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2014.08.02
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カテゴリ: 小説
「つまり君は。」
しけた白髪をうっすら残した、超心理学者の平井博士の頭のてっぺんを見つめながら、俺はぼんやりと説明を受けていた。
 「脳内成分の分泌量が並外れて多い体質なんだよ。そして霊魂というのはことさらに、それに反応するものなんだよ。」
 消毒液臭をうっすらと放つイオン探知機が、オカルトマニアからミツカトニと呼ばれる、ここ三塚大学東第二校舎内の、日当たり悪く湿気臭い心理学部研究室の中で、俺の回りの空気にピクピク反応していた。
 「つまり俺は、幽霊に好かれやすいってわけですか。」
俺はジジイから顔を背けて、力なく息を吐いた。その体質とやらのせいで、俺の人生は散々だった。ガキの頃から霊現象を呼ぶ子供として、近所中から気味悪がられた。それが原因であの娘と別れた夜、やけ酒をあおりに行った飲み屋の皿が宙を舞った。
 「そう気落ちしないでくれ。何も悪いことばかりじゃないだろう。」
 「何も分からずに言わないで下さい。俺には今まで、ろくなこと一つなかったんだ!」
 「だからそれは気の持ちよう一つだよ。いいことが起こって嬉しい時なんかは、もっといいことが色々起こる体質なんだから。こういう天気の時には、物事を必要以上に悪く考えてしまいがちになるから、もっと気楽に受け取るように心がけないといけないよ。」

 「待ちなさい。人間とは悲しいものだ。何か一つ嫌なことがあると、そこら中嫌なことだらけだと思ってしまう。余り不幸な気分に囚われると、悪い霊を呼ぶことになる!」
 「無責任なこと言うな!」
俺がそう叫んだとき、イオン計の赤い針が一気にプラスに振り切れた。
 「危ない!」
慌てふためく中年男が、俺を机の下に引きずり込んだ。「気違い博士」を睨みつけようとした俺の周囲で、重い金属機器がガシャガシャと踊り、ガラスが割れる音が響いた。またかよ・・・。どれ程そのまま呆然としていただろうか。俺は白衣の男の腕に掴まって、緑色の鉄器が散乱した中で、どうにか起きあがることができた。警備員と生徒たちが、好奇と驚きの入り交じった顔を、ドアの間から覗かせていた。それはこの実験室では当たり前のことだったが。
 「そう気にせんで。心をもっと強く持って霊と付き合って行きなさい。」
俺を散々おもちゃにした機械が散乱したモルモット部屋を出た時、俺にはもう言い返す気力もなかった。野次馬たちは俺がドアまで歩み寄ると、黙ったまま道をあけた。

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最終更新日  2014.08.02 12:06:29
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