嘔吐112.

October 8, 2005
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カテゴリ: 幻想即興曲


遠くに伸びる、長い二人の影を目で追いながら手をつないで帰った。

鳴る、小さな小さな鈴の音。
一様に並んでいる鳩時計と一緒に鳴るよ。

りんりりぃん。

響く小さな小さな音。


ある朝 彼はお偉いさん。


「君は僕がいなくても平気ですか?」


震えるその手から漏れている、堂々巡りの迷妄。


りんりりぃん

響く、彼女の鈴の音。

白装束の老婆が背中で笑う。
そうさぺろりと舌出しながら。


「右手は空へ、左手は海へ捨て、立派に蒼天仰げよ」


と論う鴉は右にならえ。

至極是当然と並べて立てた理想と幸せは雨催い。
茫漠と広がり解ける。

耳元で囁く。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


白雲消えていく。


 チョン切って捨ててやる!ずっと待つんだ!彼を待つんだ!」


見えぬ聞こえぬ


「何もないほうがいい」と笑う、金魚鉢に写る彼女はくるくる流れる。


「お元気ですか?」


彼女の手紙、ある日を境に途絶えた。


でもいない、あの子は黙して音色。
あの飴色空、影を延ばすことは無いでしょう。


鈴は鳴り響く。


「僕は帰ってきたよ」


鴉の喚声、暮色に消ゆ。

彼は走った、そして涙こらえてそっと扉開けた。



そこには、彼女の時を乗せた鈴の音だけが。




あさき 『赤い鈴』





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Last updated  October 9, 2005 02:34:09 AM コメントを書く


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