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October 12, 2005
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カテゴリ: カテゴリ未分類
今回は、『黒龍の柩』の感想第3弾。
上下巻を問わず、心に残った(小ネタ?)を書き連ねてみる。


原田左之助。
彼は新選組幹部としては珍しく京で妻子を持つが、この子供が自分の子ではないことが判明。
どこかで厭世的になるが、それでも新選組として戦い続ける。
作中で、原田は永倉新八と靖共隊を結成、新選組と袂を分かつが、のち上野彰義隊に参加。
なんと新選組十番隊組長原田左之助の名前を彰義隊の某に売り払ってしまう。
なので、「原田左之助」自体は上野で戦死したことになる。
作中の原田は、蝦夷地に向かう徳川慶喜の護衛の最中、刺客から慶喜を守るために死んでいる。

一説には上野彰義隊で戦死したとも伝えられているし、日露戦争の折、陸軍のいち老兵が「わしは新選組の原田左之助」と名乗ったとも伝えられている。
作中の原田の設定は、そうした諸説を取捨選択して作られたものと推測される。


沖田総司。
結核を患ったあとの彼は、とある商家の離れを借りて、非番や体調が優れないときはそこで過ごすようになる。
そこには同じ結核を患った女と一緒に住んでおり、ともに長くはない命、暇を見つけてはお互いに体を求め合う。
沖田にとってその女は、ただの性の捌け口であり、体調的に剣を振れないときの精神的なもやもやをぶつける対象としてしか存在せず、そこに恋愛感情はない。
女は自分の体調が優れなくても、沖田の体を第一に考え、ときに手厚く看病し、また沖田のなすがままに体を委ねる。
しかし、女の結核が先に悪化してしまい、沖田に看取られて死んでしまう。
女の死は、沖田の心情を揺さぶった。
失って初めて、沖田はその女に恋愛感情を持っていたことを自覚する。
これは、作者の創作のエピソードであろう。

薄命であり、美少年であり、類を見ない剣豪であった沖田総司の恋のエピソードは作りやすく、また読者も読みたがるのであろう。


主人公の土方歳三に関しては、こういった恋のエピソードはない。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』では、恋多き武人として最初から最後までいろんなエピソードに彩られている。
この『黒龍の柩』では、全編土方の男のロマンであり、土方の色恋沙汰は一切ない。
特定のいち個人に執着していたわけではなく、溜まった「欲望」も遊郭で発散していたようで、近藤勇のように妾を持ったり、沖田総司のように無自覚の恋愛感情があったことはないそうだ。



久兵衛。
おそらく、作者の想像した架空の人物であろう。
久兵衛は、箱館において松前藩士の奥方であったであろう女を保護したが、女は気が狂ってしまい、分別定かではない。
久兵衛は女の世話をするが、性の捌け口にもしている。
やがて女は正気を取り戻すが、自分を保護しているのが、松前藩を滅ぼした箱館政府の者だと知って首吊り自殺。
久兵衛は手厚く葬るが、その時になんと女の肉を食べているのだ。
カニバリズムである。
作者がなぜこのエピソードを創作したのかわからない。
ひょっとしたら、この時代に、もしくは箱館にゆかりの伝承として似たような話があったのかもしれない。
今までの北方作品に類を見ない猟奇的なエピソードである。
もっとも、直接的な描写はない。
土方歳三が、新選組の幹部を経由した「伝聞」という形で現れるだけで、カニバリズムのシーンも、久兵衛の事後報告として数行あるだけである。


村垣範正。
この人物は一般には知られていない。
少なくとも、勝海舟ほどの知名度はないが、本作では章ごとに主観を持った準主役的扱いを受けている。
北方作品の歴史ものとして、一般に知名度の低い人物を準主役級に据えることがある。
『三国志』で言えば、五斗米道勢力の張衛である。
彼は五斗米道の指導者である兄の張魯の補佐をしながら、天下に覇を唱えんとする。
五斗米道の宗教的な面は張魯が受け持ち、自分はその軍事を含めた運営に力を注ぐ。
自分は宗教に興味はない、ただ五斗米道の組織を強くするだけという、その存在感が強烈だった。
話は逸れたが、この村垣範正もマイナーな人物ながら、本作において存在感十分である。
実際にどのような人物であったかは、下のページを見てくだされ。
村垣範正について


黒龍の柩(下)
黒龍の柩(下)





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Last updated  October 29, 2005 02:10:08 PM
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