北海道廃線2000キロ ― 廃線跡を歩く・写真で記録するウォーキングブログ ―

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2026.08.01
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カテゴリ: 相生線編



幻の釧美線構想と津別の林業を支えた鉄路

はじめに

相生線は、美幌駅から津別を経て北見相生駅までを結んでいた国鉄の地方交通線です。 

1924年に美幌~津別間が開業し、翌1925年に北見相生まで延伸されました。全長36.8kmの路線は、地域住民の移動手段であると同時に、津別地方の林業を支える産業路線としての役割も担っていました。1985年4月1日、国鉄再建法に基づく特定地方交通線として全線が廃止されています。 

現在では北見相生駅跡を除き大規模な遺構はほとんど残されていません。しかし沿線を歩くと、駅前道路や旧駅名を残すバス停、土地利用の痕跡から、かつてこの地を列車が走っていたことを感じ取ることができます。 

第1章 相生線とはどんな鉄道だったのか

【路線概要】

路線名 国鉄相生線
営業キロ 36.8km
起点 美幌駅
終点 北見相生駅
開業 1924~1925年
廃止 1985年4月1日
駅数 14駅(駅・仮乗降場含む)
交換可能駅 津別駅

【全駅一覧】

駅名 種別 特徴・接続 現在の主な状態
美幌
起点駅 石北本線接続 JR駅として営業中
旭通
仮乗降場 - 痕跡薄い
上美幌
駅 - 農地・跡地
豊幌
仮乗降場 - 痕跡薄い
活汲
駅 - バス停・旧駅前道路
達美
仮乗降場 - 痕跡薄い
津別
主要駅 列車交換可・津別森林鉄道接続 腕木式信号機・記念碑
高校前
仮乗降場 - 痕跡薄い
恩根
駅(昇格) - バス停名として存続
本岐
駅 木材集積拠点 パークゴルフ場(東屋)
大昭
仮乗降場 - 痕跡薄い
開拓
仮乗降場 - 痕跡薄い
布川
駅(昇格) - 跡地・農地
北見相生
終着駅 林業拠点・釧美線構想終点 道の駅あいおい(車両・駅舎保存)

美幌-旭通-上美幌-豊幌-活汲-達美-津別-高校前-恩根-本岐-大昭-開拓-布川-北見相生 


第2章 幻に終わった釧美線構想

相生線は、もともと単独のローカル線として計画された路線ではありませんでした。 

その起源は、釧路と美幌を結ぶ「釧美線」構想にあります。明治末期から阿寒を経由して釧路と北見地方を結ぶ鉄道計画が構想され、1922年の改正鉄道敷設法では「釧路国釧路ヨリ北見国相生ニ至ル鉄道」として規定されました。 

しかし財政事情などから全線建設は実現せず、美幌側から建設された区間のみが開業しました。 

1924年11月17日に美幌~津別間が開業し、翌1925年11月15日に北見相生まで延伸されます。こうして完成したのが現在「相生線」として知られる路線です。 

もし釧美線が全通していれば、後に釧網本線が担うことになる道東内陸部の南北連絡機能を担っていた可能性があります。しかし歴史は別の道を辿り、相生線は未成幹線の一部として終着駅を持つローカル線となりました。 


第3章 津別開拓と林業を支えた相生線

〇網走川流域の開拓

相生線が走った網走川流域は、開拓によって農地や集落が形成された地域です。 
津別を中心とする一帯は森林資源に恵まれ、開拓の進展とともに木材産業が地域経済の柱となりました。 

〇木材輸送路としての役割

相生線は旅客輸送だけでなく、木材輸送路として重要な役割を果たしていました。 津別町は町域の大部分を森林が占める木材の町であり、沿線には製材施設や木材集積場が存在していました。現役時代の写真を見ると、本岐や津別周辺には大量の原木が積み上げられており、林業と鉄道の結びつきの強さがわかります。 


1927年には津別森林鉄道が開通し、山中で伐採された原木が津別駅へ運ばれるようになりました。 
津別駅では森林鉄道から相生線への積み替えが行われ、木材輸送の拠点として機能していました。1963年まで森林鉄道が運行されていたことも確認されています。 

第4章 相生線の全盛期
​ 戦後になると沿線人口の増加に対応するため、旭通、豊幌、達美、高校前、大昭、開拓などの仮乗降場が設置されました。また、恩根や布川は後に正式な駅へ昇格しています。 

1980年代初頭の時刻表によると、相生線では複数往復の気動車列車が運転されていました。津別駅では列車交換が行われ、美幌を経由して石北本線へ接続していました。 

終点の北見相生駅には複数の側線や木材関連施設があり、林業輸送の拠点としての性格を持っていました。

第5章 相生線の廃止
​高度経済成長期以降、自動車の普及と道路整備によって鉄道利用は減少していきました。 

木材輸送もトラック輸送へ移行し、1979年には貨物営業が廃止されました。 

1980年の国鉄再建法施行後、相生線は第一次特定地方交通線に指定されます。1981年には廃止が承認され、1985年4月1日に全線が廃止されました。 


1922年(大正11年) 改正鉄道敷設法により「釧美線(釧路〜相生)」構想が規定される。


1924年(大正13年) 美幌〜津別間が開業。


1925年(大正14年) 津別〜北見相生間が延伸開通(相生線全通)。


1927年(昭和2年) 津別森林鉄道が開通。津別駅が木材輸送の重要拠点に。


1979年(昭和54年) トラック輸送への転換により、貨物営業が廃止。


1981年(昭和56年) 第一次特定地方交通線として廃止が承認される。


1985年(昭和60年4月1日) 全線廃止。バス路線へ転換。

第6章 現在の相生線

北見相生駅跡




現在の相生線を代表する保存施設です。 

旧北見相生駅は現在「道の駅あいおい」として整備されており、駅舎、ホーム、キハ22形気動車、構内除雪車キ700形、機関車庫などが保存されています。駅舎の移設計画に対して地元有志による保存活動が行われ、現在の保存につながりました。 


津別駅跡

沿線最大の町だった津別でも、駅施設そのものは失われています。 


しかし駅前旅館や駅前商店だった建物が残るほか、構内信号だったと考えられる腕木式信号機が現在も残されています。 



本岐駅跡

本岐駅の駅舎は現存していません。 

現在はパークゴルフ場として利用されており、ログハウス調の東屋が設置されています。駅前広場や駅前道路の形状から、かつてここに駅があったことを読み取ることができます。 

なお、『北海道 地図の中の廃線 旧国鉄の廃線跡を歩く追憶の旅』によると、1990年当時は駅舎が残り、宿泊施設として活用されていました。 




その他の駅跡

活汲、恩根、布川、開拓、大昭などでは駅施設はほぼ失われています。 

その一方で、 

駅名を残すバス停・旧駅前道路・取付道路・パークゴルフ場や広場への転用地

などが残り、注意深く観察することで駅跡を推察できます。 



第7章 廃線後40年の変化

相生線は廃止後まもなく、鉄道施設の撤去や土地利用転換が進んだ路線でもあります。 

堀淳一は『北海道 地図の中の廃線 旧国鉄の廃線跡を歩く追憶の旅』の中で、1990年時点の津別駅について「痕跡すら残さず、きれいに消え失せていた」と記しています。また、連続して歩ける廃線跡もほとんど残っていなかったとしています。 

その後、本久公洋『北海道の鉄道廃線跡』でも、駅跡の多くが農地や公共施設へ転用されている様子が紹介されています。 

そして2020年代の現況でも、その傾向は大きく変わっていません。 

つまり相生線は、「廃止から40年経って遺構が失われた路線」ではなく、「廃止後早い段階で急速に風景へ溶け込んだ路線」と言えるかもしれません。 

時期 記録・文献 現地状況・特徴
1990年
堀淳一『地図の中の廃線』 津別駅跡は綺麗に消失。本岐駅舎は当時宿泊施設として残存。
2000年代
本久公洋『北海道の鉄道廃線跡』 駅跡の多くが農地や公共施設へ転用。北見相生駅の保存活動が定着。
2020年代(現在)
当ブログ調査 遺構はほぼ消失するも、旧駅前道路やバス停名として地域に浸透。

第8章 相生線を歩いて感じたこと

相生線には、士幌線のコンクリートアーチ橋や羽幌線の巨大コンクリート橋のような象徴的遺構は多くありません。 

歩いた距離に対して収穫が特別多い路線とも言えないでしょう。 

しかし、 

幻に終わった釧美線構想

津別森林鉄道との接続

林業によって栄えた地域

駅前道路やバス停に残る記憶

をたどっていくと、失われた鉄道の存在を確かに感じることができます。 

相生線は遺構を見る路線ではなく、土地の歴史を歩く路線である。 

それが実際に沿線を歩いてみて感じた、この路線最大の魅力でした。 




​


もっと相生線を知りたい方へ

​



【おすすめ書籍】



『北海道 地図の中の廃線 旧国鉄の廃線跡を歩く追憶の旅』
著者:堀淳一
出版社:亜璃西社
1990年時点の相生線跡の様子を記録した貴重な現地踏査記録。 




『北海道の鉄道廃線跡』
著者:本久公洋
出版社:北海道新聞社
北見相生駅保存活動や現存遺構について詳しい。 




『消えた鉄路を歩く 北海道(道北・道東編)』
相生線の歴史、時刻表、配線図、沿線地図を収録。 



『北海道の廃線アルバム』
著者:野沢敬次
出版社:アルファベータブックス
現役時代の相生線や木材輸送の写真を多数掲載。 







【映像資料】



NHKアーカイブス


国鉄相生線の現役時代を記録した映像。 


よみがえる新日本紀行 北海道・相生線



HTB北海道テレビ


現役時代の相生線の映像記録。 


国鉄&JR北海道の廃線路線シリーズ「相生線」 




【地図・一次資料】


国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス


国立国会図書館デジタルコレクション


歴代時刻表


現地踏査記録




【関連記事】

相生線ウォーキングガイド

相生線全駅ガイド

北見相生駅跡訪問記

津別森林鉄道ガイド

※本記事は文献調査と現地踏査結果をもとに執筆しています。












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最終更新日  2026.08.15 21:43:24
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