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 70冊近い単行本の内、SF・冒険モノの ほとんどが邦訳されているエドガー・ライ
ス・バローズ。もちろん、普通に考えれば、「読んではいけない=詰まらない」の
は、他のジャンルの小説である(「能率専門家」だとか「ハリウッドから来た少女」
とか)。未訳の中にもウェスタンやSF、冒険小説が有り、ぜひとも翻訳して欲しいと
ころである。
 そんなバローズの邦訳作品であるが、「読んではいけない」と言うか「詰まらな
い」作品は少なくない。ルポフの「バルスーム」においても「反復と自己模倣」と挙
げられ、「ターザン・シリーズが一番ひどい」とされている。前回、示した通り、火
星シリーズにおいても中期・後期は他の作品の焼き直しが使われているし、金星シ

生き生きしたヒロインは好きだし、「~合成人間」の主人公も感情移入できる)。
 面白くない典型は、ペルシダー・シリーズの中盤で、全く目新しさが無い。第5
巻・第6巻は読むだけ時間のムダ、と言う気がする(第7巻も焼き直しは使われている
が、ヒロインのオー・アアと地上人のアー・ギラク、それに「対等(に近い)2組の
カップルが平行して描かれる」と言う点で救いが有る。ガークの見せ場も有るし)。
 最悪なのは第4巻「ターザンの世界ペルシダー」だろう(ハヤカワ版は「地底世界
のターザン」で、こちらの方が原題に近い)。おそらくバローズのSF・冒険モノの
ワースト1では無かろうか。野田元帥も「ネタ切れに苦心している」と手厳しい。
 と、言うのは、理由が2つ(ないしは3つ)あって、1つは「期待値を大きく下回
る」事が挙げられる。これは致命的だろう。
 もう1つは「焼き直し」と言う事。「時間に忘れられた国」第2部(ハヤカワ版は

出に乗り出す」がそのまま使われている。これだけなら、まだ問題では無いのだが、
「翼竜と飛行機がふつかって、(本作の)主人公が徒歩での単独行動を余儀なくされ
る」と言うのは論外。まともな読者なら怒るか投げ出すところである。
 3つ目は、1つ目と被るのだが、本来の主人公であるデヴィッド・イネスが全く活躍
しない、と言う事。活躍どころか登場シーンさえ わずかで、しかもセリフすら無

カーター、ターザン、カースン・ネイピアは、敵に捕らわれる事が有っても、丸々1
巻以上そのままで、他者の助けを待っている…などと言う醜態は晒していない(い
や、博物館でのカースンの状態は近いモノが有ったが、助けに来たのはヒロインだっ
たし、一応、計算の上の展開だった)。ちなみに前作では、ガークの息子タナーが主
役で、デヴィッド自身は副主人公的な扱いだったが、北極の開口点を見つけるなど、
活躍や情緒を感じさせるシーンが有った。実質的に登場していないに近い扱いは屈辱
的とも言える。
 さて、第1点に戻ろう。3とも被るのだが、「期待値を下回る」と言うのは、具体的
には「クロスオーバー作品で有りながら、ペルシダーのキャラクターが活躍するシー
ンが ほとんど無い(登場シーンも少ない)」と言う事である。場所がペルシダーな
だけで、ペルシダーで無ければ「ターザン・シリーズの一冊」と言って差し支えな
い。しかも本来の目的が「コルサール帝国からのデヴィッド救出」で有りながら、メ
インストーリーはターザンの彷徨と、副主人公であるジェイソン・グリドリーの恋と
冒険、この2つに終始しており、期待倒れな事この上ない。デヴィッドは最後の最後
まで捕らわれたままで出番は無いし、おなじみのアノロックのジャ達も終盤まで登場
せず、登場後も「ペリーたちと艦隊を建造していた」と説明されるものの、期待倒れ
感が半端ない。ちなみにメイン・ヒロインのダイアンの兄が同乗していたが、「単に
リストアップされている」と言った感で、空気キャラとしての地位を確立している
(笑)。まぁ、第2巻でもそうだったし、第7巻でも そうなのだが。それに、「ター
ザン率いる地上部隊(飛行船0-220号 含む)とコルサール艦隊との決戦」とか
「ペルシダー艦隊VSコルサール艦隊」を期待してしまうのだが、そう言う大規模な戦
闘シーンは無い。せいぜい10数名程度の戦闘が せいぜいで、それも「パニックに
陥った恐竜や動物の集団から逃げる」か、「地上製のライフルにモノを言わしてリ
ザードマンの一隊と交戦する」と言うワンサイドな展開。
 思うに、バローズは戦争(大規模な部隊の衝突)を描くのは苦手な気がする。前回
に挙げた「ルータ王国の危機」においても部隊戦は描写されているのだが、ルータ自
身が小国であり、この辺りが限界だと思う。
 それは ともかく、ターザン・シリーズの第2巻で、いとこのセシルが割りを食った
ように、今回もデヴィッドが割りを食った感が有る。以後、バローズはクロスオー
バーから手を引くのだが、これ以前においても本格的なクロスオーバーは皆無と言
え、やはり失敗作で有る事を実感したのだと思う。ターザン・シリーズの次作が す
ぐに書かれているにも関わらず、しばらくペルシダーから離れていたのも、そのせい
かもしれない(第5巻も焼き直し感が有るのだが、ドイツ人の主人公、と言う点で目
新しい。あと、クリーヴァー(肉きり包丁)。
【付記】
 「お馴染みの人物が登場しない」と書いたが、一応、本作の主人公であるジェイソ
ン・グリドリーは、前作(ペルシダー第3巻)のプロローグとエピローグに登場して
いる。しかし、その役割はあくまで「聞き手」であり、第2巻までのバローズ(ある
いは火星シリーズ、金星シリーズ、「さい果て~」におけるバローズ、もしくは月シ
リーズの聞き手)の扱いと大差ない。冒険小説における描写として「読者と同じ位置
(地位)」と言うのは、キャラクターとして重要な存在とは言えない(「ネバー・エ
ンディング・ストーリー」のような場合は別だし、安楽椅子探偵も除外される)。た
だし、ジェイスンの存在は「グリドリー波」の発見者としてバローズ作品には欠かせ
ない存在であるし、金星シリーズにおいてもチラッとだけ名前が出てくる。重要な
キャラでは有るのだ。






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Last updated  2013.02.24 21:51:57
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