってどのような育児をしているかを学ぶ姿勢を取り戻さなければなりません」
そして、しっかりとした「ひとづくり」ができてから、初めて体育・徳育・知育という「人間づくり」へ進むのが好ましいと述べられています。
しかし現代では、この順序が逆になってしまいました。知育偏重に走ったことが、人間らしさを失わせる結果を招いたと先生は指摘します。
聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんの言葉が、ここでも引用されています。
「知識は健康にしない」
哺乳動物の定義は「温血・胎生・雌は乳を分泌して仔を哺育する」というものです。つまり、同種の乳で育てることが育児の原点です。
イヌがネコの乳で育ったり、ウマがウシの乳で育つことはありえません。文明人を除く哺乳動物は、すべてこの原点を踏み外していないのです。
かつての日本人も、ほとんどが母乳(人乳)で育てられていました。しかしわずか60年あまりで、母乳栄養児よりも人工・混合栄養児のほうが多いという、自然の摂理に反する事態を招いてしまいました。
真弓先生は確信を持ってこう述べています。
「ひとづくりの原点を取り戻す必須の条件は、母乳哺育の復権にある」
離乳が完了してからの食について、真弓先生は3つの重要な原則を示しています。
① 身土不二(地産地消)「三里(四里)四方のものを食すれば病せず」という言葉のとおり、自分の住む土地の食べ物をいただくことが基本です。
② 旬を食べる日本には四季があります。食養家・石塚左玄の言葉がここで紹介されています。 「春苦味、夏は酢のもの、秋辛味、冬は油(脂)と心して食え」
③ 生きものを食べるヒト以外の哺乳動物は、草食・肉食を問わず、生きもの以外は一切口にしません。しかし現在の日本では、食べ物のうち生鮮食品はわずか8%。外食が30%、加工食品が62%を占め、加工食品を通じてひとり当たり年間1500種類ものクスリを口にしているのが実態です。
消費者保護の活動家ケヴィン・トルドーのこんな言葉も紹介されています。
「株式を上場している会社で製造・販売している食品は食べてはいけない」
衣についてヒトはサルの仲間であり、日本の気候(北海道を除く)では通気性を保つことが基本です。できるだけうす着の習慣をつけ、木綿・麻・絹などの天然素材を選び、石油化学繊維はなるべく避けることが勧められています。
「暖衣飽食病のもと」―この古くからの言い伝えを大切にすべきだと先生は述べます。
住について気温と室温の差はできるだけ小さく保つことが大切で、大人で摂氏10度、子どもで摂氏5度以内が望ましいとされています。
かつての日本では、湯たんぽ・こたつ・火鉢・囲炉裏で下半身を温め、うちわや扇子で上半身に涼をとることで「頭寒足熱」が自然に保たれていました。
過度な空調(冷暖房)が子どもたちの心身の健康を損ねている現状を、建築家の宮本喰悟さんはこう言い表しています。
「いまの子どもたちは保育器の中で育てられている」
真弓先生はこの章をこう締めくくっています。
私どもは地球上の神羅万象によって生かされている。すべての動物・植物、水・空気・土とともに存在しているという謙虚さを根底に置くことが大切だと。
終戦前の日本人が持っていた「覚他の精神」―他者を配慮する優しさ―が、戦後の自己中心主義の広まりによって薄れてしまいました。それが環境破壊や地球温暖化にまでつながっているのではないか、と先生は問いかけます。
かつて花鳥風月を愛し、自然との共存を大切にしてきた日本人。その寛容さを、次の世代にどう受け継いでいくか。深く考えさせられる章です。
第4章を読んで、あらためて「育てる」ということの意味を考えさせられました。
母乳・食・衣・住―どれも特別なことではありません。かつての日本人が当たり前に実践していたことです。それを少しずつ取り戻していくことが、お子様の健康の土台になるのではないでしょうか。
次回は第6章をご紹介します。 治療より予防。薬に頼る前に、まず健康的な生活習慣を。 子どもたちの未来のために、今できることから始めませんか。