ルーニーとケイト

ルーニーとケイト

2005年03月19日
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子供時代を振り返るとき、さほど思い出のない場所や親しくなかった人が記憶から離れないことがあります。今日はそんなお話。

彼は特に仲の良い友達がいるわけではなかったが、学校中の生徒に知られるぐらい有名で人気がありました。その理由は、彼が無意識で行っていた巧みなコミュニケーションのとり方だ。自分から積極的に、人々に声を掛けていた。唯一言、「お菓子たべるぅ~?」と。それ以外はほとんど喋らない。初めて遭遇する人は一度は断るがそれが度重なると、お菓子をもらってしまう。
和菓子屋の息子なのにいつも持っているのはスナック菓子。いつも自転車にまたがり愛犬の柴犬を連れて。雪が積もるとソリを引き、その中にスナック菓子の袋を乗せて、もちろん愛犬も連れている。
お菓子をくれるときは必ず手渡しでくれた。手垢のたまった手で、最初はいやいやもらうがそのうち気にならなくなっていた。ほとんど会話をしないので、それが彼との唯一のコミュニケーションだった。
彼は、私たちが遊ぶ路地、公園、グラウンド、場所を問わず現れた。まるで、元々そこに存在する風景の一部のように。恐らく、彼を知っている人たちの過去に戻って何気ない日常の風景を切り取ったとしたら、どこかで彼がひっそりと邪魔にならないように佇んでいることでしょう。ともに遊んだわけではないが記憶から消えない存在。
私が小学校の高学年になるころ、彼の姿を見なくなりました。卒業していなくなったのか、途中でいなくなったのかは定かではありません。普通の中学ではなく、養護学校に通っていると兄から聞いたことだけは覚えています。
彼の姿を見なくなってから、いつものまにか和菓子屋もなくなっていました。養護学校が遠くて通えないため、家族で転居したのか。
彼の消息は多分誰も知らないでしょう。新しい環境でうまくやっているのか。もちろん誰でもそうですが、小学校時代のようにはいかないでしょう。しかし、彼の絶妙なコミュニケーション方法を用いて、いい人たちに囲まれているだろう。





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最終更新日  2005年03月19日 19時12分20秒
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