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2006年03月30日
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カテゴリ: 文明論・日本論
桜が創った「日本」

 春3月、やはり春といえば”桜”

桜が咲こうとする姿に心が躍る。満開の姿に心が止まる。散り行く姿に心が揺れる。なんでそうなるんだろうか?

 多くの日本人は、この時期を待ちわび、開花宣言がなされると、こぞって満開の桜の下で花見をする。なんでそうなんだろうか?その思いからちょっと桜のことについて読んでみようと思って買ったのが今回の本。

 トータルとしての感想は、自分は本当に”桜”のことを知らなかったんだなーと思わされた。

一番驚いたのは、ソメイヨシノはクローンであるということ!!

植物というと、おしべの花粉がめしべに付いて受粉することで種ができ、その種が土に落ち、芽を出すという風にしか習った記憶がないのだが、ソメイヨシノは、そういった形をとった場合も、違うものになってしまうらしく、あるソメイヨシノの単体からの挿し木や接木によってできたものなんだそうだ。全国各地にあるソメイヨシノは、どれが起源なのか分からないが、それは一本のソメイヨシノから始まったのかもしれないということだ。

 群集して咲き誇る桜=ソメイヨシノは、江戸時代末期に生み出された。エドヒガンとオオシマザクラが交配した結果生み出されたもの。

 名前の由来は二つの地名が組み合わさったもので、「ソメイ=染井」は東京都豊島区駒込で、かつては染井村と呼ばれ、この染井村は江戸後期から明治半ばまでは園芸の一大拠点であった。そして「ヨシノ=吉野」は、桜の名所として名高い吉野山から来ている。この「ソメイヨシノ」が学術的に固定されたのは、明治23(1890)年で、藤野寄命氏が、上野公園の桜を調査してきたときに分類学上知られていない樹を見つけ、園丁に聞くと、多くは染井から来るということで、真の吉野の桜と区別して、仮に「ソメイヨシノ」と名づけたんだそうだ。

 この「ソメイヨシノ」は、その後各地に植樹され、増え続け、今では日本の桜の70~80%(90%とと言う人もいる)が「ソメイヨシノ」という状態なんだそうだ。そう「ソメイヨシノ」は、多く見積もっても、130~150年程度の歴史であり、今のような花見のスタイルではなかったというわけだ。

 昔は、桜並木のような群生する桜を楽しむのではなく、一本桜のような形で楽しむものが主流だったんだそうで、それが江戸末期に「ソメイヨシノ」が生み出され(といってもどのような配合で生み出されたのかは分からないらしい)、それが日本各地に植樹され、広まり、今では日本各地が、「桜といえばソメイヨシノ」という状態になったということだ。

 なぜ、そうなったのか

 ソメイヨシノの生態学的な要因としては、他の桜よりも短期間(といっても10年くらい)で花が咲く状態になることや、接木や挿し木がとてもしやすいということや、環境適応力の高さなどが上げられている。

 しかし、それだけでここまで広まることはないはずだ。”ソメイヨシノはクローン”ということに関係する。クローンということは、気温差にもよるが同じ気温帯に属していれば、全部がほぼ一斉に咲き、短期間のうちに一斉に散る。しかも葉がつく前に葉の緑が混じらない中で、花だけが付く。白の花が…

 この同一性が、日本人の心の柱(アイデンティティ)として機能していくようになり、その機能が強められる形で広まっていき、「桜=ソメイヨシノ」という形になったことが、明治以降の歴史を振り返りながら、語られている。戦前は、大日本帝国の国民をつなぐものとして…戦後は新しい都市の心の風景として…

 桜のことを知るのにふさわしい1冊だった。


桜が創った「日本」 -ソメイヨシノ 起源への旅-
著:佐藤俊樹 岩波新書
2005年2月18日第1刷 定価:740円+税









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最終更新日  2006年03月30日 23時44分18秒
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