嘔吐112.

March 8, 2007
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カテゴリ: Lily



僕は涙を流す。僕は涙を流させる。けれど僕の中の僕が、其れはとても非道徳的なことなんだよ、と。そう僕に言って、僕の胸に、その小さな顔を埋める。

「如何してこんなにも不自由なこの身体を、こんなにも使役して、こんなにも老廃させて、こんなにも美化していかなければ
いけないの」

僕は貴女の髪を撫でながら、真っ直ぐ前を見詰めて言葉を投下する。どうして、どうして。

「だって其れはね、君は君だから。そうやってプログラムされてるんだから。仕方のないことなんだよ、決して不幸なことではないんだよ」

そうして僕は、自分の下にある、幾つものスケープゴートに気がつく。どれだけ惨めで、どれだけ滑稽なことか、思い知る。そうしていつしか、僕もその群の中に混じるのだと。

夢の中で君に重ねた言葉が、僕の中で無意識に、涙として流されていく。僕の腑抜けた笑い声は、君のようには綺麗に在れない。僕のぎこちない笑顔は、君のように慎ましささえを装えない。

其れがとても不愉快で、けれど僕は、とても幸せな虚実に沿って、僕と彼を創り上げていた。涙が滲み、顔が微かに歪み、記憶が溢れかえっていく。僕は怖くなる。僕は苦しくなる。だけど、とても温かな記憶だけが反芻されていく。怖がらなくても良いんだと、僕は僕に言いながら、それでも何処かで拒絶しようとする。けれどやはり僕は其れを忘れたくはないと、強く想ってしまう。道は一本の筈なのに、僕は何度も後ろを振り返っては何度も立ち止まり、何度も身体を縮こませ、其の場に蹲る。



あぁ、こんなのだいきらいだ。だいきらいで、だいきらいで、だいすきだ。観るに耐えない底無し沼のようなその場所で、不快なその場所で、僕は味覚も視覚もおぼろげになったまま、君のすきな音色を救いに、ただいきている。僕は、いきている。いきている限り忘れる訳にはいかないのだと、夢のような縁取りを飾るこの身体に、深く爪を立て、記憶を刻む。

碧。

だいきらいだ。

ずるい、ずるい、ずるい、ずるい。ずるいよ、碧。
こんなの、ずるすぎる。だって君は、だって僕は。

ねぇ、君を偽造しようとする僕を赦してよ。





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Last updated  March 8, 2007 02:27:21 PM コメントを書く
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