嘔吐112.

January 30, 2007
XML
カテゴリ: Lily


何度かの経験を味わっていないと、余りにも無防備過ぎた。

悪夢と呼ぶには相応しくない、夢と形容するのも違う気がする。
意味の存在しない空間の中で、僕は性の実直さをはじめて得る。

その中で何度も想い霞めた僕の一つの前提は、相反的で、自制的だった。
僕は誰かに存在としての異色性を異色として与えてはいなかったし、
僕自身も、無意識の内では特に何かを杞憂している訳でもなかった。
決して大らかとは言えない僕に、彼等は何かを唱えたかったのかもしれないけれど。

平坦さの上に、淡々とした冷徹さとまどろみを持って僕を見下す、一つの可能性を模索する。


けれど其等総てが意味の求めるべき何かであったとしても、僕に言えることはたった一つだった。
この禍々しさこそが僕の禍々しさであり、この生暖かさこそが、僕の存在であると。

事実に基づかないソフィアこそは、彼自身がその悲劇を物語っているけれど、
理念の尊さと、その綻びとしての事実を、彼は僕に教えようとはしてくれない。
事実を事実として受け入れることは容易かったように想える。
けれど当然、その重みが易ければ易い程、僕はその事実を理解することが出来なかった。

僕は僕らに個体としての真理が存在しているのかすら、判れなかった。

舌先で舐められる、あの生々しさが感じ取れないように、
僕は意識の中で、僕個人としてのおぞましさを掴み取れずにいる。
味覚ではなく、物としての存在を。痛覚としてではなく、肌の触れ合いを。

僕はただ、不快さや切望的な意識の喪失を想うよりも、懐疑的に接しながら、重みに耐える。


けれど僕は事実としての欠落を見せ付けられることよりも、
こうしたまどろみを与えられることの方が、深く僕に根付く様だった。


僕の指先は非道く冷たく、酷く卑しい。そして、酷く、僕は僕がにくかった。


碧。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  January 31, 2007 01:38:18 AM コメントを書く
[Lily] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: